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話さない職場は赤信号。フリーズ前に「脳メンテ」せよ特集:生き残れるITエンジニアの「仕事術」(4)(1/2 ページ)

あまり会話がない職場で、ほとんど外出もせずにずっとパソコンの画面を見続けている。もしこういう日々を過ごしているなら、注意が必要だ。「不健康」であるだけではない。このような生活は「脳の働き」を鈍化させてゆく。いきなり脳がフリーズして動かなくなる前に、日々のメンテナンスをきちんと行おう。

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 一見仕事がスムーズにいっているように見えても、「スムーズさ」を持続できなければあまり意味がない。今回は、仕事を長く続けるうえで維持していきたい「脳機能」について考える。

 財団法人 河野臨床医学研究所付属 北品川病院 院長の築山節(つきやま たかし)氏は、脳神経外科専門医として長年多くの患者と接してきた。築山氏によれば「パソコンが脳に与える影響の大きさ」が無視できないものになってきているという。

脳は「省エネ化」する

 仕事の成果を上げたいなら、わたしたちは「効率を上げて量をこなす」ことと「仕事の質を上げる」ことを考える。量をこなすとは、いい換えれば「1時間にどれだけ多くアウトプットできるか」ということだ。当然のことながら、同じ作業を続ければ続けるほど作業効率は上がる。1つの物事を集中して行っているとき、脳では「省エネ化」が起きているのだ。

築山節氏
築山節氏

 「同じ作業を続けていると、脳は『省エネ化』します。『省エネ』とは、いつも使っている機能にエネルギーを集中するために、ほかの機能で使う分のエネルギーをカットすることです」と築山氏は説明する。

 築山氏は、一点集中で脳機能を使う状態のことを「高速道路状態」と表現する。高速道路を走っているときは前方のみに集中して、前方以外から来る情報にあまり注意を払わなくなる。つまり、一部の機能だけオン状態で、ほかの機能はすべてオフになっている状態だ。


 しかし、「このような偏った脳の使い方をすべきではない」と、築山氏は忠告する。「ただ同じ作業をひたすらこなすだけなら、機械でもできます。しかし、当たり前の話ですが、人間は機械ではありません。人間が持つ『冴えた感覚』を使って仕事をしたいなら、脳をバランスよく動かさなくてはなりません」

ハードの異常ではない。これはソフトの問題だ

 築山氏は、脳の偏った使い方について危惧(きぐ)している。というのも、脳が省エネ化すると、使わない脳機能が衰えていくからだ。

 特に、長時間パソコンを使う仕事の人に向けて、築山氏は警鐘を鳴らしている。現在、築山氏の元に相談に来る人の半分近くが「ITエンジニア」や「パソコンを長時間使う職種の人」だという。最も多いのが20代後半から30代の男性だ。日々同じ作業を淡々とこなし、職場ではほとんど会話がないタイプが多い。彼らの多くは「これでは仕事にならないから、診てもらってきなさい」といわれてやって来る。

 彼らの多くは、「最近忘れっぽくて……」と相談に来るという。しかし、こういうケースの場合、記憶力そのものには問題がない場合が多いらしい。彼らは「人の話を覚えていられない」のではなく、「そもそも人の話を聞いていない状態」なのである。

「メールで用件を済ます」ことによって起こる悪循環

 「相談に来る人は、記憶力や聴覚については正常な場合が多いです。問題があるのは『音声認識』の部分。つまり、人の話がそもそも聞き取れていない状態なのです。ラジオの機能にまったく異常はないけれど、電源がオフになっている状態、といえばいいでしょうか。わたしは彼らにこう説明します。『ハードに異常はありません。これはソフトの問題です』と」

 なぜ、人の話を聞けなくなるのか。その原因はただ1つ、「人と話をしないから」だ。「相談に来る人に話を聞くと、用事がある人が隣に座っていたとしても、口頭で伝えずにメールを使うことが多い。話をしない、つまり音声認識の機能を使わないと、その機能は衰えます。つまり、音声が入ってきても、きちんと『日本語』として認識できなくなるのです」

 見知らぬ外国語を耳にしたときのように、そもそも「音声を聞き取れない状態」のようになる。音声を認識できないため、もちろん内容が分かるはずもない。意味が分からないからストレスがたまり、人と話すのが億劫(おっくう)になって、ついメールを使ってしまう。「話す」「聞く」ができなくなると、そのうち「読む」ことすらできなくなってくるという。当然、仕事でいい成果を出せるはずがない。「人と話さない」ことはこうした悪循環を生む。

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