東日本大震災を機に、システムのディザスタリカバリや事業継続計画(BCP)の見直しを検討し始めた企業が多い。これを一歩進め、システム開発体制までを「冗長化」しようという狙いから、ヤフーでは大阪での求人を開始した。
現在、Yahoo! JAPANのサービス開発は「R&D統括本部」が担っている。おおよそ1500〜1600人のエンジニアが、大きく分けて、ユーザー管理やログイン、課金処理といった基本的なプラットフォームおよびAPIの開発に当たる部隊と、それらを活用して実際のサービス/アプリを開発する部隊に分かれ、新規サービスの開発などに当たっている。そのほとんどが東京本社での勤務だ。
しかし、サービス作りに携わるエンジニアが東京以外にはいない現状の体制では、「もしも東京に何かあったならリカバリがきかない」(ヤフー 人事本部 キャリア採用室リーダー 的射場智之氏)。実際、3月の東日本大震災が発生した際には、それ以上の不測の事態に備えるため、緊急避難的に名古屋や大阪の技術者にノウハウを伝えて作業できる体制を整えたそうだ。
こういった経緯から、大阪に本格的な開発拠点を開設する方向で人員を募集することにしたという。リスクヘッジ、そして東京側と同じようにある程度の規模を確保する目的から、被災地ではなく、大阪での募集とした。
求めている職種は「ウェブデザイナー」と「ウェブエンジニア」の2種類だ。同社が開発に用いてきた言語は、C++やJavaにはじまり、PHPやRuby、JavaScriptに至るまで幅広い。また、新規のサービスだけでなく、既存サービスにおいても、スマートフォン対応が求められる案件が多いため、iPhoneやAndroidでの開発経験者も期待するという。「開発や検証環境など、ものづくりをする上で不便のない環境を提供したい」(R&D統括本部 フロントエンド開発2本部 本部長 原永宗一氏)。メディア系サービスからコンシューマー系サービス、企業向けサービスまで、同社が手掛けるサービスは幅広いため、専門分野に閉じこもらず、幅広くいろんな事柄に興味を持てるエンジニアに、ぜひ加わってほしいという。
R&D統括本部に所属する開発者の1人である北岡睦玄氏(開発リーダー)は文系出身。もともと出版社で広告営業に携わっていたが、インターネット媒体に興味を持ち、プログラマーへと転職。開発会社で勉強しながらスキルを積んでヤフーへと転身したという。プログラミングという仕事は、「やはり、自分でいろいろなものを作れることが楽しい」と北岡氏。フランクに自由な意見を交換できる文化もそれに一役買っている。
ディザスタリカバリのブラッシュアップも
ちなみに、ヤフーではシステム自体のディザスタリカバリの強化にも取り組んでいる。もともとデータセンターについては分散化していたが、さらに、サービスごとに優先順位を定め、生かしておくべきサービスについて順次冗長化を図っている。
震災発生時には、オフィスへの出勤が困難な社員のために臨時にリモートアクセスを開放し、自宅から作業できるようにするなどの施策も打ったという。
今後は、データセンターやインフラ周りの災害対策に加え、いざというときにどのように集まり、何をするかといった、人の運用も含めた対策の強化を進めていく計画だ。「もともと作っていたルールがあったが、それが本当に機能するかどうか、震災の経験を踏まえて検証し、ブラッシュアップしていきたい」(原永氏)という。
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