【3】RemoteObjectコンポーネント
RemoteObjectコンポーネントを利用すると、リモートアプリケーションサーバのJavaオブジェクトのメソッドを直接呼び出すことができます。処理の動きはこれまでの解説のとおりです(Java側はこの後簡単に解説しますが、メソッドがあってそれが呼ばれるだけです)。
RemoteObjectはJava以外のオブジェクトを呼ぶことができますが、Javaの場合も何らかのソフトウェアとペアで利用する必要があります。
サーバソフトウェア | サーバ側で利用できるオブジェクト |
---|---|
BlazeDS | Java、JMS |
LiveCycle Data Services ES(LCDS) | Java、JMS、ColdFusion、Hibernate、SQL |
S2Flex2 | Java |
WebORB | Java、.NET、Ruby on Rails、PHP |
AMFPHP | PHP |
SabreAMF | PHP |
PyAMF | Python |
Django AMF | Python |
表6 Flexで呼び出せるリモートオブジェクト(主なもの) |
こうして見ると、Flexに対するサーバ側アプリケーションの実装はどんな言語でもOK、ということが分かります。RemoteObjectと設定ファイル(次回以降解説予定)を修正すれば、Flex側のコードの記述はほとんど変えずに、「Hello! S2BlazeDS」アプリケーションも動くということになります。付け加えると、Adobe AIRの通信処理もFlexの場合とまったく同様です。
このRemoteObjectの通信方式は「AMF 3」というものが使われています。「AMF(Action Message Format)」はバイナリ通信の技術(データのフォーマット技術)です(以降、本連載での「AMF」はAMF 3のことです。ほかにも「AMF 0」という通信方式があります。これは、Flash Playerのバージョン6から8までの時代で主に使われていたフォーマットです)。
この通信方式の特徴は、通信で必要なデータを圧縮して送受信するというところです。ほかのHTTPServiceコンポーネントやWebServiceコンポーネントの通信時のように、タグ(<や>など)などの無駄な情報は送信しません。
一般的に、RemoteObject、HTTPService、WebServiceの順に通信が速いといわれています。
サーバ側のJavaとDBの処理はどうなっている?
これ以降は、サーバ側のソースコードを簡単に説明していきます。
「S2Container」でコンポーネントを自動登録
Seasar2のS2Container(DIコンテナ)に自動登録されているコンポーネントはHelloWorldServiceの1個だけです。自動登録の設定はSeasarのデフォルトの設定を利用しています。そこで、最初は「serviceパッケージ以下に○○ServiceというJavaクラスを作るとコンポーネントとして自動登録される」というルールを覚えれば、OKです。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
- クライアントからのDTOを受け取る(【い】の処理)
- DBアクセス処理を呼び出す(【ろ】の処理)
- DBアクセス結果をDTOに詰めてクライアントに返す(【は】の処理)
処理の流れは非常にシンプルです。
シンプルで使いやすいDB接続技術「S2JDBC」
本アプリケーションではDBアクセスにS2JDBCを使っています。この技術はSQLではなくJavaでDBへのクエリを実装できる形の(一般的には)新しい技術です。JPA(Java Persistence API)や.NET Framework 3.5から導入された「LINQ」と文法は似ていますが、後発なこともあって、非常にシンプルで使いやすい技術になっています。この技術も「S2」という文字列から始まることから分かるとおり、Seasar Foundationで開発されている技術です。
ただ、SQLではなくJavaでクエリを記述することで、複雑なSQLで行っていたものと同等なクエリを「考え出す」ことには少しハードルが高いかもしれません。その場合、SQLを直接実行するメソッドも用意されているので、そちらを利用します。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
getTestメソッドでは、Testエンティティ(検索条件)を受け取り検索を実行し、検索結果のTestエンティティを返しています。この処理のように、DBアクセス処理はエンティティかエンティティのリストを引数に取り、エンティティかエンティティのリストを返すという形がポピュラーです。insertのときなどは、insert件数としてint型が返ってきたりします。
jdbcManagerは、H2データベースの設定が行われたJDBCアクセスを管理しているオブジェクトです。S2Containerから自動的にインスタンスがDIされています。設定はs2jdbc.diconとjdbc.diconに記述されています。実際の処理を見てみましょう。処理を日本語に訳すと、「TESTテーブルから条件はid = test.id(画面で設定された777)で検索し、1件の検索結果を取得する」というものです。シンプルなクエリであればSQLを記述する必要はありませんね。
H2データベース
H2は軽量で埋め込みモードでも実行可能なDBです。サーバ起動が不要なので、今回のサンプルでも利用しました(Seasar関連のサンプルでよく利用されています)。今回利用したテーブルがTESTテーブルなのは、H2にデフォルトでサンプルとして付いているのがTESTテーブルだったので、そこに1レコード(id=777、name=World!)を追加しています。
H2には、Webベースの管理ツールが付いているのですが、EclipseプラグインのDBViewerを利用してもDBの内容を確認できます。DBViewerのインストールはUpdateSiteを利用すると簡単です。
次回はFlexとStrutsの連携
以上で、「Hello! S2BlazeDS」アプリケーションの解説を終わります。「HelloWorld!」なのにとても長くなってすみません。
次回は、Flex+Strutsの連携をお伝えする予定です。FlexとポピュラーなサーバサイドJava技術のStrutsを連携させて簡単なeラーニングアプリケーション(クイズアプリケーション)を作成する予定です。今回登場したBlazeDSやS2JDBCは第4回以降の連載で再登場する予定です。以下、連載の簡単な予定です。次回もお楽しみに。
第1回 | Webアプリケーション開発の歴史とFlexの紹介、Flex+Java開発環境構築(2008/5/22公開済み) |
---|---|
第2回 | S2BlazeDSを用いたFlex+Javaアプリケーションの基礎 (今回) |
第3回 | (予定) Flex+Struts連携。FlexとポピュラーなサーバサイドJava技術のStrutsを連携させる |
第4回 | (予定) Flex+S2Flex2+Seasar2。Flex部分はそのままにJavaをSeasar2に差し替えてサクサク開発を体験 |
第5回 | (予定) Flex+S2BlazeDS+Seasar2。最新のBlazeDSを用いてFlexとJavaを連携させてみる |
第6回 | (予定) クイズアプリケーションの総仕上げ。よく使う技術トピックを実装しながらアプリケーションを仕上げる |
表7 「業務用RIAの本命!? Flex+Java開発入門」連載予定 |
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プロフィール
福田 寅成(ふくだ ともなり)
クラスメソッド株式会社 エンタープライズサービス部門 システムエンジニア
大手SIerでの長いJava開発経験を経てクラスメソッドに。 Java、JavaScript/Ajax、Flex、AIR、C#など、さまざまな分野に関する技術調査研究、および業務アプリケーション開発に携わる。 FlexやAIRの開発依頼はコチラ
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