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ここまで使えるSQL Server Express Edition基礎解説(1/2 ページ)

無償で使えるSQL Server Express Editionの制限とは? 有償版と比較しながらExpressにない機能や性能の限界を探り、どういった用途なら使えるか考察する。

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[基礎解説]
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 Windows用のデータベース・ソフトウェアといえば、筆頭に挙げられるのは「純正」であるマイクロソフトのSQL Serverだろう。Windows OSの進化と歩調を合わせるように、SQL Serverも2000→2005→2008→2008 R2といった具合にバージョン・アップしており、Windows OSとの親和性は申し分ない。またマイクロソフト製はもちろんサードパーティ製であっても、Windows向けミドルウェアなどではデータベースとしてSQL Serverを必須要件としていることも多い。

 その一方で、主にフリーのWebアプリケーションではSQL Serverではなく、MySQLやPostgreSQLをメインのデータベースに採用していることが多い。これは、多くのフリーWebアプリケーションがUNIXやLinuxなどのプラットフォームを中心に開発されており、そこで使えるデータベース・ソフトウェアがそのまま採用されているという面もあるが、一定の条件を満たせばMySQLやPostgreSQLが無償で利用できるというメリットも大いに影響しているだろう。実際、下表のようにSQL Serverの有償製品の価格は、小中規模の企業や大企業の部署レベルでは無視できないコストといえる。

パッケージの名称 実売価格
SQL Server 2008 R2 Standard 日本語版 10CAL付き 33万円〜37万円
SQL Server 2008 R2 Workgroup 日本語版 5CAL付き 9万円〜11万円
SQL Server 2008 R2のパッケージ製品の実売価格
複数のオンライン・ショップを調査した結果(2010年7月下旬時点)。

SQL Serverのオプション 月額費用
SQL Server Standardの追加 約440ドル
Amazon EC2におけるSQL Server利用料金
仮想化されたサーバOSを提供するクラウド・サービス「Amazon EC2」における24時間稼働時の月額費用を計算した(2010年7月下旬時点)。Amazon EC2については「Amazon EC2/S3で作るWindows公開サーバ」を参照していただきたい。

 確かにSQL Serverとしてラインアップされている複数のエディションのうち、ほとんどは有償製品として販売されている。しかし「Express Edition(以下Express)」だけは無償利用が可能で、マイクロソフトのサイトから誰でもダウンロードできる。

 もちろん有償製品が存在する以上、それに比べてExpressに何らかの制限があることは容易に想像できる。だが、もしSQL Serverを必要とするシステムでExpressを活用できれば、コストを減らせるかもしれない。それには、Expressが持つ「制限」を知っておく必要がある。

 そこで本稿では、SQL Serverを必要とするシステムに関わるシステム管理者や導入担当者を対象に、有償製品に比べると、Expressにどのような制限や限界があるのか探り、どのような用途なら使えるのか考察してみる。

無償版は有償製品と同じコード・ベースから作られる

 SQL Serverの無償版は、有償製品と同じコード・ベース(共通のプログラム・コード)で開発されている。そのため、SQL Serverの新バージョンがリリースされると、無償版にも新バージョンが登場する。データベース・エンジンなどコア部分の技術は無償版と有償製品で共通していることから、無償版もSQL Serverのバージョンによって相違がある。そこで、まずはこれまでリリースされたSQL Serverのバージョンを確認してみる。

バージョン リリース時期 主な特長 無償版の名称
SQL Server 2000 2000年 ETLやOLAP機能の追加など SQL Server 2000 Desktop Engine(MSDE 2000)
SQL Server 2005 2005年 可用性やセキュリティ機能、管理ツールの強化、.NET Framework対応など SQL Server 2005 Express Edition
SQL Server 2008 2008年 サーバ統合やコンプライアンスへの対応、データ・ウェアハウス機能の強化、ポリシー・ベース管理機能の追加など SQL Server 2008 Express Edition
SQL Server 2008 R2 2010年 大規模システム向けのスケーラビリティ強化、セルフ・サービスBIなど SQL Server 2008 R2 Express Edition
SQL Server 2000〜2008 R2までの各バージョンの特長
SQL Server 2000以降のバージョンについてまとめてみた。SQL Server 2000から2005へのバージョン・アップの際に、無償版の名称がMSDEからExpress Editionへと変更された

 SQL Serverは2000から2005へのバージョン・アップで大幅な機能の拡充・強化がなされている。それもあってか、SQL Server 2000以前は「Microsoft SQL Server Desktop Engine(MSDE)」と呼ばれていた無償版は、SQL Server 2005から「SQL Server Express Edition」という名称に変更された。すでにMSDE 2000は古く、新たにインストールする機会はほとんどないと思われるので、以後は現役であるSQL Server 2005〜2008 R2の「Express Edition」に絞って解説する。

 さて、最新バージョンは2010年5月にリリースされたSQL Server 2008 R2である。1つ前のSQL Server 2008に比べ、SQL Server 2008 R2では最大256基の論理プロセッサに対応するDatacenter Editionや、セルフ・サービスBI(ビジネス・インテリジェンス)と呼ばれる各種ソースからのデータ収集・分析・視覚化機能が追加されている。ほかにも管理や可用性、プログラミング、セキュリティなど全般に渡って、SQL Server 2008から細かく機能が強化されている。

 もちろん無償版もSQL Server 2008 R2 Express Editionとして、すでに提供が始まっている。また前バージョンのSQL Server 2008 Express Editionに比べ、少ないながら重要な強化ポイントがある(これについては次のページで述べる)。

無償版は数あるSQL Serverのエディションの1つ

 SQL Serverには現在9種類のエディションがラインアップされており、無償版すなわちExpressはその中の1つと位置づけられている。そこで、Express以外にどのようなエディションがあるのが確認しておこう。

種別 エディションの名称 主な特長や用途
無償版 Express 小規模向けの無償版。マイクロソフトのサイトから誰でもダウンロード可能
Compact 組み込みシステム向けの無償版。ほかのエディションとはコード・ベースが異なる
(Evaluation) 試用版。最上位エディションと機能的には同等だが、インストールしてから継続して使える期間が限られる
有償製品 Workgroup 小規模向けの製品
Standard 小〜中規模向けの製品
Enterprise 中〜大規模向けの製品。SQL Server 2005/2008では最上位のエディション
Datacenter 大規模システム向け。SQL Server 2008 R2で新設された最上位のエディション
Web インターネット公開Webサイトでの使用に限定して価格を下げたエディション
Developer 開発/テスト専用の製品。最上位エディションと機能的には同等だが、実運用は不可
SQL Serverのエディションの種類
現在、用途や規模に応じた9種類のエディションがラインアップされている。Expressはさらに3種類に分類される(詳細は後述)。無償版のうちCompactはほかのエディションとコード・ベースが異なり、互換性も高くないため、無償版といえば通常はExpressを指す。一方、有償製品のうち、Workgroup/Standard/Enterprise/Datacenterは汎用的なエディションで対象システムの規模が異なる。これに対してWeb/Developerは用途が限定されているエディションである。

 Express以外にも無償版が存在するが、このうちEvaluationはその名のとおり試用版なので、継続して使えるものではない。もう1つのCompactは、ほかのエディションとコード・ベースが異なり、互換性も高くない。一方、Expressは有償製品と互換性があるため併用がしやすく、また有償製品へのアップグレードも可能だ。そのため無償版といえば通常はExpressを指す。

 さて、Expressには管理ツールや追加機能の有無が異なる3種類のエディションが提供されている。単なる「Express」はデータベース・エンジンと最低限のツールだけを含むエディションで、それに管理ツールを加えたのが「Express with Management Tools」、さらにレポート機能やテキスト検索機能などを加えたのが「Express with Advanced Services」である。いずれも無償でマイクロソフトのダウンロード・サイトから入手できる。

エディションの名称 主な特長や用途
Express GUI管理ツールなどを含まず、データベース・エンジンと最低限のツールのみで構成されたエディション
Express with Management Tools Express単体にGUI管理ツール(SQL Server Management Studio Express)を加えたエディション
Express with Advanced Services Express with Management Toolsにレポート機能やテキスト検索機能などを加えたエディション
Expressの種類
Expressはさらにこの3種類に分類される(エディション名称のリンク先はマイクロソフトのSQL Server 2008 R2の各ダウンロード・ページ)。ただし、SQL Server 2005にはExpress with Management Toolsは存在しない。また管理ツールである「SQL Server Management Studio Express(SSMSE)」は単体でもインストールできる(SQL Server 2008 R2用のSSMSEのダウンロード・ページ)。

 データベース・エンジンだけが必要であれば「Express」を、サーバ・マシン上で管理したい場合は「Express with Management Tools」を、レポート機能などが必要な場合は「Express with Advanced Services」をそれぞれ利用することになるだろう。


GUI管理ツールも無償で利用できる
これはSQL Server Management Studio Express(SSMSE)と呼ばれる、Expressで利用可能な無償のGUI管理ツール。ただし有償製品に付属するSQL Server Management Studioに比べ、スケジュール管理タスクが使えない、Reporting Servicesが管理できないなど、機能が制限されている。

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