【転職市場動向】あふれるPGとSEはどこへ行くのか?:特集:岐路に立つIT技術者たち(2)(1/2 ページ)
最新の転職市場動向を読む。Web業界は活況だが、SI業界の動きはにぶい。仕事を求めるプログラマやSEが市場にはあふれている。そんな中、SI出身の技術者がWeb系企業へ転職するケースが出てきた。
2010年になってから、転職市場にようやく動きが出てきた。SI企業の求人は相変わらず停滞しているが、Web企業の転職市場は活発に動いている。この状況から、最近ではSI企業からWeb企業へ転職するエンジニアも出てきているという。
これから、IT業界の転職市場はどのように動くのか。最近、どのような新しい動きが出てきたか。また、いつごろ転職市場は回復するのか――。リクルートエージェント ITマーケットCAグループの江川理絵氏、 マイコミエージェント ITチーム キャリアコンサルタントの鈴木聡美氏に、最新動向を聞いた。
特集:岐路に立つIT技術者たち バックナンバー
- 第1回 「環境変化に対応した技術者」になる道を探して
- 第2回 【転職市場動向】あふれるPGとSEはどこへ行くのか?
- 第3回 「SI⇒Web」転職は可能? 技術者に必要な能力と思考
- 第4回 現場の技術者が考える「1〜2年後の自分の姿」
- 第5回 「人月・受託の限界を超えよ」SIerでSaaSを立ち上げる
ソーシャルアプリ開発、Web系企業が活況
ソーシャルアプリを開発する企業やECサイトを運営するWeb系企業の求人は、いまもっとも動きがある。特に、ソーシャルアプリのプラットフォームがオープン化して以来、求人件数は右肩上がりだという。これまでは大手企業の求人案件が目立っていたが、最近になってベンチャー企業からコンテンツプロバイダまで、幅広い分野で求人案件が出てきている。Web系では若手プログラマへの求人ニーズが高いという。
今後もしばらくはソーシャルアプリ開発の求人案件は増加するだろう、と鈴木氏は見ている。ただし、BtoCのサービスを提供するWeb系企業は、採用基準を妥協しない「厳選採用」傾向がある。経験や技術力はもちろん、「Webサービスそのものへの強い思いと志望動機」を非常に重視するからだ。
転職志望者は、内定獲得のために複数の企業を受験することが多い。しかし、採用担当は複数社受けていると「うちは第一志望ではないのでは」と考えてしまう。「意欲が感じられない」という理由で、優れた技術力を持つ人が最終選考で落とされることがままあるという。
インフラエンジニアは堅調
Web、モバイル以外では、インフラエンジニアの求人が堅調だ。データセンターを中心にして、インフラエンジニアの求人は不況下でも一定数あり、2010年になってからは微増傾向にある。急増することはないが、2009年に比べると増え始めるだろうと、江川氏は予測している。
インフラエンジニアの場合はほかの業界とは違い、スキルがあれば転職回数が多くても問題ない。もし転職を考える場合、「Linux、UNIXサーバの設計・構築経験」は必須となる。若手なら半年、ベテランなら2年程度の設計・構築経験があれば、転職できる見込みは十分にあるという。
SI業界の動きは停滞
一方、SI業界は動きがにぶいままだ。企業側が採用予算を確保できるほど業績が回復していないため、求人案件数は2009年からほとんど回復していない。
「銀行、保険、カード系は定期的に求人ニーズがありますが、業務知識が強く求められます。証券系は、2010年になってきてから少しずつ増えてきています。流通、物流系はほんの少し求人があるぐらい。製造系はほとんどないといっていいでしょう」と、江川氏は語る。そもそもの求人件数が非常に少ないため、SI業界での転職は必然的に「スピード勝負」となる。1、2名の採用枠に対して、数百人の応募が殺到することは珍しくない。
一般的な受託開発では、ほとんど動きがない。少し動きが出ているのは、パッケージベンダ、または特定分野に強みを持つ受託開発だ。2010年になってからは、大手コンサルティングファームの求人、SI企業ではIFRS(国際会計基準)対応に伴う会計系コンサルタントの求人、グリーンSCMの制度対応に伴う求人が増えているという。求められているのは「ERPパッケージの導入経験者」や「基幹システムの構築経験者」だ。
コンサルタントやプロジェクトマネージャなどは求人ニーズがそれなりにあるが、かかわっていたシステムやスキルをピンポイントで指定する求人ばかりだ。企業が「欲しい人材がいなければ採用しない」という姿勢を取っているため、決まることは本当にまれである。現在、プログラマの求人は「ほとんどない」といっていいレベルだ。
SI業界のプログラマ、SEが市場にあふれている。しかし……
求職者は「SI企業のプログラマ、SE」が圧倒的に多く、全体の半数以上を占める。鈴木氏によれば、「求職者は『待機中で、いつ仕事がなくなるか分からない』『離職中でいますぐ仕事が欲しい』と切羽詰った様子で、『とにかく働きたい』という人が多い」という。
彼らが求めるポイントはただ1つ、「体力のある企業、定期的に仕事が来る企業で働きたい」ということだ。しかし、SI企業で仕事を探しても、求人案件数が少なく、あったとしても競争が激しいため、なかなか仕事が見つからない。
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