「レースが面白ければ、走るのは人間でもAIでも構わない」 若きエンジニアが夢見るモータースポーツとAIの共存:Go AbekawaのGo Global! スコットさん from イギリス(1/3 ページ)
自律走行レース「A2RL」で優勝を飾った日本のレーシングチーム「TGM Grand Prix」。現場でマシンを制御したのは、スコット・ロベル氏。イギリス人である彼は、なぜ、あえて日本の過酷なモータースポーツ界に飛び込んだのだろうか。
2025年11月、アラブ首長国連邦アブダビで開催された自律走行レースの最高峰「A2RL(※1)」において、日本のレーシングチーム「TGM Grand Prix」(セルブスジャパン)が、タイムアタック形式のレースで優勝を飾った。
このプロジェクトの中核を担い、自律走行アルゴリズムの適合と実車制御のオペレーションを担当したのが、イギリス人エンジニア、Scott Lovell(スコット・ロベル)氏である。モータースポーツの本場イギリスでエンジニアリングを学び、あえて日本の門をたたいた彼が、自動運転の最前線で見つめる未来とはどのようなものなのだろうか。
レースが面白ければ、走るのは人間でもAIでも構わない
A2RLは、ドライバーの代わりにAI(人工知能)がマシンを操る「無人」レースだ。2024年に始まったこの大会、初年度は元F1ドライバーであるダニール・クビアト氏とAI車両が対決し、人間が圧勝した。
しかしAIの進化のスピードは、われわれの想像を超えていた。AIは絶え間ない学習を続け、わずか1年後にはクビアト氏に肉薄するスピードを手に入れたのである。この劇的な変化を間近で見たスコット氏は、レースの本質を「誰が走るか」ではなく「純粋な競争」として捉え直している。
「個人的には、面白いレースが見られるのであれば、走っているのが人間でもAIでも構わないと思っています。面白い結果が出るなら、担当が誰とか選手が誰とか、そんなに必要ないと思うんです」
彼にとって重要なのは、テクノロジーがいかに極限のエンターテインメントを生み出せるかという点にある。
「テクノロジーによって人間よりAIが速くなるなら、それはそれで新しい『面白いレース』の形になります。大切なのは、マシンが持つ性能をどれだけ引き出し、エキサイティングな競争を見せられるかです」
「正しい」か「正しくない」か明確な方が楽しい
スコット氏は1999年に東京で生まれ、1歳の時にイギリスのミルトン・キーンズへと渡った。エンジニアの両親を持ち、多くのF1チームが拠点を構える環境で育った彼は、次第に論理的な世界へ引かれていったという。
「数学が楽しかった。『正しい』か『正しくない』か答えがあり、イエスかノーか明確な分野に引かれました」
大学は、イギリスの名門オックスフォード・ブルックス大学へ進学し、モータースポーツエンジニアリングを専攻した。同大学は多くのF1エンジニアを輩出していることで知られる。彼はそこで学士から修士(マスター)まで計5年間にわたり、競技車両の設計とダイナミクス解析の研さんを積んだ。
車両運動力学(ビークルダイナミクス)や空気力学(エアロダイナミクス)を中心に、サスペンションの挙動が走行性能にどう影響するかといった、定量的かつ実践的なエンジニアリングに比重を置いて学んだ。
中でも彼を魅了したのは、わずかなパラメーターの変更が大きな結果の差を生む「微調整」の世界だった。
「特にモータースポーツは、小さい変更で答えが出るから、その細かい微調整に興味がありました。エアロダイナミクスなどもそうですが、自身の介在によってアウトプットが変化するプロセスを非常に面白いと感じました」
電気自動車を専門とした自動車工学の修士課程「Automotive Engineering with Electric Vehicles」を専攻。EV(電気自動車)についても深く研究した。
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