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通信業界は売上高に占めるITコストが高い味わい深いシステムを開発するための業界知識(2)(2/3 ページ)

ITエンジニアの日々の業務は、一見業界によって特異性がないようだ。だが、実際は顧客先の業界のITデマンドや動向などが、システム開発のヒントとなることもある。本連載では、各業界で活躍するITコンサルタントが、毎回リレー形式で「システム開発をするうえで知っておいて損はない業務知識」を解説する。ITエンジニアは、ITをとおして各業界を盛り上げている一員だ。これから新たな顧客先の業界で業務を遂行するITエンジニアの皆さんに、システム開発と業界知識との関連について理解していただきたい。

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通信業界のシステムにおける課題

 これまで通信事業者は、他社との差別化のために多種多様な料金プランや割引サービスをスピーディに提供してきました。そのため、高いレベルで業務をサポートするアドホック的なシステム増強を繰り返して行ってきました。結果、システムは複雑かつ密結合化し、OPEX(Operating Expense:業務費)、CAPEX(Capital Expenditure:設備支出)ともに高コストなシステム構造となってしまったのです。

 一方、今後の収益確保やビジネス環境変化への対応としては、前述のとおりビジネスが水平分業型へ向かっていることから、システム間の連携がより多く必要とされます。そのために、オープンかつ標準的なインターフェイスの採用、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)を取り入れたアプリケーションとアーキテクチャの疎結合化が必要となるでしょう。

 つまり、今後の通信業界のシステムは、低コストで、新たなビジネス環境にスピーディに対応できる、オープンなシステムである必要があります。

通信業界のシステムとは

 通信業界のシステムは、固定通信でも携帯通信でも、概念的なシステム構成はほとんど同じであるといってよいでしょう。

 通信業界のシステムは、(1)バックボーンネットワークや交換機といった物理的なネットワーク基盤、(2)顧客管理や料金計算などを担うBSS(Business Support System)、(3)ネットワーク基盤とBSSを結び付けるOSS(Operation Support System)の3階層に分類できます。

 加えて近年は、新たな収益拡大やビジネス環境の変化に対応するために、いろいろなデータ系サービスを組み合わせて新しい通信サービスを提供するSDP(Service Delivery Platform)が注目されています。これによって、いままでのような他事業者(コンテンツプロバイダなど)とのネットワークレベルでの接続・認証機能だけではなく、位置情報やユーザー利用デバイス情報などの付加価値情報提供機能や、新サービスをよりスピーディに提供するためのプラットフォーム機能など、新たなケイパビリティの必要性が増しています。

 上に挙げた通信業界のシステムのうちBSS/OSSは、顧客管理・料金計算・在庫管理・売掛金管理・プロビジョニングやメディエーションなど、システムの数が多く、システム開発費用が通信業界システム全体の約7〜8割程度を占めているといわれています。また、(前回紹介した保険業界を含む)金融業界同様、通信業界は売上高に対するIT投資額の割合が約6.6%と高く(全業種平均は1.42%。「日本情報システム・ユーザー協会調査(2007年)P60」)、これらからも分かるように、業務の多くがシステムに依存しており、システムが非常に重要な役割を担っています。

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