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出させてください、退職届退職活動やってはいけないこんなこと(3)(1/2 ページ)

転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。

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 転職先企業から内定をもらった後は、現在の会社をある一定の期間内に退職する必要があります。この「退職活動」に関して解説する連載も今回で3回目になりました。

 前回「辞めるのやめていいですか?」では、本人の退職意思が強いとはいえなかったため、退職活動につまずきそうになったケースを紹介しました。今回も実際の例に基づき、現在所属する会社から無理をいわれて退職活動が進まないケースの検証と回避方法についてお話ししたいと思います。

CASE1 派遣先との交渉、迫る入社日

 まず初めに紹介するのは、現在の会社からの引き留めと迫る内定先への入社日の板挟みになり、その結果せっかくの内定を辞退し、転職活動自体をリセットしたくなってしまった例です。

 萩原さん(仮名・34歳)はシステム開発(SI)会社A社に勤め、Webシステムの開発に従事するITエンジニアです。A社は社員が50人ほどの規模で、ITエンジニアを派遣する形態が中心。萩原さんも派遣エンジニアの1人でした。

 萩原さんは、大手システムインテグレータ(SIer)C社が請け負うWebシステムの一部を開発する、2次請けのB社に派遣されていました。Perl、PostgreSQLなどのオープンソース系の開発が中心であり、技術的には満足できるものの、マネジメントの経験ができない現状に将来の不安を感じ、キャリアアップ転職を考えて弊社に相談に来たのです。

 将来的にマネジメント職を志向していた萩原さんは、提案した案件の中から上流工程の経験が積めるSI会社とネットベンチャーを選択し、複数社を受験しました。

 34歳という年齢にもかかわらずマネジメントの経験が一切なかったため、初めのうちはほとんどが不採用という結果でした。しかし萩原さんはあきらめずに挑戦を続け、苦労の末にSI会社のZ社から内定を得ることができました。

 Z社の提案は、まずはリーダーとして仕事を始めてほしいという内容でした。提示された給与は現状とほぼ同額でしたが、将来的なキャリアパスを考えると非常に魅力的な仕事ができる会社です。萩原さんは悩むことなく入社意思を固め、1カ月半後の入社予定で話を進めました。

派遣先との交渉に疲れ……

 ここから、萩原さんは退職活動を始めることになりました。直属の上司に報告をするところまでは順調に進みました。しかし社長との面談をした萩原さんから、私あてに連絡が入りました。1カ月半後の入社日に間に合わない可能性が出てきたので、少し入社日をずらしてほしいというのです。

 話を聞いてみると、1カ月半後に退職をしたいという萩原さんの申し出に対し、社長は「B社に常駐しているのは君だろう。B社と直接交渉をしてくれ」といったそうです。萩原さんはいわれるまま、B社と交渉しました。するとB社には「それは困る。うちは2次請けの会社だから。1次請けのC社と交渉をしてほしい」といわれたそうです。C社からは「契約期間は3カ月後まである。最低その時期まで在籍してもらわなくては困るし、その後の引き継ぎにも時間を取ってもらう必要がある」といわれたとのことでした。結局、内定先のZ社に1カ月〜1カ月半入社日をずらす交渉をし、要望を受け入れてもらいました。

 ひとまずはいわれるままに入社日をずらし、2回目の退職時期の交渉に臨んだ萩原さんですが、しばらくしてまた連絡がありました。なんと、Z社の内定を辞退したいというのです。

 理由を尋ねてみると、A社から、今後のキャリアを考えて次のプロジェクトではマネジメントができる業務にアサインするといわれたからとのことでした(口約束なので、正直信じてはいないということですが……)。萩原さんの本音は、キャリアアップのためZ社で仕事をしたいという気持ちはあるものの、A社、B社、C社の交渉に疲れきってしまい、転職自体をリセットしたい気持ちになってしまったというものでした。

派遣先に話をするのは間違い

 第三者からは、萩原さんは矛盾だらけの話に振り回されてしまっているように見えます。なぜこのような状況になったのかを検証してみましょう。

 失敗した要因は、萩原さんが、退職日の話を派遣先と行った点にあると思います。本来ならば雇用の責任者である自社の社長に話をするべきでしょう。萩原さんが派遣先企業に申し出るべきものではありません。

 派遣は会社と会社の契約ですので、権限のある代表者(社長)に交渉をお願いしたいとの申し出をすべきだったと思います。また退職意思を伝える際は、時期の交渉には乗らないというスタンスで臨むべきでした。そうしていれば、このようなことにもならなかったかもしれません。

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