サブドメインの運用と委任:実用 BIND 9で作るDNSサーバ(6)(3/3 ページ)
大規模なサイトでは、「サブドメイン」によって実組織を模したドメイン構成をとることがある。その際、サブドメインの管理を「委任」することが可能だ。今回は、それらの概念や設定方法を解説する。(編集局)
サブドメインの委任
次に、サブドメインを委任する場合の運用を見ていきましょう。例として、「sales.example.jp」というサブドメインを新設します。sales.example.jpに属するホスト情報は次のとおりです。
dns01.sales.example.jp | 192.168.10.60 | #sales.example.jpドメインのDNSサーバ |
---|---|---|
dns02.sales.example.jp | 192.168.10.61 | #sales.example.jpドメインのDNSサーバ |
sv1.sales.example.jp | 192.168.10.62 | |
sv2.sales.example.jp | 192.168.10.63 | |
mail.sales.example.jp | 192.168.10.64 | #sales.example.jpドメインのメールサーバ |
www.sales.example.jp | sv1.sales.example.jpの別名 | #sales.example.jpドメインのwwwサーバ |
sales.example.jpドメインのDNSサーバが複数用意されていることに注意しましょう。1台でも運用は可能ですが、ドメイン運営の責任を負うことを考えると複数台設置することが望まれます。
親側の設定
まず、上位ドメインであるexample.jpをつかさどるDNSサーバに、サブドメインsales.example.jpの問い合わせ先を登録します。サブドメイン側DNSサーバのホスト名は、必ず正規のものを使用します。CNAMEで定義されたホスト名は使用してはいけません(参考:第3回中の「やってはいけないCNAMEの使用方法」)。
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サンプルでは、記述フォーマットを理解していただくために、ホスト名末尾の「.」を省略した場合とFQDNで書いた場合を併用しています。実際に試す際は、タイプミスを防ぐためにも、どちらか一方の書式に統一しましょう。
なお、先ほど紹介した$ORIGINや$INCLUDEを使ってスマートにまとめることも可能です。
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子側の設定
サブドメインを委任された子の方は、通常どおりゾーンファイルを準備します。
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子側のDNSをすべて同じように設定するか、ゾーン転送を使用するなどして、どのDNSサーバに問い合わせてもsales.example.jp.の情報を返すようにしておきます。
子側のDNSサーバは、必ずしも子ゾーン内に設けなければならないと決められているわけではありません。第三者機関に預けたり、別のゾーン内に設置しても構いません。ただし、委任されたDNSでサブドメインを立ち上げたもともとの趣旨を考えると、子ゾーン内で立ち上げるのが妥当です。「IPアドレスが足りなくて、外部のデータセンターにDNSサーバを置くしかない」という方もいるかと思いますが、これと子DNSサーバを子ゾーン内で立ち上げることとは別の問題です。名前空間とIPレイアウトが一致している必要はありません。
スタブによる便利な委任管理
サブドメインの管理を子側に委任しても、NSレコードの変更は親側に依存するため、完全に子に任せるというわけにはいきません。「スタブ」を利用すると、親依存の度合いを少なくすることができます。
スタブはゾーン転送のサブセットで、子側のゾーン情報をゾーン転送の要領で親側にコピーします。スタブを利用すればNSレコードの変更も子側で行えるため、子から親へのゾーンファイルの同期処理もゾーン転送のそれと同じように行われます。親側は最低限マスターファイルの所在先(IPアドレス)だけを知っていればいいことになります。
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子側は、先ほどの「サブドメインの委任」と同じように行います。子から親へのゾーンファイル転送が行われれば、子側の/var/log/messagesにその旨が出力されます。
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うまくいかない場合は、TCPの53番が親と子で疎通できるかなど、第5回を参考に問題に対処しましょう。
今回は、委任の仕組みをサブドメインの運用を交えながら紹介しました。最近ではドメインも比較的簡単に取得できるようになり、1つのドメインをサブドメイン化するまでもなく、新規ドメインを取得する方法が取られることも少なくないようです。しかし、コストや可用性などを考慮すると、サブドメインでの運用の方が有利です。
実は、第4回で紹介したように、クラスC未満のIPアドレスが付与された環境では、逆引きDNSをサブドメインで運用することが一般的になっています。第4回でサブドメインの仕組みを消化できなかった方は、理解しやすい正引きでのサブドメイン運用から学んでみるといいでしょう。
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