マッシュアップを超えたマッシュアップを−Mashup Awards 5表彰式レポート:D89クリップ(13)(1/3 ページ)
リクルート主催による「Mashup Awards 5」の表彰式が開催された。前回を上回る応募作品数と高いクオリティのなか、数々の賞が決定した
11月29日、「Mashup Awards 5」(MA5)の表彰式が開催され、最優秀賞をはじめとする各賞の受賞作品が発表された。Mashup Awardsは、リクルート主催(昨年まではサン・マイクロシステムズとの共催)によるWeb APIを使ったプログラミングコンテスト。回を重ねるごとに規模を拡大し続けており、今回の応募作品数は346と過去最大となった。業界内では注目イベントの1つであり、Web制作会社やクリエータたちが実力をアピールする場として定着している。
表彰式では、例年どおり最優秀賞にノミネートされた5作品の制作者が、最優秀賞と賞金である100万円を目指してプレゼンテーションを行い、その場で最終審査が行われた。
リアルの電子レンジとWebコンテンツをマッシュアップ
サービス名:CastOven
作者:100kw-sgss
URL:http://100kw-sgss.org/castoven/
最初にプレゼンテーションを行ったのは、「CastOven(キャストオーブン)」という、電子レンジの作品である。「生活の視点、家電、Web APIをマッシュアップした未来の家電」というこの作品は、電子レンジに設定する温め時間とちょうど合う長さのYouTubeの動画を表示する。Adobe AIRによるアプリケーションで、設定時間の認識とYouTube動画のピックアップ、ディスプレイへの表示を行っている。
「世の中には数多くの魅力的なコンテンツがあるにもかかわらず、忙しい生活の中で、それを楽しむことは難しい。さまざまなタスクに追われるなかで生じる細切れの空き時間を有効に使うために、コンテンツの方を人の空き時間にフィットさせる」というコンセプトで開発された。Webサービスなどソフトウェアの応募作品が大半を占めるなか、ハードウェアで、しかも電子レンジという姿がひときわ目を引いた。
SNSの枠を超えたOpenSocialガジェットプラットフォーム
サービス名:OpenSocial Dashboard
作者:stomita
URL:http://code.google.com/p/opensocial-dashboard/wiki/Introduction
「OpenSocial Dashboard」は、OpenSocialガジェットをWebブラウザ上で実行できるという作品。Mac OS XのDashboardやWindowsガジェットなどと同じように、ちょっとしたツールやWebサービスが利用できる環境だ。しかも、HTMLとJavaScriptのみで実装されているため、Webブラウザさえあれば動作する。ガジェット類は、ブックマークレットを使っていつでも呼び出すことができる。
Webページの閲覧中であれば、そのページ上に重ねる形でガジェットが表示される。このとき、閲覧中のページの内容に合わせて取得する情報を自動的に判断する。これは、ページのURLや選択したテキスト文字列、マイクロフォーマットなどの情報を抽出し、ガジェットのパラメータとして利用するという処理を行っている。Google Friend Connectサーバ以外は、すべてローカルのみの処理で実現するという技術力の高さが光った。
誰もがDJになれる新感覚のムービープレイヤー
サービス名:radioooo
作者:mizzusano
URL:http://radiooofly.com/
「radioooo」は、YouTube動画をTwitterを仲介役としてユーザー間で共有し、視聴するという作品。mizzusano氏は、プレゼンスライドの中で「radioooo Killed the iTunes.app ?」というコピーを示しつつ、「このアプリを使うようになってiTunesを使うことがなくなった」と自ら愛用していることを紹介した。
やっていることは実にシンプル。Adobe AIRで作られたアプリケーションを起動するだけで音楽が再生される(最初の起動時のみTwitterのアカウントなどを設定する)。仕組みは、特定のハッシュタグとYouTubeの動画IDが含まれたTwitterの投稿を読み取り、その動画を再生するというもの。複数のユーザーが参加し、各自で曲のリクエストを投稿しあうことで、ユーザー間で共有できる。みんながDJとなって曲を選べるというわけだ。
YouTubeの動画をソースとするため、厳密には動画プレイヤーなのだが、コンセプトの中心は音楽。みんなで同じ曲を聴くというラジオ的な共有性の再現を目指した故に、名前が「ラジオー」なのである。Twitterをソーシャルツールではなく、曲情報を交換するためのプロトコルとしてとらえるという発想がユニークで、その点が高く評価された。
「技術的にアピールできる点はない」というものの、クリックするだけというシンプルさや、気軽に感想を示せる「CLAP」(拍手)や「STAND」(スタンド)といった機能、クロスフェードで再生する点など、「音楽を楽しむ」ことにフォーカスしたデザインは秀逸だ。以前は、数十秒ごとにポーリングして情報を取得していたが、TwitterのStreaming APIが登場したことで、この処理がスムーズにできるようになったという。また、ユーザー同士でやりとりができるアプリではあるものの、サーバのコードは1行も書かずに済んだところに、マッシュアップのありがたさを感じたという。
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