第2回 SQL Server 2000を構成するコンポーネント:初めてのSQL Server 2000(4/4 ページ)
RDBMSであるSQL Serverを構成する各種コンポーネントについて。DWH、OLTP、OLAPといった基礎用語についても触れる。
Meta Data Service
Meta Data Serviceは、情報システムやアプリケーション向けに、メタデータ(→用語解説)の管理と格納をサポートするサービスである(Analysis Service同様、日本語版ドキュメントでも英語表記が使われている)。メタデータとは、データそのものではなく、データの属性を示すものだ(→用語解説)。
メタデータのセットを設計することで、特定ビジネスにおける情報処理モデルを定義することができる。例えば書籍販売のアプリケーションを定義するなら、書籍タイトルや著者名、出版社、価格、ISBNコード(市場流通する書籍を一意に識別するためのコード)などをメタデータとして定義することになる。Meta Data Serviceでは、「書籍タイトル」や「出版社」などのデータ自体(インスタンス)を管理するのではなく、あくまでこれらの情報の属性(数値型や文字列型など)を設計し、保存する。そしてこれらのメタデータを使用して、書籍販売の情報モデル(概念モデル)を設計する。例えば、ISBNコードから特定の書籍タイトルを決定し、その価格を問い合わせるなどの一連の作業をモデル化する。重要なことは、Meta Data Serviceでは、あくまで情報の属性を制御するだけで、情報のインスタンス自体は操作の対象にしないことだ。SQL Server 2000のMeta Data Serviceでは、メタデータを管理するための一連のサービスが提供される。
用語解説
■メタデータ(metadata)
データそのものではなく、データの属性(「数値」や「文字列」などの列のデータ型、列の長さなど)。また直接的なデータの属性以外にも、データ構造やキューブ、ディメンションなど、データベースの設計に関連する情報を指す場合もある。
Books Online
Books Onlineは、SQL Server 2000に関するオンライン・ドキュメントである。データベースとは何か、といった基本から、データベース設計の基礎、OLAPやOLTPの構築法、実践的なデータベース・アプリケーション開発まで、必ずしもSQL Server 2000に直接関係しない概念的な部分から、実践的なデータベース・システムの開発までを網羅している。SQL Server 2000の使い方だけでなく、データベースの基礎を知りたいと考えるエンジニア/管理者にとっても、一度のぞいて見て損のないオンライン・ドキュメントである。
SQL Server 2000の勉強のために、このヘルプ・ドキュメントだけを読みたいと考える読者もいるだろう。しかしインストールCD-ROM内部では、ドキュメントの各ブロックが別々のヘルプ・ファイルになっており、上記画面のように全体をツリーで表示したり、ドキュメント全体から検索したりはできないので実質的に役に立たない。このためBooks Onlineを参照するには、いったんSQL Server 2000をハードディスクにインストールしなければならない。ただしSQL Server 2000のインストーラを利用すれば、Books Onlineのみをインストールするオプションが提供されているので、これを利用すればよいだろう。
SQL Server 2000セットアップでのコンポーネントの選択
この段階で「Books Online」のみをチェックすれば、SQL Server 2000の本体はインストールされず、ドキュメントだけがインストールされる。
これはSQL Server 2000 Books Onlineに限ったことではないが、この手の膨大なヘルプ・ドキュメントから必要な部分をかいつまんで読むには、「フルテキスト検索」→「検索結果ページを表示」→「[同期]ボタンをクリック」→「マニュアル内でのそのページの階層を確認し、目次上の周囲のページを読む」という方法が便利である。
SQL Server 2000付属ツール(コマンドライン・ツール)
SQL Server 2000には、データベース設計や展開、管理、トラブルシュートなどに役立つ多数のツールが付属している。これらには大きくコマンドラインで実行するものと、GUIを持つWindowsアプリケーションがある。
コマンドライン・ツールは、SQL Server 2000をインストールすると自動的にハードディスクにコピーされる。
コマンド 機能
bcp ユーザーが指定した形式でデータ・ファイルとSQL Server 2000の間でコピーを実行する
console データベース・バックアップ/復元時のメッセージの表示
dtsrun データ変換サービス(DTS)で生成したパッケージの実行
dtswiz DTSインポート/エクスポート・ウィザードをコマンドラインから起動する
isql Transact-SQLステートメント、スクリプトなどによるSQL Serverの操作(SQL Server 6.5レベル)
isqlw Transact-SQLステートメント、スクリプトなどの分析(SQLクエリ・アナライザ)
itwiz SQL Serverデータベースに最適なインデックス・セットの選択・作成(インデックス・チューニング・ウィザード)
makepipe* 名前付きパイプの整合性チェック
odbccmpt ODBCアプリケーションの互換性オプションの有効化/無効化
odbcping* ODBCデータソースの整合性、クライアントの接続性検査
osql Transact-SQLステートメント、スクリプトによるODBC経由の接続
readpipe* 名前付きパイプの整合性チェック
scm SQL Server 2000サービスの作成、変更、開始、停止
sqlagent SQL Serverエージェントをコマンド・プロンプトから起動する
sqldiag 各種診断情報(エラー・ログ、レジストリ情報など)の収集
sqlmaint データベースの保守支援(トランザクション・ログのバックアップ、インデックスの再構築など)
sqlservr SQL Server 2000インスタンスの操作(起動、停止など)
sqlftwiz コマンド・プロンプトからのフルテキスト・インデックス作成ウィザードの起動
vswitch アクティブなSQL Serverの切り替え(SQL Server 2000、Ver.6.5、Ver.6.0)
* これらのツールは標準ではインストールされない。利用する場合は、SQL Server 2000セットアップCDの\x86\Binnディレクトリから手作業でインストールするか、コマンドをコピーする必要がある。
SQL Server 2000付属ツール(GUIツール)
■SQL Server Enterprise Manager
SQL Serverデータベースの管理用として最も重要なツールがこのEnterprise Managerである。Enterprise Managerは、MMC(Microsoft Management Console)ベースのGUIアプリケーションだ。
SQL Server Enterprise Manager
SQL Server 2000の主要な管理ツールがこのEnterprise Managerである。SQL Serverデータベースの生成、ユーザー管理、SQLステートメントやスクリプトの作成など、データベースの設計、管理作業を強力に支援してくれる。
Enterprise Managerを利用すると、データベースの作成、SQL Serverサーバ・グループの定義(多数のサーバをグループ化して管理できる)、SQL Serverの実行オプションの設定、データベース・アクセスのためのユーザー・アカウントの作成と管理、クエリ・アナライザを用いたSQLステートメントやスクリプトのテスト、各種ウィザードやほかのツールの起動など、SQL Serverデータベースの管理作業を幅広く支援してくれる。読者がサーバ管理者なら、最も多用するツールの1つとなるだろう。
■SQL Serverサービス・マネージャ
データベース・サーバ上で実行される各種コンポーネントの起動や停止を制御するツール。
SQL Serverサービス・マネージャで制御可能なコンポーネントには以下のものがある。
コンポーネント 内容
SQL Serverサービス SQL Serverデータベース・エンジン
SQL Serverエージェント・サービス スケジュールされたSQL Server向けの管理作業を実行するためのエージェント
Microsoft Searchサービス* フルテキスト検索エンジン
MSDTCサービス* 分散トランザクション向け管理サービス
MSSQLServerOlAPServiceサービス* SQL Server 2000分析サービス
■SQLクエリ・アナライザ
データベースの問い合わせ(クエリ)を設計し、その結果を評価するためのツール。GUIエディタを利用してTransact-SQLステートメント、バッチ、スクリプトをインタラクティブに作成し、テストすることができる。つまり、クエリやスクリプトの作成とデバッグをインタラクティブに実行できる。データベース設計の際、あるいはトラブルシュート時に利用することになるだろう。
■SQLプロファイラ
SQL Serverが発行する各種のイベントをキャプチャするツール。キャプチャされたイベントの情報はトレース・ファイルに保存される。データベース・アクセスのトラブルや、パフォーマンス・チューニングなどに活用できる。
■クライアント・ネットワーク・ユーティリティ/サーバ・ネットワーク・ユーティリティ
クライアント・ネットワーク・ユーティリティはクライアント側のネットワーク・プロトコル、データベース・ライブラリ設定などを管理するツールである。使用可能なネットワーク・プロトコルの設定、サーバのエリアス名の設定、DB-Library(データベース・ライブラリ)を利用するアプリケーションのデフォルト設定などを管理できる。ただし、通常のデータベース接続では、SQL Serverが実行されているサーバ名やインスタンス名を利用するので、実際にこのツールを使うことはあまりない。実際には、トラブル対策で接続プロトコルの切り替えなどに使う(「TCP/IP」から「名前付きプロトコル」に切り替えるなど)。
上記クライアント向けユーティリティのサーバ版がサーバ・ネットワーク・ユーティリティである。同様に、このサーバ向けツールも実際にはあまり使うことはないだろう。
中心となるDBエンジンに加え、多数のコンポーネントでシステム構築と運用を支援
RDBMSであるSQL Server 2000には、その中心となるリレーショナル・データベース・エンジンをはじめとして、データベースの設計や展開を支援するコンポーネント、データベース・アクセスを高速かつ安全、確実に実行可能にするコンポーネントなど、さまざまなソフトウェア・コンポーネントが含まれている。データベース・システムの設計、評価、検証、展開、運用といったITライフサイクルの各フェイズにおいて、これらの中から必要なコンポーネントを活用することになる。
多機能かつ高機能であることは分かるが、まだこの段階では、それらコンポーネントの価値は必ずしも正しく認識できないかもしれない。本格的なデータベース・システムの設計や運用に触れて、初めてその価値を実感できるものが多いからだ。まだSQL Serverを勉強し始めたばかりのこの段階では、取りあえず、困ったときにはそれを支援してくれる機能やツールがどこかにあることを覚えておく程度でよいだろう。そして困ったことがあったら、Books Onlineで支援ツールがないか調べてみるとよい。
次回は、SQL Server 2000で構築されるデータベース・アーキテクチャの概要を解説する予定である。
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