Rubyを最大63%高速化した中学生は超多忙!:【写真】天才プログラマに聞く10の質問(5)(3/3 ページ)
本連載では、コンピュータの世界で卓越した才能を発揮しているプログラマたちに、スキルやキャリアに関する10の質問し、プログラマとしての考え方・生き方を探る。今回は、これまでの10の質問を基に竹内郁雄氏がインタビュアーを務めた対談形式の模様をお伝えする。
超多忙な金井君の生活 【私生活編】
――文化祭はパ研とホームルームで2足のわらじ
竹内氏 これからやってみたいことは何かありますか?
金井氏 いまは、OpenCVというオープンソースの画像処理のライブラリを使い、3Dの処理をゲームに組み込むということをしています。
竹内氏 ゲームに興味があるの?
金井氏 ゲームに興味があるというよりは、文化祭にゲームを出展しなければならないのです。
竹内氏 パ研の業務なんだ? パ研も文化祭はちゃんとやらなくてはいけないんだね。いつなの?
金井氏 11月1〜3日です。でも間に合わないかもしれなくて、いま困っています……。
竹内氏 あら、優等生だと思っていたら。
金井氏 ホームルームの方でも文化祭の準備をいろいろと頼まれてしまって。
竹内氏 忙しい人にほど仕事は集まってくる、社会とはそういうものだよ。ホームルームでは何をするの?
金井氏 ホームルームでは演劇を出すのですが、ポスターなど画像を使う宣伝物関係を一手に引き受けました。
――過密なタイムスケジュール
竹内氏 学校は何時から何時までですか?
金井氏 授業は8時半〜15時までです。その後、部室に顔を出すか、帰宅します。週に2回は塾に通っています。
竹内氏 塾は楽しい?
金井氏 はい。数学と英語を単科で取って別々の塾に通ってるのですが、特に英語が楽しいです。英語専門の塾で、ネイティブの先生と会話をします。
竹内氏 典型的な英才教育タイプ。サポートされているご両親は立派なものですね。家では、自分の部屋で扉を閉めてひたすらパチパチと作業ですか?
金井氏 そうですね。僕は夕飯を食べたら、20〜30分テレビを見たり家族で団欒して、すぐに自室にこもってしまいますね。
竹内氏 夜は何時間睡眠?
金井氏 大抵0時に寝るので約6時間です。
竹内氏 わりかし遅いですね。中学生で6時間睡眠は少なすぎない?
金井氏 夜型人間なので、夜の方が作業効率がよくてどうしても夜更かししてしまいます。
竹内氏 朝、大変じゃない? 1時間目は上の空?!
金井氏 朝は、家では死にかけていますが、外に出たらスイッチが切り替り、ぱっと覚醒します。電車でまた休眠モードに入り、学校に着いたらまた覚醒モードに切り替わります。
竹内氏 新人類だ?! その秘訣を学びたいものだね。土日は何をしているの?
金井氏 土曜の午前中は、隔週で学校がありますが、ないときは朝寝をするかプログラミングなど好きなことをします。土曜の午後は、日曜の午前中が塾なので宿題タイムです。
竹内氏 ゲームなどの娯楽はやらないの?
金井氏 最新のハードとソフトを持ってるのですが、買ったことに満足してずっと積まれたままです。一時期ネットゲームにはまったことはありますが、いまは忙しいのであまりやりません。
将来は、ITか分子生物学か
竹内氏 将来はどういうことをやりたいの? IT業界に入りたいと思いますか?
金井氏 IT業界に行くのも1つの選択肢ですが、分子生物学に少し興味があります。いろいろな道が気になって決めきれずにいるので、いまはいろいろなことをやってみようと思っています。
竹内氏 いまからならばどうにでもなりますよ。多方面に興味があることはとてもいいことです。
金井氏 先生は僕の年齢くらいのときに、5年後10年後のためにやっておいた方がよいと思ったこと、やってよかったことはありますか。
竹内氏 そうだな〜。金井君は、学校の勉強のほかに塾通い、プログラミング、文化祭の準備など過密スケジュールをこなしていてすごいと思ったけど、そういえばわたしも中・高時代はいろいろな活動をしていました。美術部、放送部、弁論部、野球部のマネージャ、たくさん遊びもしました。
ただし、勉強に集中するときがあった。中学3年の一時期は、ふと目覚めて、世界史の教科書を1冊丸暗記するくらい勉強しました。英語の勉強は高校1年の夏までに、英文法の分厚い本を全部勉強して後は授業を聞いていませんでした。数学も学校の授業はあまり聞いていなくて、“数学難問集”という難易度ウルトラCの問題ばかり解いてましたね。
つまり、集中してやるときは集中するといった濃淡の激しい暮らしを送っていました。金井くんは物事をフレキシビリティにこなす可能性を秘めている。だから好きにやっていいと思いますよ。もし、分子生物学に浮気するなら少し勉強しとかないとね。つまみぐいよりは、一気呵成に1冊本を読むこと。
竹内先生からのメッセージ「人は語れる人に付いていく」
竹内氏 今日はプログラミング以外の幅を付けてほしいと思って来たけど、分子生物学に興味があったり、英語の塾に通ったり、クラスメートからデザインを頼まれたりと十分多才ですね。デザインセンスはあるの? 絵は描ける?
金井氏 ツールを使ってきれいな文字を作ったり、画像を合成することはできますが、絵を描くセンスにはあまり自信はありません。
竹内氏 美術家や芸術家は自分の作品について、なぜそうデザインしたのか、どんな意味を込めているのかを語ることができます。ものをデザインするというのは、結局その人のすべての背景――読んだ本の知識、自分が直面して解いた問題、経験から導き出した考え――に基づいているのです。例えば、Rubyを設計して世界に広めているまつもとゆきひろさん。彼が話す言葉は重く、ずっしりと心に響く。これからの人生で、語る言葉に重みを出せるバックグラウンドを作っていただきたい。そしてみんなが付いてくるようなリーダーになってほしいです。
do〜end構文が嫌いというのは、ただ者ではない。自分の感性に従って頑張ってください。体だけは壊さないように。
筆者紹介
インタビュアー:竹内郁雄(東京大学 教授)
撮影:平沼久奈
構成:荒井亜子(@IT自分戦略研究所)
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