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フルスクラッチ開発は、エンジニアのストレスを軽減するSEの未来を開く、フルスクラッチ開発術(3)(1/2 ページ)

プログラムレス開発が全盛の中、フルスクラッチ開発こそ、顧客のためになり、SEにとっても強みとなると主張する企業がある。彼らはなぜあえて今、このような主張をするのだろうか?

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 プログラムレス開発と「持たないシステム」が主流となりつつある今、あえて「フルスクラッチは今でも取り得る有効な選択肢の1つだ」と言い切る会社がある。

 第1回第2回にかけて、プラムザ 代表取締役の島田徹氏と取締役 内藤洋史氏と議論し、「フルスクラッチを選ぶ5つの理由」を見出した。

 今回は、「フルスクラッチ開発は、エンジニアが大変なのではないか」という議題で話を進める。

フルスクラッチの醍醐味はストレスレスとスキルアップ

――まずは、前回のおさらいをしておきたいと思います。

 プログラムレス開発や、ソフトウェア資産の非所有が主流になりつつある今、フルスクラッチ専業の経営が成り立つかというお話でした。

 結論としては、徹底したドキュメンテーションの合理化と、それを可能にするコミュニケーションスキルがあれば、フルスクラッチの方がむしろ有利ということだったと思います。

島田氏 そうですね。

――そうは言っても、「フルスクラッチでの開発は精神的にも肉体的にもつらい」と思っている人が多いと思います。今回は、そのあたりについてお話をうかがいたい。

内藤 洋史氏
内藤 洋史氏

内藤氏 「肉体的なつらさ」とは具体的に言ってしまうと、「残業が多くて睡眠不足」というようなことだと思います。しかしそれは、開発方式に依存する話ではなく、マネジメントに属する話ではないでしょうか。

――それはそうですね。かつて私がエンジニアだった頃、残業のほとんどはドキュメント作成に費やしていたように思います。そういう意味では、プラムザでは徹底的なドキュメントの合理化をしていたのでしたね。ドキュメントの合理化も、ある意味マネジメントに属するものだと思います。マネジメントについては、別途おうかがいするとして、「精神的なつらさ」に話を絞っていきたいと思います。

内藤氏 「精神的なつらさ」だと、ストレスが多いか少ないかが重要ですね。その意味では、私はフルスクラッチの方がストレスが少ない、と思っています。

――その理由を聞かせてください。

予算・スケジュールの範囲内での精いっぱいの提案ができる

内藤氏 理由はいくつかあります。まずは最適の提案ができるということ。例えば、OSツール(※1)の場合、ツールの仕様に引っ張られて、最善の提案ができないことが多いと感じています。そうすると、お客さんも私たち開発者も、不完全燃焼になりがちです。その点、フルスクラッチなら、お客さんの予算とスケジュールの範囲内で精いっぱいの提案ができます。

※1 OSツールとは、WordPressやMovable TypeなどのCMSツールやEC Cubeなどのアプリケーションを総称したものを指す。

――プラムザは、Webベースのシステム開発が専門です。ちょっと観点は変わりますが、フルスクラッチかどうかは別として、Webだからできない、ということはないのですか。

内藤氏 それはありますよ。ただ、その場合はお客さんも納得してくださいます。同じWeb開発でもOSツールの場合は、「できてもおかしくないですけど、できないんですよね」という話になりがちなんですよ。少なくとも私の経験では。

島田氏 これはあくまで私たちの見解で、OSツールの裏の裏まで精通している会社ならできる場合もあるかもしれません。ただ、私たちのお客さんは、OSツールではできないと言われたとか、一度OSツールで挑戦したが結局できなかった、という会社がほとんどなのです。

――あくまでプラムザの見解ではあるが、経験則としての蓋然性は高いんじゃないかということですね。

島田氏 はい。

内藤氏 で、私の経験から言わせていただくと、フルスクラッチで提案する方が、お客さんも私たちも完全燃焼できる。そのため、ストレスが少ないと思います。

すでにある世界観に乗るか、自分たちで世界観を構築するか

――最善の提案ができるからストレスが少ない、という理屈は分かります。「できてもおかしくないですけど、できないんですよね」だと、確かにストレスもたまりますよね。他にはいかがでしょうか?

島田 徹氏
島田 徹氏

島田氏 システムとしての統一感を持たせられます。ユーザーはもちろん、開発者にも、見栄えや操作性を統一したいという願望があると思います。

――なるほど。画面ごとに見栄えや操作性が違っているとユーザーは不便ですし、作った方にも気持ち悪さが残るのは確かですね。

島田氏 でしょう? 技術者がお客さんと一緒に1つの世界観でシステムを構築できるのは、技術者もお客さん、どちらにとっても本望だと思うのです。OSツールだと、すでにある世界観に乗っかる形になる。お客さんの要望が、OSツールにぴったりはまるものなら問題はないのですが、そうでないと完成したシステムが、いびつなものになりがちです。

――OSツールにはプラグインがありますが、その点はいかがでしょう。

島田氏 プラグインにはプラグインで、どうしてもその開発者の世界観が出ますね。プラグインを開発すると、そこだけ妙に高機能だったり、あるいは逆に貧相だったりします。

内藤氏 その点、フルスクラッチであれば、すべての見栄えや操作性を統一できます。思いどおりにならないイライラ感がない。

――自分たちでプラグインを作る、という発想はないんですか?

島田氏 やってやれないことはないので、必然性があればやります。でも、それだと結局、自分たちでPHPを書くわけですから、フルスクラッチと大差ないです。中途半端にやるよりは、全部お客さんと私たちで世界観を構築する方が、ストレスは少ないと思います。

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