CEO対談:日本電鍍工業が業界屈指のめっき工場に変化できた理由100年後の社員とお客さまの幸せのために

企業を発展させる秘訣(ひけつ)は、変化し続けること。その変化に対応できるシステムが、企業の成長に欠かせないパートナーとなる。

» 2024年07月05日 10時00分 公開
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 変わらなければ生き残れない――これからの時代を企業が生き残るためには変革が必要だ。その鍵となるのが、デジタル技術の活用である。日本電鍍工業の経営改革の成功は、Claris FileMakerを活用し生産管理業務を大幅に効率化したことが大きい。

 変革には何が必要なのか、FileMakerはその変革をどのようにサポートできるのか、日本電鍍工業の現場を訪れたClaris International Inc. CEO、ブラッド・フライターグ氏と、日本電鍍工業代表取締役の伊藤麻美氏が語り合った。

日々変動する多品種変量生産の管理を支えるFileMaker

 日本電鍍工業は、めっき(鍍金)加工を主な事業としている。かつては時計のめっき加工が主力だったが、2000年に伊藤氏が社長に就任してから、経営改革に取り組み、医療器具や工業用部品、楽器、宝飾品といった分野に顧客を広げた。大ロットの品物から小ロットの品物まで幅広く取り扱い、細かく高度な技術を提供することで付加価値を高め、業績を改善してきた。

 同社が扱う品数は多数に上る。また、一口にめっきといっても、品物の材質や数千を超える注文主の意向に応じて厚みや加工法が異なる上に、同じ顧客からでも「次は違う方法で仕上げてほしい」といった要望が加わることもある。

 こうした細かい要望に対応しながら、めっき加工から検査に至るまで一連の生産工程を管理するためには、少品種大量生産を前提としたパッケージ型の生産管理システムでは間に合わない。不足を補うために表計算ソフトウェアや紙を併用して手作業で管理していたが、その作業にも多くの時間を要し、納期に影響が出たり、従業員が早出や残業したりすることもあったという。

 そんなときに出会ったのが、Clarisが提供するローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」だった。信頼できるClarisパートナーと出会えたこともあり、FileMakerで同社の一連の業務にフィットするカスタムアプリケーション(カスタムApp)を開発した。カスタムAppでデータを共有し、各工程で参照することで、生産管理を大きく効率化させている。

 そんな日本電鍍工業を訪れ、従業員たちがカスタムAppを活用する現場を目の当たりにしたフライターグ氏が、伊藤氏に問い掛けるところから対談は始まった。

加工を依頼された品物が届くと、カスタムApp上で作業手配書が発行され、品物に付けられたセルカードとひも付けられる。現場ではセルカード上のQRコードを読み込むことで、「どのような作業が必要か」といった事柄をすぐに確認できる。作業を終えたら「今、どの段階まで進捗(しんちょく)しているか」を写真などを付けて視覚的に判断できるように画面に反映でき、めっきに使用する金属や薬剤といった資材も管理できる。営業部門もこうして一元的に管理された情報を参照し、顧客をサポートすることで満足度向上につなげている。

カスタマイズ性の高さが業務にベストマッチ

フライターグ氏 工場を拝見し、FileMakerが現場で活用されていることがよく分かりました。FileMakerの特にどんなところをメリットとして感じていますか?

日本電鍍工業 代表取締役 伊藤麻美氏

伊藤氏 多品種変量生産であるため、流れてくるものも前と同じものもあれば違うものもあるというふうに、常に決まっているわけではなく、毎回一から加工プロセスを作っていく必要があります。その点でFileMakerは、いうなれば変化に強いので、以前作ったものに少しアレンジを加えるだけで、臨機応変に対応できます。結果として時間が短縮されたことがメリットです。従業員のワークライフバランスが改善できただけでなく、情報共有にもつながっています。

フライターグ氏 われわれの製品の強みは、一度ローコードでアプリを作れば、それを短時間で何回も改良できることです。自社のめっき処理プロセスにマッピングできる技術が必要だという伊藤さんのビジョンをFileMakerはうまくサポートできていると思っています。

伊藤氏 企業が生き延びるためには、昨日やっていたことを今日は変えなくてはならない、ということがあります。普通のシステムでは、そのたびにいちいち仕組みを変えられません。しかしFileMakerではすぐに変えられます。われわれの対応力とシステムの対応力がベストマッチしていると感じます。

 今では社員が、時にはパートナーの力を借りて優先順位を付けつつ、自発的にどんどんカスタムAppにアレンジを加えています。

フライターグ氏 FileMakerではあらゆることが、毎日でもローコードでカスタマイズできます。ひとたびFileMakerが会社にとっての背骨、いわば組織全体の「OS」のような存在になれば、いろいろな変更を加えたいという要望が出てくるのは自然なことです。最もインパクトを出せるものから優先順位を付け、変更を加えていくことは、われわれのお客さまでは非常によくあることです。

伊藤氏 もう一つ感じるのは社員の変化です。FileMakerのカスタムAppを通して、従業員一人一人が「今、どんな処理を、どのくらいの原価で行っているか」といった情報を共有するようになった結果、「自分たちも経営に携わっているのだ」という意識がいっそう強まりました。例えば「この値段ならば、もう少し効率を上げなければ」と自発的に考えるようになっています。いわれたことだけをする社員ではなく、考えて行動する社員になってもらいたいと考えていますが、FileMakerはそのための良いプラットフォームだと感じています。

フライターグ氏 あいさつ一つをとってもそうですが、従業員の方々がとても幸せそうに、自分の担当業務に熱意を持って、細かいところにまで気を配って取り組んでいる姿勢に感銘を受けました。これが、めっき処理の質の高さにつながっているように思います。

コアの部分を大切にしつつ、時代とともに変化する必要性

フライターグ氏 同じ経営者として伺いますが、歴史ある企業を前任から引き継いだとき、どんなことに留意してきましたか?

伊藤氏 企業には残すべきものと変えていくべきものがあると思います。「会社を良くし、社員を幸せにする」という目的を追求する上で、社員の意識や行動の変容を進める必要はあります。歴史ある組織であっても、むしろ歴史ある組織だからこそ、時代の変化とともに自らも変化し、時には時代の先を目指さなければなりませんし、それにはリーダーシップが必要だと思います。

フライターグ氏 まったく同じ考え方ですね。FileMakerには世界中に多くの顧客がいます。これまでとの一貫性を保ちながらイノベーションを起こし、変革を進めることは並大抵のことではありません。大事なのは、その会社が培ってきた魂を引き継ぐことです。企業のコアとなるアイデンティティーやパーパス、価値観に忠実であることこそ重要だと思っています。

伊藤氏 日本ではこれまでの成功体験にしがみつき、変化を恐れている経営者も多いように思います。それが、米国や欧州に比べて日本の生産性や利益率が低い要因の一つではないでしょうか。

フライターグ氏 米国の企業の場合、社員に対するエンパワーメントや信頼、失敗に対する寛容性、そしてオープンなコミュニケーションといった要素がある程度機能しているのだろうと思います。また、従業員が会社の改善に参画することも構造的にできるようになっており、何より楽観的である、ということがあるかもしれません。

 ただ、私は今日工場を見学してみて、伊藤さんのおっしゃるネガティブな意味での「日本らしさ」は御社にはほとんど感じませんでした。これまでのやり方を変えるには、社員からの信頼を獲得し、どの方向に進んでいくのかというビジョンを伝えなければなりませんが、工場を拝見して、伊藤さんの強力なリーダーシップを感じました。また、社員の皆さんから、伊藤さんが普段から社員と積極的にコミュニケーションをとっていることも伺いました。CEO然として社長室に座っているのではなく、常に現場に足を運び、自分の存在を示していく、そういうリーダーシップを感じました。

100年後も生き残る会社を目指し、AI活用にも積極的にチャレンジ

Claris CEO ブラッド・フライターグ氏

フライターグ氏 御社は今後、どのような企業であることを目指しているのでしょうか?

伊藤氏 目を向けているのは今ではないんです。100年後を見据えています。つまり、自分がいなくなった後の方が重要なんです。

 この先、過去とは違うやり方にチャレンジしていく企業、そこに投資している企業、イノベーションをしていく企業のみが残っていくはずです。日本国内に何千社、何万社という企業がある中で、われわれは生き残る方の一社になっていかなければなりません。そういう意味で、これからもいろいろなチャレンジを続けたいと思っています。

フライターグ氏 例えばどのような構想がありますか? AI(人工知能)の活用も考えているのでしょうか?

伊藤氏 日本国内では人口減少が避けられません。これまで人がやっていたことも、別のものに置き換えていかなくてはならないでしょう。AIも、それがどのタイミングなのか、どのように活用するのかはまだ分かりませんが、取り入れていきたいと考えています。

 既にFileMakerの導入によって、これまで人がやっていた作業をシステムに置き換え、時短や効率化につなげることができています。同様にこの先、人の代わりにAIやロボットに任せる作業も出てくるのは自然な流れだと思います。変化を恐れるのではなく楽しみながら、100年、200年、300年と続くサステナブルな企業にしていかなければならないと考えています。

フライターグ氏 拝見すると、御社では製造のあらゆる過程で多くのデータを取得し、保管できています。そのため、小さく始められるプロジェクトを含め、AIを使うことでさまざまな可能性が広がると思います。データ分析やプログラミングの専門家がいなくても、データを直接扱えるような環境を実現すると、短時間で多くの仮説を試し、新たなビジネスを始めたり、差別化につなげたりできる可能性があるのではないでしょうか。

伊藤氏 まさにそれがイメージしていることの一つです。われわれはデータを基に毎朝品質会議をして、トラブルがあればその原因を探っています。こうした情報をうまく料理して、「素材をどう扱えばこの問題を解決できるのか」とか、さらには「次の営業ターゲットはどこにすべきか」といった事柄のヒントを得られればと思っています。問題解決型のビジネスにも手を広げていけないかと考えていますが、それにも恐らくAIの力が必要だと思います。

フライターグ氏 AIは、課題に対してぴったりの回答を返してくれるわけではありません。しかし、改善に向けたこんなアイデアや仮説はどうですかと提案してくれます。採用するかどうかは人間次第ですが、データを基に、短時間で多くのアウトプットを出し、新しい方法を検討するところに、AIの使い道があると考えています。

伊藤氏 どんなに優れたシステムやAIが生まれようと、それをコントロールするのは人間です。その意味で、目標に向かって何をすべきかを考え、行動できる、対応力のある人材がいることがわが社の強みであることに変わりはないと考えています。

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提供:Claris International Inc.
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2024年8月4日

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