転職成功の鍵は、その「理由」にある:キャリアビジョンづくりから始めよう(5)(1/2 ページ)
キャリアとは、キャリアビジョンとは何だろうか。それを知り、己のものとするとこで、どんなメリットがあり、どう役立つのだろうか。そして、それを転職や自分の転機にどう生かせるのか。それを解説する。
この連載では、第1回「キャリアとキャリアビジョンを考える」でまずキャリアビジョンとは何かを探り、第2回「自分の価値観は何だったのか」で自分が大切にしたい価値観について考えました。そのうえで、戦略的に将来につなげるためにいまするべきこととして、第3回「仕事を通して自己価値を生み出そう」、第4回「魅力的な仕事を手に入れるには」というトピックを取り上げました。
ここまで考えた結果、自分の進む先に「転職」という選択肢を思わずにはいられない人も多いでしょう。また、ある一定の年齢に達したときや、仕事における転機、生活の節目などに転職を考えるのは自然なことともいえるようです。今回はこの転職について整理してみたいと思います。
転職はポジティブに
景気の回復とともに失業率の改善も著しいところですが、公共職業安定所をはじめとする自治体の就職支援施設には連日多くの人が訪れています。転職サイト、人材紹介会社の動きも活発です。新入社員の3割が3年以内に転職するといわれる昨今、転職はかなり身近なものになっています。しかし、私の出会う転職者の多くは、それほどスムーズに転職活動を進められていないように思えます。
原因としては、望まない転職や、思い余っての転職が多いことが挙げられます。自らのキャリアデザインの中に位置付けられたものとして転職の機会を迎えられる人ばかりとはいえません。その場合、感情を整理し状況を受け入れるための時間が必要になり、その後の転職活動をスムーズに進めるにもパワーや費用が必要です。
そういった現状を考えると、いまの職場に対する不安や不満、もしくは転職への期待を感じている人には、退職前にある程度の準備をしておくことをお勧めします。失業保険はありますが、それに頼ることは難しいものです。あくまで保険としてとらえましょう。
転職が、自らのキャリアビジョンに照らして自らが決定する、ポジティブな選択であってほしいと思います。
成功する「転職理由」とは?
転職とは仕事を変えることですが、結果として生活を変える、生き方を変えることにもつながるでしょう。「転職して良かった」と思えるのか、「転職は失敗だった」となるのか、その分岐点は転職活動のスタートにあるといっても過言ではありません。
これからの自分の仕事に、何を求めて転職をするのか。この転職理由にこそ、転職成功の鍵があります。どれが良くてどれがいけないということではありません。転職理由が自分の生き方、人生の目標、キャリアビジョンに重なり合っているほど成功する確率は高いといえます。「自分のスキルや専門知識を高めるために」「家族との生活を大切にしたいから」など、現状や将来をどう変えたいのか、どう設計したいのかを明確に持つことです。
しかし多くの場合、転職の直接の原因は、安い賃金、少ない休日、過度の残業、仕事への不安・不満、人間関係なとなっています。それら要因そのものに目を向けるのではなく、なぜそれを変えたいのかと自分の中をのぞき込んでみてください。なぜいま、このような転職をしたいのかをしっかりと考え、整理をし、誰にでも分かる言葉で人に伝えられるようにすることが大切です。自分なりのプランに裏打ちされた転職であれば、たとえ社会的地位や収入が下がることになっても、自分の視点で仕事や会社を選ぶことができます。周囲からも転職先の企業からも理解が得られるでしょう。
また、いまの仕事に適性を感じることができずに転職を考える方も多いと思います。では自分の適性とは、適職とは何なのでしょう。自分に向いていない、面白くないと感じることにやる気が起きないのは当然ではありますが、「好きだから」「やってみたいから」という意欲だけで進むのも危険です。
「やってみたい」は第一歩ではありますが、転職に当たっては、その仕事には何が必要なのか、分野は違ってもいまの自分に何ができるのか、経験からどんなことなら今後できるのかなど、冷静に分析することも必要です。志向とスキル・ニーズ(将来への期待も含めて)の一致が具体的なマッチングにつながるといえます。いずれにしても、「自己実現の場は自分でつくり出す」という気概が大切なのです。
転職活動の流れ
転職については、どんな準備をしておけばいいのでしょう。一般的には以下の流れを意識しておいてください。次章以降で各段階の解説をします。
1.【自己理解・自己分析】〜自分についての情報を集め、整理する
- 経験・興味・価値観・能力・性格などを通して、特徴と強みを整理する
- 働きやすい環境、やりがいを感じることができる環境を明確にしておく
- 条件を整理し、優先順位を考えておく
- 自分の市場価値を把握する
2.【就職環境の理解】
〜最近の業界動向や自分の求める求人状況との一致度を調べる
- 情報源と情報収集方法について理解する
- 現状と条件のすり合わせを行う
3.【目標設定】〜どんな仕事にいつごろ就きたいかを設定する
4.【活動計画策定】〜目標実現に向けていつまでに・何を・どうするかを計画する
5.【求人情報収集】〜具体的条件に基づいて求人情報を収集する
- 情報源を活用する
- 幅広く集める
6.【企業選択】〜自分に合った企業を見つける・見極める
- 応募企業を調べる
- 自分の目で確認する
7.【応募】〜応募書類と面接を通して自分を伝える
- 整理されたアピールポイントを基に、企業にとって分かりやすい応募書類を作成する
- 面接を通して自己表現をする
- 不明な点を明らかにする
8.【決定・就業】〜転職が決まる
- 雇用契約を確認する
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