「従来のITスキル標準(ITSS)などは、管理者サイドからの『育成』『管理』という観点で外科的に分類しているが、学生や若い人たちから見て、自分のキャリアをイメージするのはかなり難しいのではないか」――情報処理推進機構(IPA)が7月9日に開催した「ITスキル標準プロフェッショナルコミュニティフォーラム2008」で、経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課の奥家敏和氏はこう語った。
同イベントでは、ITSSに対応した7職種の委員会から構成されるIPAのプロフェッショナルコミュニティの活動成果を報告した。冒頭では奥家氏が「高度IT人材育成の今後の方向性について」と題して講演を行った。
奥家氏は日本のIT人材の現状と課題などに触れつつ、情報処理振興課に来る以前に、秘書課で人事や採用に関わっていたことから、「学生と話しているとき、あるいは人材育成政策を行っているときに、ギャップを感じた」と、採用する側とされる側の意識の違いについて語った。さらに、「あなたはこういうタイプだから、こういう人間になれるよという具合に、モデルになれそうな人と会わせて働くイメージを持てるようにしていた」と奥家氏は自身の経験を語り、「IT産業ではそういったメッセージを若い人たちに出してあげているかどうか」と課題を投げかけた。
IPAのプロフェッショナルコミュニティは「ビジネスの第一線で活躍しているハイレベルの人材による、日本のIT人材のレベルアップに貢献するための業種横断的なコミュニティ」と定義されているが、奥家氏は前述のような「若い人にイメージを持たせる」という課題において、このコミュニティが非常に重要な役割を担っていると説明。プロフェッショナルコミュニティのメンバーそのものが学生のモデルであり、「これまでに培ってきたことを、学生に対してモデルとして示してあげることが重要」だと主張した。
続いて登壇したIPA ITスキル標準センターのセンター長 丹羽雅春氏は、プロフェッショナルコミュニティの活動実績と今後の方向性について説明した。現在66人で構成されており、部長クラスと課長クラスが合わせて64%を占め、業種もハードウェア企業、ユーザー企業、コンサルタント企業、システムインテグレータ企業など、「ハイレベルで多彩な顔ぶれ」であるという。
丹羽氏は、これまでもITアーキテクトやアプリケーションスペシャリストなど各職種ごとに「ITスキル標準改善提案書の作成」や「育成ハンドブックの作成」を行ってきたが、今後はさらに、グローバル化(海外コミュニティとの交流など)、オープン化(IPA外の各種協会や企業内のプロフェッショナルコミュニティとの交流など)、人材育成手法の確立を目指すとした。
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