連載
» 2006年02月16日 00時00分 公開

ご縁がなかったということで退職活動やってはいけないこんなこと(4)(1/2 ページ)

転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。

[山口孝之,アデコ]

 転職活動の終盤戦では、さまざまな駆け引きが行われることがあります。最近では好景気の影響か、複数の企業から内定を得ることも多く見られるようになりました。今回は、企業との駆け引きに失敗し、内定を取り消されてしまったケースを取り上げます。

3社の最終面接に進んだ藤山さん

 藤山さん(仮名)はシステム開発(SI)企業に勤める34歳のエンジニアでした。10年のキャリアがあり、特に製造業のSCMシステムの経験が長く、同分野では社内の第一人者との評価を受けていたそうです。

 藤山さんは数年前からSCMシステムのプロジェクトリーダーとして活躍し、協力会社を含めると25名ほどのチームを統括していました。顧客からの信頼も厚く、仕事は順調でした。しかしながら藤山さんは予算権限やより高いレベルの人事権限を求め、プロジェクトマネージャになりたいと思っていたそうです。

 会社は彼を高く評価していましたが、藤山さんは年功序列の風潮が強い会社ではプロジェクトマネージャになるのに相当の年数がかかると判断し、キャリアアップを企図して転職活動を始めました。

 藤山さんはSCMに強い大手SI企業を中心に、複数の企業にアプローチしました。転職活動は順風満帆だったそうです。どこの企業にいってもSCMに関する深い業務知識と技術力、プロジェクトマネジメント経験が高く評価され、意中の企業3社から最終面接の案内が届きました。

 藤山さんは3社それぞれの最終面接に臨み、再度自分の能力・経験をアピールしました。その時点では企業側の印象も非常に良かったようです。最終面接後、採用担当者から次々と、採用の条件提示をしたいので再度足を運んでほしいという連絡が入りました。藤山さんは行きたい会社を3社の中から自由に選べる立場だったわけです。しかしそこから、彼の失敗が始まりました。

際どい駆け引きの結果……

 まず藤山さんは1社目の条件提示に臨みました。提示された条件は、藤山さんの要望と比べてもまずまず満足できるものでした。採用内定通知を手にして意気揚々の藤山さんは2社目に向かいました。2社目の提示内容は1社目に比べ若干劣るものでした。藤山さんは1社目の条件をダシに使い、より高い年収などの条件を要求したそうです。結局2社目では条件面の折り合いがつかず、採用内定通知は発行されませんでした。

 藤山さんは同じことを3社目の会社でも行いました。彼は3社に対し、一番高い年収を提示した会社へ入社を希望すると伝え、企業側の対応を見ることにしたそうです。

 数日後、藤山さんにとって悪夢のようなことが起こりました。3社のうち2社から、採用を取りやめる旨の連絡が入ったのです。2社からはまだ正式な内定通知を受け取っていませんでした。

 藤山さんは、その2社からも内定を受けられるものと思い込んでいました。さらに悪いことに、彼は転職活動が思いのほか好調に進展したので、すでに自社へ退職届を出してしまっていたのです。2社へ問い合わせてみると、藤山さんの希望する年収額は給与水準を著しく上回るもので、藤山さんを優秀な人材とは認めつつも、どうしても採用はできないといわれたそうです。

 藤山さんは2社をあきらめ、すでに内定を受け取っている1社目に入社意思を伝えようと電話しました。驚いたことに、なんと1社目も藤山さんの採用を見合わせたいといってきました。採用内定を出したのに、それを取り消したいというのです。

 理由はやはり給与水準に合わないこと、加えて金で動くタイプの人は社風に合わないと判断されたことでした。「残念ですが、ご縁がなかったということで」。自分を受け入れてくれる会社がない、いまの会社にも戻れない……。藤山さんは途方に暮れてしまいました。

敗因を分析すると

 なぜこのような事態になってしまったのかを検証してみましょう。

 3社が採用を見合わせた理由ですが、年収面で折り合いがつかなかったこと、3社をてんびんにかけて高年収を引き出そうとしたことが原因のようです。

 採用側も人間です。やはり自社の事業内容、社風、仕事を通して得られるものなどを基に会社選びをしている人を好みます。年収額は会社選びの重要な要素ではありますが、そればかりが目立ってしまうと受けが良くありません。しかも3社をてんびんにかけた駆け引きを演じたことで、藤山さんの人格面にも疑問を持ったのではないでしょうか。

 藤山さんに足りなかったのは、「転職先の企業への配慮」です。転職活動は恋愛と同じです。誰だって自分の経済力に引かれてくる人よりも、自分の精神面を愛してくれる人を好むでしょう。

 しかし、結婚相手を選ぶ際に経済力も要素の1つであるように、年収を考慮して会社選びをするのは決して不思議な話ではありません。もし、藤山さんが転職先の企業に配慮し、事業内容や仕事内容などに興味を示しつつ、控えめな態度で他社の状況を伝え、良好な関係を築きつつ条件の交渉を行っていたら、きっと希望する条件をほぼクリアする形で転職先が決まっていたでしょう。

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