900億件のデータを管理する山崎製パンがAI活用も見据えて刷新したDWHインフラインフラの性能、拡張性、信頼性を大幅強化

ITとビジネスの一体運営を進めている山崎製パンは、消費者ニーズの多様化とビジネス環境の変化に対応するためにデータ活用基盤の刷新を決断。同社が抱えていた課題を解決し、AI活用、BCPの強化を見据えて採用したデータ活用基盤とは。

» 2021年11月25日 10時00分 公開
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 1948年6月に創業し、日本の食生活の基幹を担う製パン業として「社会の進展と文化の向上に寄与すること」を使命に掲げ、全国約11万の店舗に製品を供給し続ける山崎製パン。製品はパン、和菓子、洋菓子をはじめ、ビスケット、キャンディー、チョコレートなどの製菓類、米飯、調理パン、麺類など多岐にわたる。業態店としては、コンビニエンスストアチェーン「デイリーヤマザキ」や冷凍生地を活用したベーカリーカフェチェーンの「ヴィ・ド・フランス」などを展開する。

 これまで安定して製品を供給していたが、コロナ禍の影響で量販店やドラッグストアを中心に食パンや食卓ロールの需要が急増し、製品のさらなる安定供給が求められるようになった。従業員もリモートで業務に従事するなど、IT部門もあらためて災害時の可用性確保が急務となった。

 こうした状況下で重要性が増しているのが、ビジネスを支える基幹データベースとデータを分析するためのデータウェアハウス(DWH)だ。山崎製パンは2010年からDWHの稼働を開始し、その後の更改を経て2021年に新たなDWHアプライアンスを稼働させた。デジタル化が進む昨今において、同社が社会的使命を果たすために必要なデータ活用基盤にはどのような要件が求められたのか。山崎製パンの担当者に話を聞いた。

山崎製パンの約900億件のデータを管理、活用する計算センターを支える「Oracle Exadata」

 山崎製パンは全国で28カ所の工場、生地事業所を運営し、11万を超える店舗、販売所からの注文を日々受け付け、自社流通網を通じて作りたての商品を新鮮な状態で消費者に届けるシステムを構築している。受注システムや配送システムをはじめとするさまざまな基幹システムを自社運営しており、ITとビジネスが一体的に運営されている。

ALT 山崎製パン 計算センター 室長 上田和也氏

 同社は2010年までホストコンピュータからオープン系システムへの全面刷新に取り組み、基幹システムの中核となる基幹データベースおよびDWHとして「Oracle Exadata Database Machine」(以下、Exadata)を採用。2014年にはExadataをアップグレードし、増加し続けるデータとデータ分析ニーズに対応してきた。

 近年は消費者ニーズの多様化やコロナ禍に伴うビジネス環境の変化により、基幹データベースやDWHはさまざまな課題に直面するようになっていた。山崎製パンでITシステムの開発運用業務を一貫して行っている計算センターの室長を務める上田和也氏はこう話す。

 「計算センターには、注文に関する明細データが11万店の店舗、販売所から毎日オンラインで届く。1日に発生する明細データは500万件、月に約1億5000万件に達する。過去のデータなどを含めると約900億件のデータを管理する必要がある。データ処理は通常のデータベースでは難しく、登場当初からExadataを利用してきた。ただし近年はデータ量がより増加傾向にあり、データ活用のニーズも広がっている。データ活用基盤を拡張する必要に迫られていた」(上田氏)

 そこで2021年、旧データ活用基盤のリプレースを機に採用したのが「Oracle Exadata Database Machine X8M-2」(以下、X8M-2)だ。

「データ量の増加」「信頼性の強化」「新たなデータ活用」への対応が課題に

ALT 山崎製パン 計算センター システム開発課
三輪勇輔氏

 山崎製パンは大別して3つの課題を抱えていた。1つ目は、増加し続けるデータ量への対応だ。Exadataを導入した当初は店舗、販売所からの注文データが中心だったが、その後、物流や生産といったシステムのデータをExadataで管理、分析するようになった。山崎製パンの三輪勇輔氏は次のように力を込めて語る。

 「2014年にExadataをアップグレードした際には約400億件のデータが格納されていたが、X8M-2への刷新を検討し始めた2020年時点で約900億件に増えていた。6年で倍以上に増加しており、特に物流データが約2倍に増えたことでデータ量の増加に拍車が掛かっていた。データ量は今後も増加することが見込まれており、データ活用基盤の拡張は必須だった」

 2つ目はデータの種類が増加したことに伴う信頼性の強化だ。物流データの追加もその一つだが、他にも当初は想定していなかったデータがExadataに格納されるようになった。山崎製パンの吉田貴史氏は次のように強調する。

 「工場の生産データや各部門が管理しているデータ、関係会社のデータなどがあります。Exadataの活用実績によって、各部門から『このデータも一緒に入れてほしい』といった要望が寄せられるようになり、多種多様なデータがExadataに集約されていった。万が一止まったら事業に直接影響が出るデータもあり、データ活用基盤の信頼性をさらに強化することが求められていた」

 3つ目はデータ分析基盤としてのさらなる活用だ。現在、より精緻な物流データを取得する車載用端末の導入やAI(人工知能)を活用した配送ルートの最適化などの取り組みを進めている。「新しい取り組みをスピーディーに進めるには、より高性能で柔軟なデータ活用基盤が必要だった」(上田氏)

新モデルへのアップグレードで「性能」「拡張性」「信頼性」が大幅に強化

ALT 山崎製パン 計算センター システム開発課
吉田貴史氏

 X8M-2は、山崎製パンが抱えるこうした課題を解消しつつ、ビジネスインフラを強化できるデータ活用基盤だった。2020年初頭に検討を開始し、約6カ月の実機検証を経て2021年3月に部分的な稼働を開始。旧モデルと並行稼働させながら、旧モデルのリプレース完了とともに新環境に移行する計画だ。

 「Exadataを旧モデルから新モデルにアップグレードする流れは既定路線だった。旧モデルは2014年に稼働を開始してから予期せぬシステム障害などは一度も発生しておらず、パフォーマンスが課題になったこともない。インデックスの管理や細かなチューニングなしに利用できることを高く評価している。X8M-2には、性能、信頼性、冗長性などが強化されることに対して期待しかなかった」(上田氏)

 X8M-2へのアップグレードに当たっては、「Oracle Database」のバージョンを「11g」から「19c」にアップグレードする際に伴う検証とX8M-2の新機能の評価が作業の中心となった。

 「Exadataの性能を見越してインデックスをできるだけ作成せず、必要最低限の作業だけで稼働させる環境を構築していた。それもあり、11gから19cへのアップグレードも基本的に問題なく実施できた。X8M-2にはインデックスを自動で作成する新機能もあるが、今回はそれを用いなくても十分なパフォーマンスが出ることを確認している」(吉田氏)

 新機能については「永続化メモリ」を活用した。

 「永続化メモリの利用もあり、パフォーマンスはさらに高くなっている。数値上はおよそ30%向上だが、体感的にはもっと速くなっている印象がある。データ処理も高速化しており、これまで工場からのデータ処理の際に発生していたCPUの一時的な高負荷状態も全く発生しなくなった」(三輪氏)

 X8M-2への移行とともに「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」(以下、Recovery Appliance)を導入することで、バックアップや事業継続の強化などにも対応できた。

 「従来のように売り上げデータだけなら、万が一システムが止まっても売り上げを確認できないだけで済む。しかし現在は物流データや生産データも管理しているので、システムが止まることはビジネスに致命的なダメージを与える。Recovery Applianceを活用してデータを素早く復旧できることで、事業継続の面でも高い信頼性を確保できるようになった」(上田氏)

ALT X8M-2への移行とともに導入した「Oracle Zero Data Loss Recovery Appliance」により、バックアップや事業継続の強化などにも対応可能に(提供:日本オラクル)《クリックで拡大》

今後はAIによるデータ分析やBCPの強化を

 今後は、新たなデータ活用の取り組みを推進するとともに不測の事態が発生した場合でもデータを確実に保護して事業を継続するためのBCP(事業継続計画)にも力を入れる予定だ。

 「今後は、関係会社のデータも含めてデータをさらにExadataに集約する予定だ。現在は各社がバラバラのシステムでバラバラのデータベースを運用しているが、それらを計算センターに集める。そうすることで、AIを使った新しいデータ分析、データ活用施策にも一層取り組みやすくなると考えている」(上田氏)

 そのためには、新たに直面する課題にも対応する必要がある。「統合していない既存データベースのデータをどうExadataに統合するか」「全国各地の拠点をWAN環境でどう高速につなぐか」「どうやって海外拠点にまでデータ活用基盤を拡張し、保護するか」などだ。

 「Oracle Database 8iや11gで稼働している既存システムも残っている。遠距離でデータを保護するための新たな仕組みを構築したり、必要に応じてクラウドサービスを利用したりすることを検討する必要がある。『Oracle Cloud』や『Oracle Exadata Cloud Service』を検討する機会も増えると予想している」(上田氏)

 X8M-2へのアップグレードによって、より高性能、拡張性、可用性のあるインフラを手に入れた山崎製パン。日本の食生活の基幹を担う企業として、さらなるIT活用に向けた歩みを進めている。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年12月8日

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