情報処理技術者試験、新制度の全貌が明らかに:新・情報処理技術者試験はこう変わる(1)(2/2 ページ)
1969年に開始して以来、40年ぶりの大改訂を迎える情報処理技術者試験。本連載では2回にわたり、制度改定の背景、情報処理技術者試験の目指す方向、新試験制度の出題分野などについて解説する
新試験区分の体系
以下に新試験の区分体系を示します(図3)。
IPAでは、新試験制度に移行した後の旧試験区分の位置付け・評価を明確にするために、新試験区分との対応関係を示しています(表3)。セキュリティ関連の2区分など、内容の近いものが統合・整理されています。なお、初級シスアド試験(来年4月試験まで)はITパスポート試験を包含した上位の試験です。
レベル | 対応する人材像 | 新試験区分 | 旧試験区分との対応 |
---|---|---|---|
1 | 5人材像共通 | ITパスポート | (初級システムアドミニストレータ) |
2 | 5人材像共通 | 基本情報技術者 | 基本情報技術者 |
3 | 5人材像共通 | 応用情報技術者 | ソフトウェア開発技術者 |
4 | ストラテジスト | ITストラテジスト | システムアナリスト、上級システムアドミニストレータ |
4 | システムアーキテクト テクニカルスペシャリスト |
システムアーキテクト | アプリケーションエンジニア |
4 | プロジェクトマネージャ | プロジェクトマネージャ | プロジェクトマネージャ |
4 | テクニカルスペシャリスト | ネットワークスペシャリスト | テクニカルエンジニア・ネットワーク |
4 | テクニカルスペシャリスト | データベーススペシャリスト | テクニカルエンジニア・データベース |
4 | テクニカルスペシャリスト | エンベデッドシステムスペシャリスト | テクニカルエンジニア・エンベデッドシステム |
4 | テクニカルスペシャリスト | 情報セキュリティスペシャリスト | テクニカルエンジニア・情報セキュリティ、情報セキュリティアドミニストレータ |
4 | サービスマネージャ | ITサービスマネージャ | テクニカルエンジニア・システム管理 |
4 | サービスマネージャ | システム監査技術者 | システム監査技術者 |
改定のポイントと新試験区分
以下、冒頭で掲げた改定のポイントの内容を見ていくことにします。
(1)共通キャリア・スキルフレームワークに準拠した試験制度
新試験の出題範囲、試験区分(対象となる人材像)、レベルは、共通キャリア・スキルフレームワークに基づきます。
(2)共通キャリア・スキルフレームワーク レベル1に対応する試験の創設
ITパスポート試験が用意されます。
(3)ベンダ側人材とユーザー側人材の一体化
ITパスポート(レベル1)、基本情報技術者(レベル2)、応用情報技術者(レベル3)の3区分については、ITベンダ側人材・ITユーザー側人材のどちらも利用できる試験となります。基本情報技術者、応用情報技術者(ソフトウェア開発技術者の後継)については、試験出題範囲、分野ごとの出題数などが大幅に変更され、現行の初級シスアド受験者も受験可能な試験となる見込みです。
また午前試験の出題範囲は、いずれの試験区分についてもテクノロジ、ストラテジ、マネジメントのすべての分野が対象となります。
(4)組み込みシステムに関する知識・技能の重要性の拡大への対応
午前試験の出題範囲に、組み込みシステムに関連した知識が出題されます。午後試験では、応用情報技術者の選択問題、高度試験の午後問題の題材に採用されます。
(5)高度試験の整理・統合
技術分野が重複する試験が統合されます。
システムアナリスト試験、上級システムアドミニストレータを統合
⇒ITストラテジスト試験
テクニカルエンジニア試験の情報セキュリティ、情報セキュリティアドミニストレータ試験を統合
⇒情報セキュリティスペシャリスト試験
(6)最新の技術動向を反映して出題範囲の抜本的見直し
共通キャリア・スキルフレームワークに合わせて、出題範囲の知識項目をストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野に整理しています。また組み込みシステム、情報セキュリティ、オープンソースソフトウェア(OSS)などを出題範囲に明確に組み込んでいます。
(7)受験者の利便性向上
- ITパスポート試験
受験者には試験の合否とともに、総合得点、分野別得点(ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の各得点)の情報提供が予定されています。また将来、CBT試験の導入が検討されています。 - 高度試験
高度試験は午前試験の免除制度が用意されます。
最後に
以上、新試験制度の改定概要を見てきました。新しい情報処理技術者試験は、高度IT人材育成戦略の中で「共通キャリア・フレームワーク」に準拠した「客観的なスキル評価」を行うツールとして位置付けられています。今後の試験の普及・利用を待たねばなりませんが、情報処理技術者試験の合格によってスキルレベルを明確に評価する枠組みは、企業内の人材育成やスキル評価、技術者のキャリアプランなどに有用なツールとなることが期待されます。
次回は、試験の実施方法や各試験区分の概要を紹介します。
著者紹介
加藤浩
TAC IT講座企画部所属。大学教員、TAC 情報処理講座専任講師を経て、現在は情報処理試験対策を中心とした研修・教材の企画開発に従事
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