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出させてください、退職届退職活動やってはいけないこんなこと(3)(2/2 ページ)

転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。

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CASE2 「専務は怒っているぞ」

 次に紹介するのは、信頼していた人から想像もつかない対応をされた例。人間不信になってしまいそうなお話です。

 八代さん(仮名・28歳)は、大手ハードウェアメーカー系のSI会社T社に勤務するITエンジニアです。将来を非常に期待されていて、通常業務のほか、社内の最新技術動向調査と教育・啓蒙(けいもう)を行うプロジェクトにアサインされていました。

 本人の将来の夢は、業界の標準的な技術を学び、フィールドで技術動向などを広められるような立場で仕事がしたいというものです。弊社への相談の内容も、いますぐ転職する必要はないが、長期的に見てキャリアアップできそうな仕事があればチャレンジしたいというものでした。

 タイミングのいいことに、ちょうど外資系のITベンダU社でエバンジェリストのポジションの求人があり、八代さんは面接を受けることになりました。数回の面接も非常にスムーズに進み、内定を得ることができました。まさに八代さんの目指すキャリアが実現できるポジションです。内定のお知らせをしたとき、本当にうれしそうな表情をされていたのが印象に残っています。

話を聞き入れてくれない専務

 八代さんに退職のアドバイスを行い、いよいよ退職活動に入ります。

 まず八代さんは、上司であるA課長に来月末で退職したいと伝えました。するとA課長は、本来ならB部長に報告すべきだが、彼は使えない人だから直接C専務に話をしておくといってくれました。後日、結果の報告をするというのです。A課長は八代さんが新人のころから世話になり、信頼している大先輩でもありました。

 しばらく待ちましたが、A課長からは何の報告もありません。矢代さんはA課長に確認してみました。

 A課長はC専務に話をしたのですが、C専務は怒って話を聞き入れてくれなかったということでした。それではどうしたらよいのかと尋ねると、2カ月ほど退職時期を延ばせば、何とか交渉ができるというのです。

 そこで私に連絡が入りました。もちろん、内定先のU社に入社日を2カ月ずらす交渉をしてほしいという依頼です。経験上、交渉は難しいと思ったのですが、U社の人事と懇意にしていたこともあり、相談というスタンスでお話をしてみました。

 結果は予想どおりで、変更は難しいというものでした。予定の入社日でなければ駄目だというのです。実は社内掲示板にも求人を公開していたらしく、内部異動の希望者がたくさん出てきたため、2カ月先なら内部で人材を調達するとのことでした。八代さんにそう伝えたところ、とても困った様子であったことはいうまでもありません。

専務と直接話してみると……

 そこで、このようにアドバイスをしました。A課長を通じて話をするのではなく、C専務に直接話をしたいとA課長に交渉してみてはどうかと。

 八代さんは少し気が引けた様子でしたが、交渉を実行しました。A課長は、C専務と直接話をすることは承諾してくれましたが、その後はどうなっても知らないともいったそうです。

 八代さんは勇気をふり絞ってC専務に面談の約束を取り付け、退職の報告をしました。すると、C専務からは意外な言葉が返ってきたのです。「最近の若い人は、引き留めても無理なようだからしょうがない」そういって当初の退職日ですんなり受理してくれたそうです。なんと、A課長は八代さんの退職意思をC専務にまったく伝えていず、八代さんにはうその報告をしていたのでした。

 八代さんが席に戻ると、A課長が状況をうかがいにきました。C専務と話した内容を報告すると、A課長は無言で机を蹴り、その場を去ったということです。信頼していた上司にこのような対応をされ、さぞ複雑な気持ちだっただろうとは思いますが、結果的に八代さんは目的の期日に退職し、無事U社に入社することができました。

上司が決裁者でない場合は

 さて、八代さんのケースを振り返って検証したいと思います。八代さんはA課長を通じて退職の話を進めていましたが、一向に進展がなく、揚げ句の果てに内定先企業に入社時期の変更を交渉しなければならないことになりました。

 解決策は、A課長にC専務と直接交渉をしたいと申し出ることでした。C専務と直接話をすることにより、八代さんは予定日に退職をし、予定どおりに入社することができました。

 八代さんはわれわれに相談することで難関を突破する方法を見つけましたが、一般的には下記の点に留意することが望ましいと思われます。

  1. 直属の上司が決裁者でない場合、決裁者にはいつ伝えてもらえるかを確認する
  2. 退職日を伝えたら、一切引かない姿勢で臨む
  3. 話が進まない場合、さらに上の上長あるいは人事に直接話をさせてほしいと依頼する

転職は決して譲らないスタンスで

 今回は、CASE1で萩原さん、CASE2で八代さんの事例を紹介しました。同じような事例であるのに、なぜ成功する場合と失敗する場合が出てくるのでしょう。

 2人には大きく異なる点がありました。それは転職に対するスタンスです。退職を申し出るときの、絶対に後戻りしない、時期に関して譲らない姿勢。この姿勢があるかないかで、明暗がはっきり分かれます。

 退職活動で困ったときは、信頼できる第三者に相談してみるのもいいかもしれません。今回、これまでに出会った相談者の例の一部を紹介しましたが、ほかにも数々のトラブルの相談を受け、解決策を見いだすお手伝いをしてきました。

 退職活動をスムーズに進めるためにも、さまざまなノウハウを持つ人材紹介会社を活用することは有効だと思います。弊社でも経験豊富なコンサルタントが多く活躍しております。キャリアアップの相談から退職の指導まで、あらゆる局面でお役に立てますので、ぜひともご活用ください。

著者紹介

藤田孝弘

アデコ

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1965年生まれ、滋賀県出身。大学卒業後、人事系コンサルティング会社に就職。人材採用と教育・人事制度関連のコンサルティングに約10年間従事。その後IT専門の人材サーチ会社にて、ITコンサルタントやITエンジニアを中心とした人材のキャリアコンサルタントを約5年経験。アデコに転職し現在に至る。これまでIT業界を中心に2000名以上の転職支援を行っている。



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