「大丈夫」という部下の報告を信じてはいけない理由:新任PMがついやってしまうNG集(2)(1/2 ページ)
1人で仕事をしているプログラマ時代は、ばりばり仕事がこなせたのに、PMになった途端に仕事がうまく進まない! そんな新任PMの悩みを解決するTipsを紹介します。
「あのメンバー、仕事の進捗(しんちょく)は大丈夫かな?」
PM(プロジェクトマネージャ)なら、誰もが気になるところです。
「予定の期日に間に合います!」というメンバーの力強い返事を信じて任せていたら、完了予定日になって「実はまだできていませんでした」という相談が来て、結局対応に追われるはめになる……そんな経験はないでしょうか。
しかも、往々にしてこのようなことは1回だけでなく、何度も繰り返し起こります。一段落した時、メンバーに仕事が遅れた理由を聞いても、返ってくるのは「申し訳ありません」という平謝りと「今後はしません」という形ばかりの口約束だけ。
こんな調子じゃ、安心して仕事を任せられません。しかし、こんなふうになってしまうのにはちゃんと理由があるのです。
大丈夫だ、問題ない……?
PMとしてプロジェクトを取り仕切るなら、メンバーそれぞれの仕事の進み具合を気にするのは大事な仕事の1つです。プロジェクトの工程や頼み事について、こう尋ねる人は多いと思います。
「あの作業は期日に間に合いそう?」
「間に合います!大丈夫です!」
この「大丈夫」という言葉、実はかなりのくせものです。「大丈夫」という言葉を信じると、期日が来てもまだ完了していない、チーム全体が慌ててひっくり返る、PMがついカッとなって暴言を吐くなど、さまざまな弊害を引き起こします。
問題の根本はもちろん、仕事が遅れてしまうメンバーにありますが、メンバーばかりを責めるのはPMとしてよろしくありません。それに、PM自身にだって改善すべき点があるのです。
悪意があってのウソではありませんが
まず分かっていただきたいのは、メンバーが悪意を持って「ウソ」をついたわけではないかもしれない、というところです。
わが身を振り返って考えてみてください。自分が担当する作業が少し遅れていたときに、「○○の件、期日に間に合う?」と聞かれたら、どう答えるでしょうか? もし、少し作業が遅れていたとしても、期日までに遅れを取り戻せそうなら「大丈夫です」「間に合います」と言ってしまうのではないでしょうか。
ここでしっかり認識しておきたいのは、「大丈夫」=「問題がない」というわけではまったくない、ということです。
ネガティブな情報は出したくありません! プチ隠ぺい体質
そもそも、人は仕事の遅れについては、積極的に報告しようとしないものです。この傾向は、PMが同時に職制上の上司でもある場合、特に強くなります。自分の評価者でもある上司に対して、「仕事が遅れた」というネガティブな情報は出したくないと、普通は考えます。そのため、挽回できると本人が思っているうちは、「実はちょっと問題がある」という事実は表に出てきません。
この心理を、私は「プチ隠ぺい体質」と呼んでいます。「隠ぺい体質」ほど悪質ではありませんし、本人に悪気があるわけではないので「プチ」を付けています。しかし、「プチ」といえども、隠ぺいは隠ぺい。PMにとって困ったことであることに変わりありません。
「大丈夫」は主観交じりの曖昧な言葉でしかないのです
さらに、「大丈夫」という言葉の意味についても、注意する必要があります。「大丈夫」という答えには、さまざまなニュアンスが含まれます。
- まったく問題がないので「大丈夫」
- ちょっと遅れているけれど、挽回できる範囲なので「大丈夫」
- かなり遅れていても、挽回できる可能性を信じて「大丈夫」
このように「大丈夫」という言葉には、「現実の作業具合」と「作業するメンバーの希望的観測」が混在しています。本人が「大丈夫じゃない」と言い始めるのは、挽回不可能なくらいに遅れてしまってからです。
ですから、「大丈夫」という言葉自体を、当てにしてはいけません。「どちらかといえば大丈夫」くらいの意味だと思っておきましょう。
「イエス/ノー」という答えを本当に聞きたいのですか?
「大丈夫」という言葉は、作業の進捗を知るうえであまり役に立たない……となれば、PMとしては代替案を考えなくてはなりません。
ここでさらに考察しましょう。そもそも、「大丈夫です」という答えが返ってくる質問自体に問題があります。「○○の件、間に合いますか?」という質問は、その問い方からして必然的に答えが2択になります。
- イエス……問題なし
- ノー……問題あり
白黒付けるだけの質問形式は、PMが本来聞きたいはずのグレーゾーン部分を問えていません。だから、結局「問題ないです」というあまり役に立たない情報しか得られないのです。
仕事の状況を聞きたいなら、まず「イエス/ノー」で答えられる質問をやめましょう。質問の仕方をちょっと工夫するだけで、自分が聞きたい情報を引き出せる確率はぐっと高まります。
・具体的な日付が答えになるように質問する
「いつまでに作業が終わる?」
この問いは、具体的な日付を聞いています。答えが期日より前であれば比較的安心ですし、期限ギリギリならば要注意だと分かります。この方がより具体的な状況を把握できる可能性が高まるわけです。
・未来のことより過去のことを問う
未来のことよりも、過去、つまり「実績」を聞く方が有効です。前回「『計画的にやれ』が悲しいほどメンバーに通じない理由」で述べたように、仕事を“計画的”にやれない人は、仕事のスタート時点で遅れています。ですから、「(将来)間に合うか?」ではなく、「(今)仕事をスタートできているか?」を確認すると、状況を把握しやすくなります。
予定どおりスタートできていればひとまず安心ですし、スタートの時点ですでに遅れているなら、当人がまだ大丈夫だと思っている、または大丈夫と主張していても、要注意だと考えるべきです。
適切な答えを知りたいなら、適切な問いをしましょう。質問がきちんとできてないのに「あのメンバーはこれだからなってない」と怒るのは筋違いというものです。
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