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シスコ日本法人平井社長、意外な発言の重要な文脈

シスコシステムズ日本法人の平井康文代表執行役員社長は10月23日、同社新年度の事業戦略説明会で意外なことを話した。一見場違いな印象を受ける発言だが、改めて考えると重要な背景が見えてくる

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 シスコシステムズ日本法人の平井康文代表執行役員社長は10月23日、同社新年度の事業戦略説明会で、事業目標について意外なことを宣言した。「顧客とのパートナーシップ」に加え、「企業としての社会貢献」「社員のワーク/ライフ統合」が事業目標の3つの柱だと言ったのだ。

 同社が新年度に「何をやるか」という点は、基本的には従来と変わりがない。重点分野は「データセンター」「コラボレーション」「ボーダレスネットワーク」。平井氏は「事業目標」という言葉で、おそらく「どのようにやるか」という部分を説明したかったのだろうが、事業を「どのようにやるか」で、社会貢献や社員のやりがいを強調するのは、一見場違いな印象を受ける。しかしこれは、シスコがはるか昔に、製品の単品だけでの勝負をやめたことにつながっていると考えられる。


シスコ日本法人の平井康文代表執行役員社長

 米シスコは「製品よりもソリューション、ソリューションよりもアーキテクチャ」を売る企業に変わってきた。「アーキテクチャ」といっても日本語的には分かりにくいが、何かの特定の問題への解決策ではなく、それより大きな、顧客の業務の「枠組み」や「あり方」を変えていくことをテーマとしてきた(と少なくともシスコは繰り返し言ってきた)。

 シスコの事業のマージンが高いことを批判する人がいる。しかし,シスコがスイッチやサーバ単体だけのビジネスでなく、上記のような取り組みを進めることで付加価値を高めようと努力してきたことを無視して語っても、的外れな議論にしかならない。逆に、「アーキテクチャ」を売るということは、それ自体が非常に難しい。特にグローバルでも売り上げの9割が間接販売だというシスコは、パートナーに動いてもらわなければならないという点でもハードルは高い。


顧客とのパートナーシップ」「企業としての社会貢献」「社員のワーク/ライフ統合」が事業目標の3つの柱となっている

 おそらく平井氏が「企業としての社会貢献」「社員のワーク/ライフ統合」を掲げたのは、最後にはシスコや社員が自ら手本になり、エバンジェリストになることで、シスコが提供する製品や技術の説得力を高めていきたいという意味だったのだろう。自らが手本にならないかぎり、顧客もパートナーも動いてはくれない。

あらゆるモノがつながる世界のリーダーを狙う

 こうした「事業目標」を象徴する取り組みの1つとして、ボーダレスネットワーク事業統括 専務執行役員の木下剛氏が説明したのは、日本における「Internet of Thingsインキュベーションラボ」の設立だ。「世界中のさまざまなモノのうち、まだ1%しかインターネットにつながっていない、すなわち大きな未開拓地が広がっている」というのが動機だ。

 IPv6やMPLSでよく知られるように、先進的ネットワーク技術は常に日本における要求から開発が進められてきたと木下氏は説明。モノの接続についても、関連企業が多く、技術的なニーズやノウハウも蓄積されている日本はインキュベーションに最適だと話した。

 モノは必ずしも常時インターネットに接続しているわけではなく、たまに必要なときにしかつながる必要のないモノは多い。こうした世界を木下氏は「フォグコンピューティング」と表現した。霧のように、地表に近いところで、不確実に表れては消えるという意味だ。フォグコンピューティングで、安定的かつ確実な情報の流れをつくるには、クラウドコンピューティングのように中央集中型でなく、分散的な仕組みが必要であり、さらに間欠的にしかつながらないモノのために、IPレベルでは新たなルーティングプロトコルなどが必要だとする。


接続だけでなく情報交換の仕組みも重要という

 技術要素としてシスコが標準化を進めてきたRPL、6lowpan、CoAPなどがあるが、「技術開発は一定のめどがついた、あとは技術をいかに使ってもらうか」という段階に入ったと木下氏は話した。

 ソフトウェア技術をオープンソースで提供する一方、ZigBeeアライアンスのSmart Energy 2.0仕様に貢献しているなど、さまざまな利用分野における実装支援を行っていくという。

 各重点事業分野でも、「製品よりソリューション、ソリューションよりアーキテクチャ」への取り組みはさらに進んでいる。

 クラウドではシスコのクラウド運用管理ツールの簡易版「Cisco Intelligent Automation for Cloud Starter Edition (IAC Starter Editon) 」が今月末に国内提供開始の予定。このツールにはネットワークおよびストレージのプロビジョニング機能を今後追加の予定。年末には複数クラウドにまたがる一元管理を実現する技術を発表するという。

 ボーダレスネットワーク関連では、だれがどこからアクセスしても同じポリシーを適用できるセキュリティ技術を継続提供していくほか、複数ネットワークを一元管理する技術や、ISRルータをAPI経由でクラウドに接続する機能も提供する。さらにモバイル端末の位置情報の活用も図っていく。

 コラボレーション関連では、インスタントメッセージング/プレゼンス管理機能を実現するJabberに、Cisco IP PhoneやWebExのクライアントとしての機能を追加。Cisco Jabberクライアントは、シスコのユニファイドコミュニケーション製品の共通ユーザーツールになりつつある。このJabberを使ったアプリケーションの開発を促進するためのSDKを、日本でも本格提供・サポートしていくという。WebExは、サービスだけでなくサーバ上のアプリケーションとしても提供していく。また、「WebEx Social」と呼ぶ企業向けソーシャルネットワーキング/コラボレーションプラットフォームサービスも、国内で本格展開の予定だ。

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