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多くの入力と出力が得られる学習をしようITエンジニアが語る わたしの勉強法(2)

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「スキルアップをしていく時間がない」とはよく聞く話だ。しかし、着実にスキルアップを図っていかないと、ITエンジニアとしては生き延びることはできない。では、皆はどんな方法でスキルを磨き、勉強をしているのだろうか? さまざまなエンジニアに登場していただき、自分のスキルアップ方法を紹介してもらう。


とにかく手を動かす

 どんなに忙しいときでも時間を取って、とにかく手を動かす。本当に学びたかったら、これ以外の最適な技術学習法はない、と私は思う。カンナの使い方のレクチャーを机上で本を読むだけでは習得できないことは、おそらく誰でも分かることであろう。

 学生のころ、講義は意味不明なものが多く、大嫌いであったが、唯一面白いと思ったのは、「制御工学」だった。「状況を読み取り(入力)、判断して(計算)、動作する(出力)」。電気工学や機械工学では基本中の基本の学問。何パターンかの入力を与えて、理想の出力が出るように、判断部分のアルゴリズムを調整する(とても簡単な計算であれば、パターン分析を多数しなくても、ほぼ正確に近い計算アルゴリズムを持たせることはできるが)。

 人間の行動というのも、すべてこの入力と計算と出力の関係で成り立っており、優秀な計算部分を得るためには、数々の入出力パターンを試す必要があるのだ。机上での本読みは正に人間にとって入力を与えるためのものだけであって、出力は得られないのだ。それにより、計算部分の発達が遅れるのは必至である。

 しかしながら、「本には入力と出力が書いてあるから、それを読めばよい」と思われる方も多いと思う。この、本に書いてある出力というものが厄介なもので、まったくといっていいほど身に付かない。分かった気になるだけで、やはり実経験が伴わない入出力の組み合わせは、計算部分を発達させない。従って、まったく違った入力がくると、太刀打ちできなくなるのだ。と、難しそうなことを並べてみたが、要は私の場合は、手を動かして痛い目に合わなければ覚えられないのだ。だからとにかく手を動かす。

基礎体力が差になる

 基礎体力がついている人は、どんなスポーツをやってもそれなりにこなしてしまう。テレビでよく元プロスポーツ選手がほかのスポーツを習ったり、25段の跳び箱とかを跳んでいたりする場面を見掛けるが、確かにギコちない部分はあるものの、われわれごく普通の市民よりもはるかに早く習得しているように思われる。スポーツ全般に通じる能力をプロ選手は習得しているのだと思う。

 それと同様にITの習得にも、ITの基礎体力がある人は、圧倒的に学習が早いように思われる。じゃあ、IT基礎体力ってのは何か、というと、その技術の構造を頭に描ける力のことではないかと思う。前述の計算部分が何を行っているかがある程度分からないと、入力に対する出力を想定することはほぼ不可能であり、大体の構造が頭の中で出来上がったとき、私は「分かった!」と感じることが多い。IT基礎体力をしっかり持っている人は、何を学ぶにも早い。そして、あまり触ったことのない技術のトラブルシュートなども結構簡単にできてしまう。

ではどんな学び方か

 じゃあ私はいったいどのように勉強しているのか。技術を学ぶときは、とにかく上記2点を強く意識している。具体例を挙げると、できるだけ人に聞かないようにしている。構造を意識して、とにかく手で触って調べる。聞けば10分で済むが、調べると2時間以上かかったりして、かなり非効率なのは確かである。なので通常はセミナーを受講したり、周りに聞いたりすることが多くなるが、この勉強法がすべてになってしまうと、基礎体力が見る見る落ちるのだ。なので、時間のあるときを見計らっては、人に聞かずにじっくりと腰をすえて手を動かす。

 しかし厄介なのが、運動基礎体力と異なり、IT基礎体力が落ちることは、自分自身では気付きにくいこと。代わりに、どうやったら人から聞けるだろうか、という方法を見いだす能力が成長していってしまう。現にそのようなSEが増えているのは確かである。具体例として、あるアプリケーションのプロパティの設定を変化させるとどうなるか、といったことを、実際に手で動かして触ろうとせず、また、人に聞くにも「このプロパティをこう設定するとどうなりますか」とも聞かず、「このプロパティはどのように設定すればいいのですか」といった質問をするようになってしまう。これでは基礎体力が落ちる一方である。

学ぼうと思って学ばない

 学ぼうと思って学ぶのでは、絶対に続かない。いろいろな資格を取ろうと何冊か分厚い本を買って読み始めても、だいたい3日坊主になり、本棚には表紙に資格名が書いてある本が山積みになっていたりしている。資格を取ることを目標にしての勉強は続かない。要は動機付けが不純なものは絶対に続かないのだ(資格をたくさん取ることを喜びにしている人もいないことはないが……)。基本は、楽しい、面白い、もうちょっと触りたい、と思えないと私の場合は長く続かないのだ。私はハードウェアが大好きなので、いまもいまの仕事(製品マーケティング)に直接役立たなくとも、ラックを組み立ててはサーバを挿入したりしている。

筆者紹介

山中 伸吾(やまなか しんご)

東京理科大学理工学部電気工学科卒。コンパックコンピュータ入社後、金融系フィールドSEとして働く。その後日本ヒューレット・パッカードとの合併により異動。現在はブレード型サーバのプロダクトマネージャとして、製品マーケティング、拡販戦略策定を行い、社内外セミナーの講師としてブレード型サーバ「HP ProLiant BLライン」の啓もう活動に明け暮れている。機械がいじれないマーケターが多い中、元来の機械好きな性格が災い(?)して、イベントやセミナーのたびにラックマウントする毎日が続く。



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