クリエイターであるためにFlash待ち受けを出し続ける:D89クリップ(9)(1/2 ページ)
トイレメーカーのサラリーマンはいかにしてFlashアニメ作家になったのか? クリエイターになる1つの方法を聞くとともにFlash待ち受けの簡単な作り方を教えよう
トイレメーカーのサラリーマンからクリエイターへ
クリエイティブな世界に興味を持ちつつも、何をどうやって始めればればよいのか分からないクリエイター/デザイナーの卵へ。
元大手トイレメーカーのサラリーマンからWebデザイナーを経てAdobe Flash(以下、Flash)のアニメーション作家になったダーヤマ氏より、クリエイターになるための1つの方法を聞いた。
ダーヤマ氏:人物紹介
理系学部の大学を卒業して大手トイレメーカーにて製図や資材調達を担当。
当時はバブルの煽りを受け、製図だけでなくホームページ制作など幅広く経験した。もともと映画制作に興味があったことから自分で動画を作るために、このころからFlashコンテンツの制作を始める。
大手メーカーからWebサイト制作の業界に転職後、某少女コミックのWebサイトやテレビアニメのFlashコンテンツ制作に携わる。
現在は独立し、制作集団「TopeconHeroes」の一員として映画サイトやアーティストサイト制作を手掛ける傍ら、携帯電話(以下、ケータイ)向けのFlash待ち受け(※注1)サイトやWeb素材サイトを運営している
- ※注1:Flash待ち受け
ケータイの待ち受け画面に設定できる≫Adobe Flash Lite(以下、Flash Lite)のコンテンツ。通常のケータイ待ち受け画像とは異なり、動画やアニメーションによって表現される
Flash待ち受けは、表現手段の1つ
PCのWebサイト制作が主な仕事のダーヤマ氏にとって、Flash待ち受けを作ることは趣味に近い。1つのケータイ待ち受けコンテンツ制作に費やす時間は2時間程度という。
Flash Liteを使ってケータイ向けコンテンツの制作を始めた理由は「動画を作って流せる媒体が欲しかったから」(ダーヤマ氏)だという。ダーヤマ氏には、映画制作に携わりたいという夢がある。どうやったら世の中に作品を出せるかと試行錯誤した結果、取っ掛かりとして「Web」と「ケータイ用Flash待ち受け」という方法に行き着いた。
「Webは反応が早いから面白い。ダウンロード数がすぐに結果となる」というダーヤマ氏は、Webの特性を生かしてユーザーの好みを分析しながら自分の作品を世に出している。
つらい時期から価値観を構築
もちろん、最初から上手くいっていたわけではない。某大手トイレメーカーを退職した後に務めたデザイン会社では、下請けの仕事のつらさも経験している。クライアントが求めている内容と広告代理店が伝える内容が違うことから板ばさみになることもあるそうだ。その際、特にデザイナとしての主張が強い場合は大変だという。
アーティストの考えを持つことは大切だが、商業的にデザインをするうえでは衝突も多い。板ばさみになりながら苦悩するデザイナーを、ダーヤマ氏は何度も見てきている。
「自分で発信できるインターネットはクライアントと直接話せる」(ダーヤマ氏)というように、これらの経験は現在のダーヤマ氏に大きく影響している。
自己主張よりも、万人に好かれることを重視
「自分でも欲しいと思うものを作る。後はそのとき思い付いたもの」とダーヤマ氏は語る。Flash待ち受けを作成する際、まずは思い付いたことを適当に紙に書き始めるという。ケータイの機能特性を考慮して電波状況や電池残量、時刻が取得できるようにアイデアを絡めつつ、世間の好みから“ずれ”のないように意識する。
ダーヤマ氏のイラストはあまり「自分色」を出さない。アートではデザイナーのこだわりは重要だ。しかし、より多くの人に受け入れられ、見てもらうためには「みんなが好きというところを狙うことも必要」とダーヤマ氏はいう。
この考えはデザインーだけでなく選択した技術にも表れている。ダーヤマ氏が使用しているFlash Liteはバージョンが1.1だ。Flash Liteは下位バージョンで作成したアプリケーションと互換できても、上位バージョンで作成したアプリケーションとの互換性はない。そのため、最新機種に搭載されているFlash Lite 3で待ち受け画像を作成した場合、古いケータイ機種を使用しているユーザーは利用できなくなる。「より多くの人に作品を届けたい」。ダーヤマ氏がFlash Lite 1.1を使用しているのは、そういった理由からだ。
また、容量が限られているケータイでは、「いかにデータを軽くするか」も受け入れられる指標の1つだ。バイト数がかさばるJPEGはなるべく使わず、ベクターファイルで作成することで容量を軽減する。似ている絵はシンボル化(※注2)し、複製してバイト数の節約に努める。ダーヤマ氏の待ち受け画像は23kbytesほどで製作できるという。
- ※注2:シンボル化
同じ図形を複製したり、自由に移動できるようにすること。データ容量を軽減できる
いまでは、ダーヤマ氏が運営する「Design Flash Wall Gallery」(ケータイFlash待ち受けを中心にFlash作品を発信するWebサイト)を見て、直接クライアントが仕事の発注をしてくることもあるそうだ。自分の作品を多くの人に見てもらうことは、夢にも、仕事にもつながる。自己表現はそれからでも遅くはない場合もある。デザイナーを目指すならば、まずは作品を「発表し続ける」ことが重要だ。
最近は、Flashでブログパーツ(※注3)も作り始めているという。ブログパーツは、コンテンツ自体のサイズや制作方式がケータイ待ち受けとの親和性が高いところが重要だ。新しいものに取り掛かるよりも、少しずつ方法を変えながら表現の領域を広げている。
- ※注3:ブログパーツ
時計・アクセスカウンター・占い・天気予報など、ブログなどのWebサイトに貼り付けるFlashコンテンツ
「とにかく表現をしよう」Flash待ち受けの作り方
自分の作品を多くの人に見てもらう。クリエイターになるには、“とにかくやってみる”ことから始めよう。
今回のインタビューの際、ダーヤマ氏には下記のようなFlash Liteを使ったケータイ待ち受けコンテンツを作っていただいた。次のページでは、このようなコンテンツを作る流れを7ステップで解説してもらったのをまとめているので、参考にしてほしい。
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