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第5回 継承を使わないとしても知っておくべきこと連載 オブジェクト指向プログラミング超入門(2/3 ページ)

基本クラスの機能を受け継ぐだけが継承ではない。今回解説するような継承の機能こそがプログラミングでは実は重要だ。

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Controlクラスとその派生クラス

 あるインスタンスを、基本クラスのインスタンスとして扱うという仕組みはクラス・ライブラリの至る所で利用されています。Windowsアプリケーションでいえば、コントロールの親子関係が分かりやすい一例です。まずはこれについて見ていきます。

■Controlクラスのクラス階層

 ボタンやテキスト・ボックスなどのコントロールの実体は、クラス・ライブラリでButtonクラスやTextBoxクラスにより定義されています。そしてこれらはすべてControlクラスの派生クラスとなっています。次の図3は、Controlクラスから継承しているいくつかのコントロールのクラス階層を図示したものです。


図3 Controlクラスの派生クラスたち(一部)
これらすべてのクラスのオブジェクトは、Controlクラスのオブジェクトとして扱うことができる。

 この図の一番下にあるように、WindowsフォームであるFormクラスは、Controlクラスの(間接的な)派生クラスです。ボタンやチェック・ボックス、コンボ・ボックスなどのコントロールも、Controlクラスから直接的に派生したクラスではありませんが、基本クラスのインスタンスはさらにその基本クラスのインスタンスとして扱うことができるので、この図にあるクラスのインスタンスは、すべてのContorolクラス型として参照できます。

 ちなみに、このようなクラスの階層はリファレンス・マニュアルから知ることができます。Controlクラスを調べると次のような記述(図4左)があります。ここで「派生クラス」をクリックすると、Controlクラスを継承しているクラスが現れます(図4右)。


図4 リファレンス・マニュアルにあるControlクラスの階層
クラスの派生クラスを調べるには、まずそのクラスを検索し、「派生クラス」の部分をクリックする(そのクラスに派生クラスがある場合)。

■コントロールの親子関係

 ここで、次のようなデザインのWindowsフォームを考えてみましょう。フォームに2つのButtonコントロールと1つのGroupBoxコントロールをまず配置し、さらにGroupBoxコントロール上には2つのRadioButtonコントロールを配置します。この場合、2つのRadioButtonコントロールはGroupBoxコントロールによりグループ化されます。


図5 コントロールを配置したWindowsフォーム
グループ・ボックス(GroupBoxコントロール)内に配置された2つのラジオ・ボタン(RadioButtonコントロール)は、グループ・ボックスによりグループ化されている。

 このようにして配置したフォーム上のコントロールには、次の図6のような親子関係がVisual Studio .NETにより自動的に設定されます。2つのButtonコントロールとGroupBoxコントロールはフォームの子コントロールです。同様に、2つのRadioButtonコントロールはGroupBoxコントロールの子コントロールとなります。


図6 フォーム(図5)に配置したコントロールの親子関係
2つのボタンはフォームの子コントロールであるが、2つのラジオ・ボタンはグループ・ボックスの子コントロールである。

 ここでは詳しくは述べませんが、親子関係にあるコントロールは、親コントロールを移動させるとその子コントロールも移動する、子コントロールは親コントロール内にしか描画できない、子コントロールは親コントロールよりも常に手前(前面)になる、などの特徴があります。

■コントロールのコレクションであるControlsプロパティ

 さて、このような親子関係を実現しているのは、Controlクラスで定義されているControlsプロパティです。このプロパティによりアクセスできるオブジェクト*1は、内部的に複数のコントロール(への参照)を保持することができます。このような複数のオブジェクトを保持できるオブジェクトは「コレクション・オブジェクト」と呼ばれます。

*1 実際には、このオブジェクトはControl.ControlCollectionクラスのオブジェクトです。これは、Controlクラスの内部で定義されたControlCollectionという名前のクラスで、このようなクラスは「入れ子クラス(Nested Class)」と呼ばれます。このクラスはControlクラスで利用されることがメインなので、入れ子クラスとして定義されています。


 すべてのコントロールはControlクラスを継承しているため、すべてのコントロールがControlsプロパティを持っています。このため、次の図7のようにコントロールはほかのコントロールを子コントロールのコレクションとして保持することができます。


図7 Controlsプロパティによるコントロールの親子関係
すべてのコントロールはControlクラスの派生クラスなので、Controlsプロパティを持っている。このプロパティは、ほかのコントロールをコントロール・コレクションとして保持できる。

 そしてこのControlsプロパティは「Add」というメソッドを持っており、このAddメソッドにより、コントロールをコレクションに追加することができます。Addメソッドのパラメータには、追加するコントロールを指定します。もはやいうまでもなく、Addメソッドのパラメータの型はControl型です。

 次のコードは、上記の親子関係のあるコントロールをVisual Studio .NET(以降、VS.NET)を使ってフォーム上にデザインし、VS.NETで生成させたコードから、コントロールのインスタンス化とControlsプロパティへの設定の部分を抜き出したものです(C#のコード。VB.NETでは「this」の部分が「Me」になります)。

this.groupBox1 = new GroupBox();
this.button1 = new Button();
this.button2 = new Button();
this.radioButton1 = new RadioButton();
this.radioButton2 = new RadioButton();

this.groupBox1.Controls.Add(this.radioButton2);
this.groupBox1.Controls.Add(this.radioButton1);

this.Controls.Add(this.button2);
this.Controls.Add(this.button1);
this.Controls.Add(this.groupBox1);

Visual Studio .NETにより生成されたC#のコード(抜粋)
図5のフォームに対して自動生成されたコードから、コントロールのインスタンス化とControlsプロパティへの設定の部分を抜き出したもの。通常このコードは「フォーム デザイナで生成されたコード」として(VS.NETのアウトライン機能により)隠されている。

 ちなみに、「this」や「Me」はC#およびVB.NETのキーワードで、自分自身のインスタンスを参照するために使用するものです。上記のコードでは、thisがなくてもコンパイルは可能です。これについては次回で解説する予定です。

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