機密データを地方自治体など顧客の“手が届く範囲”に置けるクラウドサービスを展開するNTT西日本。その提供に当たり課題となったのが、クラウドの利便性と安定性/安全性をどう両立するかという点だ。そこで選ばれた、新たなDB基盤とは?
近年、長年にわたってIAサーバで構築、運用されてきたアプリケーションについても、パブリッククラウド、もしくはクラウドの持つ拡張性や柔軟性を備えた新しいITインフラへの移行が進んでいる。それも、当初中心だったメールやグループウェアといったフロントエンドのシステムだけではなく、事業に直結するさまざまな基幹システムについてもクラウド技術を活用し、拡張性やコストパフォーマンスといったメリットを享受しようとするニーズが高まっている。
既存のIT資産を集約してコストを削減しつつ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めたいが、一般的なパブリッククラウドのようにデータ保管場所が不明確で、データ主権の及ばない手の届かない場所に機密データが行ってしまうことは避けたい――。そんな地方自治体や教育機関のニーズに応えるべく西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)が提供しているのが「地域創生クラウド」だ。
NTT西日本は以前からICTを活用して社会課題活動を支援する「ソーシャルICTパイオニア」への変革を掲げ、30府県でサービスを提供してきた。地域創生クラウドはその技術力やノウハウ、地域密着のサポート力と各地域のデータセンターなどの設備に、多様なクラウド技術を組み合わせて生まれたクラウドサービスだ。
NTT西日本は、これまでに採用してきたクラウド技術に加え、新たにデータベース基盤を採用し、名古屋地区で地域創生クラウドの提供を開始した。その導入理由や効果などをNTT西日本に聞いた。
特に自治体治体や教育機関、金融機関のような⺠間企業の場合は、法規制上、あるいはセキュリティやプライバシーの観点から、機密性の高いデータをクラウドサービス事業者に渡してしまうのではなく、自分の届く範囲に置いておきたいという強いニーズがある。西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)の千田敬人氏(ビジネス営業本部 アドバンストソリューション営業部 ⾃治体クラウド担当《名古屋》 担当課長)は次のように話す。
「『ここにあります』とデータの所在を明らかにした状態で、地域のお客さまの近いところでクラウドサービスを展開することが地域創生クラウドの基本コンセプトです。まず、このコンセプトに沿っている必要がありました」
加えて、各種アプリケーションを展開するに当たって、データベース自身の安定性や可用性の確保も不可欠だった。「クラウドサービスを弊社データセンター内で運用するニーズがあるのは、お客さまにとってそれだけ重要なシステムだからです。従って、そのシステムには高い安定性や高速性が求められます。また、今後のビジネス展開を考えると柔軟な拡張性も必要ですし、その際には複数のお客さまがセキュアにサービスに入っていただく。つまり、マルチテナントでセキュアに格納できる必要がありました」(千田氏)
クラウド技術ならではの利便性を享受したいが、安定性や安全性も不可欠――。こうした一見相反する要件を両立させる手段としてNTT西日本が見いだしたのが、日本オラクルが提供する「Oracle Exadata Cloud@Customer」だった。
Oracle Exadata Cloud@Customerは、顧客のデータセンター内に高速な「Oracle Database」の利用を可能にするデータベースシステム基盤「Oracle Exadata Database Machine」を設置導入し、それをあたかもクラウドサービスのように利用できるソリューションだ。運用保守は日本オラクルが行うため、利用者の負荷は軽減される。しかも、Oracle Exadataは、暗号化、多層防御など豊富なセキュリティ機能を持ち、申し分のない堅牢(けんろう)性を実現できる。さらに、データを常に複数持ちながら整合性を取りつつ更新できる、「Oracle Real Application Clusters(RAC)」もサポートされており、高い冗長性を実現できる。
Oracle Exadata Cloud@Customerは、従量課金制でサブスクリプション型の価格体系を採用しており、過大な初期投資を行わずとも、柔軟にシステムやサービスを拡張していけることもポイントだった。
「地域創生クラウドにデータベースサービスを付加価値として追加していく上で、従来の仮想化技術の仕組みで提供しようとすると、ソフトウェアライセンスもハードウェアも、また保守運用コストもどうしても高くなってしまう部分がありました。日本オラクルが保守運用も含めて提供するOracle Exadata Cloud@Customerの上でサービスを構成することにより、拡張性を確保しながら運用コストを最適化できることも採用の理由となりました」(千田氏)
導入に当たっては、ストレージサーバを搭載し、データベースに最適化されているOracle Exadataの性能を見込んで、通常のIAサーバで構成する場合に比べて、CPU(コンピューティング)リソースを半減させる設計にチャレンジした。
だが、折しもコロナ禍のさなか、時間的にも環境的にも実機での検証は困難だった。そこで、机上検証に必要なさまざまなデータを日本オラクルから提供を受け、さらに時間帯ごとに必要となるリソースの目安についてもアドバイスを得ることで必要なスペックを見切り、導入を進めた。「こうした面で日本オラクルのサポートは大きかったです」と千田氏は振り返る。
ちょうど要件を詰めていた2020年2月から4月にかけては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第1波が到来し、政府の緊急事態宣言が出された時期に重なった。「顔を合わせてのミーティングや検証が困難な中、Oracle Exadata Cloud@Customerという初めて扱う製品を検討し、技術的な観点でシステム構成を固めるだけではなく、課金体系も含めてコストを計算していくことになったため、当初の想定よりは時間がかかってしまいました」(千田氏)。感染症対策で人員が絞られていることもあり、データセンター側の準備にも時間がかかってしまったという。
「ただ、これらいずれの課題に関しても、日本オラクルからは必要な情報を早め早めに、柔軟に提供してもらいました。クラウドのオペレーションは初めてでしたが、さまざまなアドバイスを頂きながらわれわれのオペレーションに合わせることができました。コロナ禍の大変な時期にもかかわらず、スケジュール通りに稼働までこぎ着けることができたため、日本オラクルの皆さんのサポートには大変感謝しています」(千田氏)
こうして2020年10月にOracle Exadata Cloud@Customerを採用したデータベース基盤の稼働を名古屋地域で開始した。「あるバッチ処理に要した時間がおおむね40%以上減、ものによっては半減、あるいは60%減まで実現している処理もあります」(千田氏)と高速性を実現。また、「Oracle Multitenant」オプションによってデータ管理を効率化し、複数の顧客をデータベースシステムの中でセキュアに同居可能にする。同時にOracle Exadata Cloud@Customerによる運用負荷の低減なども実現している。
「ローカルで使いたいと考える自治体をはじめとするお客さまに対し、Oracle RACによってデータの冗長性を確保した上で、高速で安定的なシステムを提供できています。また、Oracle Exadataの堅牢なデータベース機器の最大リソースまで将来的には使用できるという拡張性と、Enterprise Editionのオプションを全て利用可能という利便性を兼ね備えながらも、費用についてはOracle Exadata Cloud@Customerの従量課金モデルとなっている。これによって、われわれのビジネスの展望も開けていると感じています」(千田氏)
NTT西日本では、Oracle Exadata Cloud@Customerが搭載する「In-Memory」オプションの活用も検討していきたいとしている。In-Memoryオプションの活用にはアプリケーション側の対応も必要になるため、その面で日本オラクルのサポートを得ながら進めていければと期待しているという。
今後もITシステムの果たす役割は高まっていく一方だ。地域創生クラウドの今後について千田氏は次のように話す。
「今後、自治体の一部業務は行政システム標準化の動きに対応していくことになると思います。その標準化されたデータを活用・分析し行政方針へ反映したり複数の課にまたがって共同利用したりするための基盤を構築したいと考える自治体や、教務システムや学生が活用するデータの保管場所を単一の基盤に統合していきたいと考える文教分野など、お客さまからはさまざまな要望が寄せられています。NTT西日本全体としては、西日本エリア30府県に順次、地域創生クラウドを展開し、そうしたニーズに応えていきます。地域創生クラウドは、いろいろな地域のお客さまに提供するアプリケーションを、各エリアのパートナー企業とタイアップして提供できるデータドリブンプラットフォームを目指しています。地域の活性化や雇用創出、高齢化対策といった多様な機能を提供し、自治体はもちろん、教育や観光分野での活用や、地域の企業にも使っていただけるように展開していきます」
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2021年4月20日
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