RIPによるルーティングテーブルの作成:ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(23)(1/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
今回は、ディスタンスベクタールーティングプロトコルであるRIPを学習します。RIPは企業内ネットワークで一般的に使用されているルーティングプロトコルです。RIPがルーティングテーブルを作成するプロセスと、ループ回避の仕組み、ルータにRIPを設定する方法を学習しましょう。
ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス
- 第1回 新CCNA試験について知ろう
- 第2回 ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコル
- 第3回 データはどうやって伝わるの?
- 第4回 LANの基礎を丸かじり
- 第5回 データ同士の通せんぼ??コリジョンてなぁに?
- 第6回 TCP/IPを制するものはネットワークを制す
- 第7回 TCPで、確実&効率よくデータを送受信しよう
- 第8回 サブネットマスクの計算をマスターする
- 第9回 どこまでがネットワーク部? クラスフルとクラスレス
- 第10回 シスコ ソフトウェアの基礎を学習する
- 第11回 Cisco IOSモードの設定
- 第12回 Cisco IOSのモードの設定情報と識別情報
- 第13回 インターフェイスの設定とルータの初期化
- 第14回 ネイバーの検出とCDPによるデバイス管理
- 第15回 Telnetを使用したリモートデバイスの情報収集
- 第16回 SDMによるルータの設定と管理
- 第17回 MACアドレスとフレームで、スイッチの基本動作を学ぶ
- 第18回 スパニングツリープロトコル、動作の仕組み
- 第19回 スイッチにVLANを設定する
- 第20回 VLAN操作を容易にするVTPの機能
- 第21回 ポートセキュリティの設定コマンドと確認
- 第22回 ルータの経路学習とスタティックルートの設定
- 第23回 RIPによるルーティングテーブルの作成
- 第24回 リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認
- 第25回 高速なコンバージェンスを実現するEIGRPを学習する
- 第26回 可変長サブネットマスク(VLSM)と経路集約
- 第27回 標準アクセスリストについて学習する
- 第28回 拡張アクセスリストについて学習する
- 第29回 無線LANの基礎について学習する
- 第30回 無線LANセキュリティの必要性と対策
- 第31回 NATとPATの設定方法を学ぶ
- 第32回 IPv4の枯渇に備えよ??IPv6の特徴と必要性
- 第33回 VPNの基礎を学習する
- 第34回 WANカプセル化プロトコルについて学習する
- 第35回 フレームリレーの基本を学習する
RIPによるルーティングテーブルの作成
RIPはディスタンスベクタールーティングプロトコルです。ディスタンスとは距離、ベクターとは方向を意味します。ディスタンスベクタールーティングプロトコルは、あて先ネットワークとの距離と方向に基づいて、ルーティングテーブルを作成します。距離は、あて先ネットワークまで何個のルータを経由するかで表します。経由するルータの数はホップ数といい、ホップ数をメトリックに使用します。ホップ数0は、そのルータに直接接続されているネットワークを意味し、ホップ数16は、そのネットワークに到達できないことを表します。有効なホップ数の値は15までです。
当初、各ルータのルーティングテーブルは直接接続されたネットワークだけを学習しています。ルータAなら10.0.0.0と20.0.0.0のネットワークをルーティングテーブルに学習しています。RIPは30秒に1回、自ルータのルーティングテーブルの内容を隣接ルータに送ります。この送信している情報のことをルーティングアップデートといいます。今回は10.0.0.0ネットワークだけに注目して説明します。ルータAは、10.0.0.0ネットワークを、ホップ数を1にして送信します(図1の(1))。ルーティングアップデート時には、自ルーティングテーブル上のホップ数に、プラス1をした数で送信します。このルーティングアップデートをルータBが受信します。ルータBは、自分が学習していないネットワーク10.0.0.0を、伝えられたホップ数でルーティングテーブルに追加します。インターフェイスの項目には、ルーティングアップデートを受信したインターフェイスが自動的に登録されます。
ルーティングアップデートはルータBからルータAにも送信されます。
確認問題1
問題
RIPのルーティングアップデートの間隔は何秒に1回ですか。1つ選択してください。
a.180
b.30
c.60
d.10
正解
b
解説
正解は選択肢bです。RIPのルーティングアップデートの間隔は30秒に1回です。ルーティングアップデートは、ルーティングテーブルに変更があってもなくても定期的に行われます。
ルーティングループの発生と回避策
ルーティングループとは、ルーティングテーブルの不具合により、パケットがルータ間をループしてしまう現象のことです。
RIPのルーティングアップデートは、ルータからルータへ、段階的に伝わります。ルータが正しい経路情報を保持している状態を、コンバージェンスしている状態といいます。もしネットワークがダウンし、ルーティングテーブルが変更になったとします。するとルータが複数台、数珠つなぎに接続されているような環境では、端から端のルータまで経路情報が伝播するのに時間がかかります。これではコンバージェンスが遅くなります。
コンバージェンスが遅いことで、ルーティングループという現象が発生します。
図2において、当初は、各ルータではルーティングテーブルがコンバージェンスしており、すべての経路情報が正しくルーティングテーブルに構成されているとします。ここでも10.0.0.0ネットワークだけに注目して説明します。
ルータAのFa0/0インターフェイスがダウンしました(図2の(1))。ダウンに気付いたルータAは、10.0.0.0の経路情報をルーティングテーブルから削除します(図2の(2))。
ルータAが10.0.0.0の経路情報を削除した後、ルータBがルータAにルーティングアップデートを送信したとします(図2の(3))。ルータAは、10.0.0.0の経路情報がルーティングテーブルにありませんので、自分が知らなかった経路情報として、10.0.0.0をルーティングテーブルに追加します(図2の(4))。
今度はルータAからさらにルーティングアップデート(10.0.0.0 ホップ数3)が送信されます(図2の(5))。
ルータBは、すでに知っているネットワークでも、同じルータAからのアップデートのため、その経路情報をホップ数を書き換えて更新します(図2の(6))。
図2の(6)のプロセス終了後のルーティングテーブルは、以下のような正しくない経路情報を保持します。
あて先ネットワーク | インターフェイス | ホップ数 |
---|---|---|
20.0.0.0 | Fa0/1 | 0 |
30.0.0.0 | Fa0/0 | 1 |
10.0.0.0 | Fa0/1 | 2 |
あて先ネットワーク | インターフェイス | ホップ数 |
---|---|---|
20.0.0.0 | Fa0/0 | 0 |
30.0.0.0 | Fa0/1 | 0 |
10.0.0.0 | Fa0/0 | 3 |
上記のルーティングテーブルを保持しているときに、ルータBが、ホストB(30.0.0.1)からホストA(10.0.0.1)へのパケットを受信したとします。ルータBはルーティングテーブルに従いパケットを転送しますので、ホストAあてのパケットはルータAに転送します。ルータAもルーティングテーブルに従い、ホストAあてのパケットはルータBに転送します。すると、ホストA(10.0.0.1)あてのパケットが、ルータBとルータAの間でループしてしまいます。この現象をルーティングループといいます。
このようにルーティングループが発生すると、ネットワークが混乱しますので、ルーティングループが起こらないような回避策が考えられています。これらの回避策はRIPを有効にするとCiscoルータではデフォルトで有効になります。
●スプリットホライズン……経路情報を受信した際、その情報を送ってきた隣接ルータには送り返さない
●ルートポイズニング……ホップ数を最大値にして送信し、隣接ルータに該当ネットワークがダウンしたことを知らせる
●ポイズンリバース……ルートポイズニングに対しての応答
●ホールドダウンタイマ……無効な経路情報が、誤った情報により上書きされるのを防止するタイマ
●トリガードアップデート……緊急アップデート。定期アップデートのタイミングを待たずにルーティングアップデートを送信する
確認問題2
問題
ルーティングループの回避策にはいくつかの種類があります。定期的なルーティングアップデート以外に、緊急で送信されるアップデートを行う回避策の名称は何ですか。1つ選択してください。
a.ホールドダウンタイマ
b.ポイズンリバース
c.スプリットホライズン
d.トリガードアップデート
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