EAIデータ連携でクラウドを使いこなす:クラウドと業務の視点(1/3 ページ)
企業の社内向け業務システムに、クラウドサービスは使えるのか、使うべきなのか。これは、企業の社内でもかみ合いにくい議論だ。かみ合わない理由の1つは、業務システムをシステムごとクラウドサービスに移行すべきか、あるいは切り替えるべきかが論点になってしまうところにある。そうしている間にも、業務システムにクラウドサービスのメリットを生かす企業が増えている。本連載では、クラウドサービスを業務システムに生かすやり方を、複数のエキスパートがそれぞれの分野で解説する。(編集部)
昨年あたりからクラウドサービスの導入が急速に進んできている。しかし導入を躊躇する企業があるのも事実で、大別すると次の2つの声が圧倒的に多い。
「やりたいことが本当にクラウドサービスで実現できるのだろうか」
「クラウドにデータを置いて大丈夫なのだろうか」
このような不安は分からなくもないが、クラウドについて良く知らないことによって助長されている不安もあるだろう。弊社ではセールスフォースの黎明期から現在まで多くの案件を重ねてきているが、その中で得られた知見をぜひ読者の皆さんと共有させていただき、不安を取り除く一助になればと思っている。特にEAI(Enterprise Application Integration)と呼ばれるジャンルの製品をクラウドと組み合わせることによって、クラウドの可能性が大きく広がることを中心に紹介したい。
なお、企業向けの用途としては、多くのクラウドサービスの中でセールスフォースの利用が最も多いので、この記事でもセールスフォースでの事例を中心に書かせていただこうと思う。
1. やりたいことが本当に実現できるのか
セールスフォースの導入を決定する企業の多くは、われわれベンダに対してウォーターフォール型の開発を希望する場合が多い。一般的なウォーターフォール型開発の場合、要件定義フェイズと設計以降のフェイズを分けて考える場合が多いと思うが、セールスフォース導入に当たって「やりたいことを実現できるのか」については、要件定義フェイズの中で検討することにしている。
ただし、セールスフォース導入の要件定義フェイズは少し変わっている。それは要件定義の中でプロトタイピングを行って、実際に動くもので実現可否を検討する、という点である。このようなスタイルがなぜ取れるのかというと、セールスフォースでは多くのカスタマイズがマウスの数クリックでできてしまい、入力画面などもほんの数分でできてしまうからだ。場合によってはユーザーへのヒアリングの場で、さっとカスタマイズをして見せるということもあり得る。
そのようにして要件定義を進めた結果、得られるユーザーの要求は、次の3つのレベルに大別される。
- レベル1 標準機能で実現できるもの
- レベル2 ネイティブ開発機能で実現できるもの(ネイティブ開発機能=セールスフォースが備えているプログラミング機能)
- レベル3 ネイティブ開発機能で実現できないので、別プログラムの開発が必要なもの
この段階でレベルごとの実現コストが明らかになるので、セールスフォースを導入するか、またどのレベルまで実現するかを決断できるはずである。しかしこの作業は、そう単純ではない。レベルは下に行くほど高度なスキルが要求されるため、コストも高くなるし開発期間も長くなる。そして、そういう機能に限って必須の要件だったりするのでやっかいだ。
しかし、この段階でレベル2、3になったからといって、あきらめないでいただきたい。
実は、レベル2、3の機能はプログラム開発を行わなくても実現できる場合が多い。それはEAI製品を使うことで実現できる。EAIとは耳慣れないかもしれないが、簡単にいうとシステム間のデータ連携を簡単に行うツールのことである。
従来はデータ連携というとJavaや.NETなどのプログラミング言語を使ってロジックをコーディングする方式がほとんどだった。しかし新たなプログラムの開発には、常に品質、コスト、納期の問題がつきまとう。これに対してデータ連携に特化したEAIツールでは、処理のアイコンを並べて線でつなぐだけで連携が実現できる。コーディングで1カ月かかると見積もった連携処理を、EAIツールを使って1日で実装できた、という事例もある。
図1 EAIツール(弊社SkyOnDemand)を使って構築した連携処理の例 CSVファイルを読み取り、値の変換を行い、セールスフォースに書き込み、エラーが起こったら管理者にメール送信する、という処理内容。アイコンを組み合わせるだけなので構築自体は10分で完了する
以下ではレベル2、3に分類された要件を、EAIツールを使ってどのように解決したのか、実際の導入事例から解説したいと思う。
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