第3回 検証:ネットブック+Windows 7 Starter:Windows 7新時代(3/3 ページ)
シェアを伸ばしているネットブック。一部機能に制限があるWindows 7 Starterが採用される予定だ。この制限はどのような影響があるのか検証する。
さらにWindows 7 Starterには基本的な機能の中にも以下のような制限がある。
■背景や色などのカスタマイズ機能
背景(デスクトップ)の色などをカスタマイズすることはできない。ただ[コントロール パネル]の表示をカテゴリからアイコンにしてから、[ディスプレイ]−[配色の変更」において、[配色]を「Windowsクラシック」に変更すれば、デスクトップの色などの変更が可能になる。デフォルトの壁紙が気になるようならば、「Windowsクラシック」に変更するとよい。
Windows 7 Starterのインストール後のデスクトップ画面
背景の色などは、このまま変更できない。Aeroテーマが利用可能なWindows 7のほかのエディションと比較すると、視覚効果に乏しいものの、それほど使い勝手が悪いものではない。
Windows 7 Starterの[ウィンドウの色とデザイン]ダイアログの画面
[コントロール パネル]の表示をカテゴリからアイコンに変更した後、[ディスプレイ]−[配色の変更」において、[配色]を「Windowsクラシック」に変更すれば、デスクトップの色などの変更が可能になる。
(1)「配色」を「Windowsクラシック」にすると、Windows 2000時代のデザインとなる。
(2)[詳細設定]ボタンをクリックすれば、デスクトップの色などが変更できる。
■ユーザー切り替え
ログオフせずにユーザーを切り替える機能はサポートされない。別のユーザー・アカウントで使用したい場合は、いったんログオフしてから、ほかのユーザー名でログオンする。同様にリモート・デスクトップも利用できないので、外部から接続して操作することはできない(リモート・アシスタンスは利用可能)。リモート・デスクトップのクライアント機能は利用可能なので、Windows 7 Starterからリモート・デスクトップでサーバなどに接続して、操作することはできる。リモート・デスクトップのサーバ機能(ほかのコンピュータからWindows 7 Starterを操作する機能)が必要な場合は、リモート操作ソフトウェアを利用することで、制限は回避可能だ。リモート操作ソフトウェアとしては、Symantec pcAnywareといった製品や、フリーソフトウェアのUltraVNCなどがある(Symantec pcAnywareは現時点ではWindows 7に対応していない)。
Windows 7 Starterのシャットダウン・メニュー
Windows 7 Starterのシャットダウン・メニューには[ユーザーの切り替え]がない(ほかのエディションでは、[ログオフ]の上にある)。これもWindows 7 Sterterの制限である。
Windows 7 Starterの[システムのプロパティ]ダイログの[リモート]タブの画面
リモート・アシスタンスは利用できるものの、リモート・デスクトップはサポートされない。本来ならば、このダイアログにリモート・デスクトップの設定に関する項目が存在する。
■DVD再生
DVDの再生機能は提供されない。サードパーティ製やフリーソフトウェアなどのDVD再生ソフトウェアを利用すれば、まったく問題なくDVDの再生が行える。
■マルチディスプレイ
マルチディスプレイがサポートされない。外付けのディスプレイやプロジェクタを接続した場合、同じ画面を表示する「複製」は可能だが、複数のディスプレイを接続してデスクトップを広げるような使い方はできない。ネットブック上の画面にメモなどを表示して、プロジェクタにプレゼンテーションを表示するといった使い方ができないため、プレゼンテーションの際に使いにくい面もあるが、複製表示は可能なので運用で制限は十分回避できる。
■リモート・メディア・ストリーミング・サービス
ほかのコンピュータに対して、マルチメディア・データなどを(Windows Media Playerの)リモート・メディア・ストリーミング・サービスで提供することはできない。これも、Windows Media Centerと同様、ビジネス用途では問題となることはないだろう。
【コラム】Windows XP Home EditionとWindows 7 Starterの性能差
ネットブックにWindows Vistaをインストールすると、要求されるプロセッサ性能やメモリ容量から動作が遅くなり使いにくくなってしまった。では、Windows Vistaをベースに開発されているWindows 7 Starterでは、そのようなことはないのだろうか。ここでは、簡単なベンチマーク・テストを実行し、Windows 7 Starterのネットブックにおける性能を調べてみた。
ベンチマーク・テストは、Crystal Dew Worldの「CrystalMark 2004R3」を用いた(ベンチマーク・テストの紹介はCrystalMarkのWebページを参照していただきたい)。結果は、グラフのとおりである(値が大きいほど性能が高い)。CrystalMarkの値を比較すると、HDD(ハードディスク)を除く、すべての項目でWindows 7 Starterの値が低い。多くはわずかな違いだが、DirectDraw(D2D)については性能が1/3に落ちている。これはDirectXのバージョンがWindows XP Home Editionの9.0cから11にバージョンアップしていることなどが影響しているものと思われる。グラフィックス・ドライバがチューニングされるなどすると、性能が向上する可能性もあるだろう。ベンチマーク・テストの結果はこのとおりだが、体感的には、Windows XP Home EditionとWindows 7 Starterの性能の違いはほとんど感じなかった。
Windows 7 Starterの制限される機能を見てきたが、ビジネス利用において重大な問題となりそうなのは、「Active Directoryドメイン参加機能」のみではないだろうか。Active Directoryによる組織的な管理が必須のエンタープライズ環境ではクライアントとして使えないが、柔軟な運用を行っている中小規模環境なら、運用さえ気をつければ相応に使えるだろう。そのほかの機能については、ネットブックのハードウェアの制限からそもそも利用できなかったり、サードパーティ製ソフトウェアの導入によって代替可能な機能だったりするので、一般的な利用においては、Windows 7 Starterでも支障がないものと思われる。
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