無料のオンラインOfficeアプリ「Office Web Apps」は使えるのか?:運用(3/3 ページ)
マイクロソフトが提供を開始した無料のオンラインOfficeアプリ「Office Web Apps」を評価。何ができて、何ができないのか。Web Appsの使い勝手は?
Office Web Appsの操作性
操作性については、データの互換性と比較すると分が悪い傾向がある。Office Web AppsはWebブラウザの内部で動作するものであり、ユーザーが操作するプログラムはあくまでWebブラウザだ。従って、Windowsアプリケーション(スタンドアロンのアプリケーション)と同等の操作性を実現するのは難しい。
それが具体的に表れている一例が、ショートカット・キーだ。例えば、Wordでフォント設定ダイアログを呼び出す[Ctrl]+[D]というキー操作があるが、Word Web Appでこのキー操作を行うと、Internet Explorerの[お気に入りの追加]ダイアログが表示される。[Alt]キーを押すとリボンではなくWebブラウザのメニューバーがアクティブになってしまうが、これも理由は同じだろう。Excelで配列数式を入力する際に使用するキー操作[Shift]+[Ctrl]+[Enter]キーも、Excel Web Appでは利用できない。
しかし、WebブラウザとOfficeで共通するキー操作は利用できる。切り取り([Ctrl]+[X]キー)やコピー([Ctrl]+[C]キー)、貼り付け([Ctrl]+[V]キー)が該当する。
このほか、右クリック・メニューはWord Web Appに限って利用できる、文字列やセルのドラッグ&ドロップ編集は利用できない、といった具合に、Office Web Appsではいろいろな機能制限が存在する。このことが原因でデータの互換性に問題が生じるわけではないが、使い勝手を高めるための機能が利用できないことから、入力・編集操作の効率が落ちるのは否めない。ただし、今後のバージョンアップによって改善されるものがあるかもしれない。
意外なことに、Office Web Appsでも1つの文書に対して複数のウィンドウを開くことができ、その際にはWebブラウザに複数のタブが現れる。
回線の速度と操作感
ネットワーク経由で利用するサービスの場合、回線の速度による影響が気になるところだ。低速な回線しか利用できない、あるいは回線が混雑して低速になったときに、極端に操作に対する反応が低下するようであれば、使い勝手がよいとはいえない。PCと移動体データ通信サービスの組み合わせだけでなく、携帯電話で利用する場面も考えられるので、なおさらだ。
そこで、携帯電話のデータ通信サービス(下り最大3.6Mbits/s/上り最大1Mbits/s)を使用してみたところ、Excel Web Appでセルの内容を変更する程度であれば、意外と良好なレスポンスが得られた。一方では、PowerPointのテキストボックスに書かれたテキストを編集する場面のようにADSL回線でもレスポンスがあまり良くない場合もあり、対象や内容によってレスポンスは変動するようだ。
Office Web Appsはファイルを開いたり保存したりする操作も、操作を受け付けて処理する作業も、サーバ側で実施している。乱暴ないい方をすれば、Officeが動作するコンピュータにリモートデスクトップ接続しているようなものなので、入力・表示を行うために十分な速度の回線を確保できていれば、問題なく利用できるはずだ。
にもかかわらず、レスポンスが落ちるケースがあるのは、サーバ側の負荷や画面表示のオーバーヘッドが原因ではないかと推測される。まとまった分量の文章を入力する場合には、手元でテキストエディタを使用して文章を用意しておき、それをOffice Web Appsにコピー&貼り付けする方が効率的だろう。
なお、SkyDriveとローカル・ドライブの間でファイルのアップロードやダウンロードを行う際には、当然ながら回線の速度が影響する。
Office Web AppsはOfficeの代わりになるのか
実際に使ってみた印象としては、「文書を表示する際の互換性は。それなりに高い」「文書の入力・編集に関しては制約が多い」「マクロのように、セキュリティの面でセンシティブな機能は利用できない」というところに落ち着く。
こうした理由から、Office Web AppsをOffice 2010の完全な代用品として扱うのは難しい。Officeのさまざまな機能を存分に活用して効率アップを図っているパワーユーザーほど、Office Web Appsの制約が気になるだろう。そもそも、Office Web Appsには含まれないOfficeアプリケーションもある。
しかし、オンライン・ストレージに保存したWord/Excel/PowerPoint/OneNoteの文書を表示するためのビューア、あるいはそれに若干の変更を加える程度の用途であれば、十分に有用であるともいえる。文書のファイル形式、あるいは文書を表示させたときの互換性については、それなりの水準を確保しているからだ。
文書を表示させるだけなら、以前からWord/Excel/PowerPoint/Visioなどのビューアが無償配布されている。しかし、これはあくまでビューアだから編集ができないし、オンライン・ストレージの利用も考慮されていない。その点、Office Web Appsであれば、SkyDriveに保存したファイルならどこからでもアクセスできるし、機能的には制約があるものの、内容を修正することもできる。スマートフォンの利用が拡大している昨今、携帯電話でも利用できるのは魅力的かもしれない。
なお、Office Web Appsではリボンの[ホーム]以下に[Wordで開く][Excelで開く]といった項目があり、それをクリックすると、手元で動作するWord 2010やExcel 2010を使って、SkyDrive上のファイルを編集できる(その際に、Windows Live IDのメールアドレスとパスワードを入力してサインインする必要がある)。Office Web Appsにはない機能を利用して文書を編集したいときには、この仕組みを利用するとよいだろう。
インターネットに接続できるコンピュータとWebブラウザさえあれば利用できるので、Officeがインストールされているかどうかをいちいち気にしなくても済み、借り物のコンピュータでも対応しやすい。しかも、OpenOfficeやGoogle Docsと比較するとOffice 2010との親和性が高いため、利用に際して戸惑いを覚える場面は少なく、効率がよいはずだ。Office Web Appsの制約事項を踏まえたうえで長所を生かす使い方ができれば、役立てることができるだろう。
「運用」
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