無線LANの基礎について学習する:ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座(29)(1/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNA(Cisco Certified Network Associate)を解説します。2007年12月に改訂された新試験(640-802J)に対応しています。
今回は、無線LANの基礎について学習します。無線LANはケーブルを使用せずにLANを構築することができる規格です。無線LANを使用すると、ケーブル敷設のコストをかけずにオフィスや家庭で手軽にネットワークを構築したり、拡張したりすることができます。無線LANの基礎では、無線LANの利用形態や規格、仕組みを学習します。
ネットワークの基礎を学習する CCNA対策講座 各回のインデックス
- 第1回 新CCNA試験について知ろう
- 第2回 ネットワークのABC、OSI参照モデルとプロトコル
- 第3回 データはどうやって伝わるの?
- 第4回 LANの基礎を丸かじり
- 第5回 データ同士の通せんぼ――コリジョンてなぁに?
- 第6回 TCP/IPを制するものはネットワークを制す
- 第7回 TCPで、確実&効率よくデータを送受信しよう
- 第8回 サブネットマスクの計算をマスターする
- 第9回 どこまでがネットワーク部? クラスフルとクラスレス
- 第10回 シスコ ソフトウェアの基礎を学習する
- 第11回 Cisco IOSモードの設定
- 第12回 Cisco IOSのモードの設定情報と識別情報
- 第13回 インターフェイスの設定とルータの初期化
- 第14回 ネイバーの検出とCDPによるデバイス管理
- 第15回 Telnetを使用したリモートデバイスの情報収集
- 第16回 SDMによるルータの設定と管理
- 第17回 MACアドレスとフレームで、スイッチの基本動作を学ぶ
- 第18回 スパニングツリープロトコル、動作の仕組み
- 第19回 スイッチにVLANを設定する
- 第20回 VLAN操作を容易にするVTPの機能
- 第21回 ポートセキュリティの設定コマンドと確認
- 第22回 ルータの経路学習とスタティックルートの設定
- 第23回 RIPによるルーティングテーブルの作成
- 第24回 リンクステートルーティング(OSPF)の設定と確認
- 第25回 高速なコンバージェンスを実現するEIGRPを学習する
- 第26回 可変長サブネットマスク(VLSM)と経路集約
- 第27回 標準アクセスリストについて学習する
- 第28回 拡張アクセスリストについて学習する
- 第29回 無線LANの基礎について学習する
- 第30回 無線LANセキュリティの必要性と対策
- 第31回 NATとPATの設定方法を学ぶ
- 第32回 IPv4の枯渇に備えよ――IPv6の特徴と必要性
- 第33回 VPNの基礎を学習する
- 第34回 WANカプセル化プロトコルについて学習する
- 第35回 フレームリレーの基本を学習する
無線LANの特徴
無線LANの特徴は以下のとおりです。
- 電波を伝送媒体に使用する
- 半二重通信を行う
- 電波干渉の影響がある
- セキュリティを考慮する必要がある
無線LANはアクセスポイントを使用して構築する場合が多いのですが、アクセスポイントから電波が届く範囲には限度があります。アクセスポイントがカバーする無線LANの範囲を、カバレッジエリアやセルと呼びます。
カバレッジエリア内の無線LAN端末は周波数帯を共有するので、カバレッジエリア内では半二重通信を行います。半二重通信では、送信する端末はただ1台になるため、どの端末が送信権を持つかを決める方式(媒体アクセス制御方式)が必要です。
無線LANでの媒体アクセス制御方式はCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)+ACKが使用されます。Avoidanceとは「避ける」という意味です。あらかじめ衝突を「避ける」媒体アクセス制御方式が採用されています。無線LANでは衝突を検知することができないので、無線LAN端末はACK(確認応答)を受信したタイミングで送信完了と見なします。
無線LANでの通信は、2.4GHz帯という、コードレス電話や電子レンジなどの家電製品と同じ周波数帯を使用する場合があります。そのため、これらの家電製品が無線LANの通信に影響を及ぼすことがあります。
無線は、壁を越えた、意図しないところからも接続することができます。しかし、無線LANでは物理的なセキュリティをかけることができないため、セキュリティ技術によって、しっかりと対策を取る必要があります。無線LANで実装されているセキュリティ技術については次回、解説します。
確認問題1
問題
無線LANの特徴のうち、正しくないものはどれですか。1つ選択してください。
a.半二重通信を行う
b.媒体アクセス制御方式としてCSMA/CDを使用する
c.電波干渉を受ける可能性がある
d.セキュリティ上の問題を考慮する必要がある
正解
b
解説
選択肢bは正しくありません。媒体アクセス制御方式はCSMA/CA+ACKを使用します。カバレッジエリア内では半二重通信を行います。また、電波干渉の影響を受けます。加えて、物理的なセキュリティをかけることができないため、認証や暗号化などの対策を取る必要があります。
無線LANの規格
無線LANに関する規格化の作業は「IEEE 802.11 ワーキンググループ」で行われています。
無線LANには、伝送速度や使用する周波数帯の違いにより、いくつかの規格があります。無線LANで使用する周波数帯は2.4GHz帯と5GHz帯です。
● 2.4GHz帯
産業(Industry)、科学技術(Science)、医療(Medical)向けに無許可で使用できる周波数帯です。各英字の頭文字を取って「ISMバンド」と呼ばれています。コードレス電話や電子レンジなどもこの周波数帯を使用するため、無線LAN使用時に電波干渉を受けることがあります。
● 5GHz帯
原則として屋内では免許不要で使用できる周波数帯です。家電製品と周波数帯が異なることから、電波干渉を受けにくいという特徴があります。
IEEE規格名 | 最大伝送速度 | 利用周波数帯 |
---|---|---|
IEEE 802.11b | 11Mbps | 2.4GHz帯 |
IEEE 802.11a | 54Mbps | 5GHz帯 |
IEEE 802.11g | 54Mbps | 2.4GHz帯 |
表1 無線LANの規格 |
これまでIEEE 802.11a、IEEE 802.11gなど、54Mbpsの伝送速度の無線LAN規格が幅広く普及していましたが、最近はIEEE 802.11n(2.4GHz帯/5GHz帯、600Mbps)という、最大伝送速度がより高速な規格も登場しました(ただし、最大伝送速度は理論上の速度です。実際には、電波干渉などの影響で、常に最大の伝送速度が出るとは限りません)。
IEEEのほかに、無線LANにかかわる団体として「Wi-Fi Alliance」があります。Wi-Fi Allianceは、無線LAN製品を製造しているベンダの業界団体です。さまざまなベンダ製品の相互接続性をチェックし、合格した製品には「Wi-Fi CERTIFIED」ロゴが与えられます。Wi-Fi CERTIFIEDロゴが与えられている無線LAN製品であれば、相互接続性が保証されています。
確認問題2
問題
2.4GHz帯を使用し、最大伝送速度が54Mbpsの規格を1つ選択してください。
a.IEEE 802.11b
b.IEEE 802.11a
c.IEEE 802.11g
d.IEEE 802.11n
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.