IPv6の基本設定とルーティングプロトコル:CCNP対策講座 ROUTE編(10)(2/2 ページ)
本連載では、シスコシステムズ(以下、シスコ)が提供するシスコ技術者認定(Cisco Career Certification)から、ネットワーク技術者を認定する資格、CCNP(Cisco Certified Network Professional)のうち、【642-902 ROUTE】を解説します。
CiscoルータにおけるIPv6の基本設定
Ciscoルータにおいては、ルータ上でIPv6ユニキャストルーティングを有効にします。デフォルトでは無効です。
(config)#ipv6 unicast-routing
インターフェイス上でIPv6ルーティングを有効にすることもできます。有効にするとリンクローカルユニキャストアドレスが自動設定されます。
(config-if)#ipv6 enable
インターフェイスにIPv6アドレスを設定します。eui-64キーワードを付けることにより、インターフェイスIDがEUI-64フォーマットにより自動生成されます。
(config-if)#ipv6 address {IPv6プレフィックス} / {プレフィックス長} [eui-64]
それでは、図2において、RouterAにIPv6ユニキャストルーティングを有効にし、インターフェイスにIPv6アドレスを設定してみましょう。
- RouterA(config)#ipv6 unicast-routing……IPv6ユニキャストルーティングの有効化
- RouterA (config)#interface fa0/0
RouterA (config-if)#ipv6 address 2001:db8:1:1::1/64……インターフェイスにIPv6アドレスを設定 - RouterA (config)#interface fa0/1
RouterA (config-if)#ipv6 address 2001:db8:1:2::1/64……インターフェイスにIPv6アドレスを設定
確認問題2
- 問題
CiscoルータでIPv6を有効にすることについて正しい説明を、次の選択肢の中から2つ選択しなさい。
a.CiscoルータではIPv6はデフォルトで有効になっている
b.(config-if)#ipv6 address {IPv6プレフィックス} / {プレフィックス長} [eui-64]コマンドの[eui-64]キーワードは必ず付加しなければならない
c.(config)#ipv6 unicast-routingコマンドを入れなければ、CiscoルータでIPv6を有効にすることはできない
d.(config-if)#ipv6 address 2001:db8:1:2::1/64コマンドの/64はプレフィックス長を表している
- 正解
c、d
- 解説
正解はc、dです。選択肢aは誤りです。Ciscoルータにおいては、IPv6ユニキャストルーティングはデフォルトでは無効です。選択肢bの[eui-64]キーワードはオプションです。IPv6アドレスのインターフェイスIDをEUI-64フォーマットによって作成したい場合に付加します。
CiscoルータにおけるIPv6ルーティングプロトコル(RIPng、OSPFv3)の有効化
IPv6対応のルーティングプロトコルで代表的なものとして、RIPng、OSPFv3などがあります。
●RIPngの特徴と設定コマンド
- <RIPv2との共通点>
- ディスタンスベクタールーティングプロトコル
- ホップ数の有効値は15
- スプリットホライズン・ポイズンリバースなどのループを回避する仕組みをサポート
- トランスポート層のプロトコルはUDP、ポート番号は521を使用
- <RIPv2との相違点>
- ルーティングアップデートにFF02::9のマルチキャストアドレスを使用
- インターフェイス単位での設定
- ルーティングテーブル上のネクストホップアドレスはリンクローカルアドレスを使用
Ciscoルータにおいて、インターフェイス単位でRIPngを有効にします。タグには文字列を指定します。タグの文字列は他のルータとそろえる必要はありません。タグはルータ内部で使用される識別子です。networkコマンドは使用しません。
(config-if)#ipv6 rip {タグ} enable
それでは、図3において、RouterAにRIPngを設定してみましょう。
- RouterA(config)#interface fa0/0
RouterA(config-if)#ipv6 rip TEST enable……タグはTESTとしてRIPngを有効化 - RouterA(config)#interface fa0/1
RouterA(config-if)#ipv6 rip TEST enable……タグはTESTとしてRIPngを有効化
●OSPFv3の特徴と設定コマンド
- <OSPFv2との共通点>
- リンクステートルーティングプロトコル
- エリア分けによる階層構造
- ABR、ASBRでの経路集約
- スタブエリアやNSSAをサポート
- <OSPFv2との相違点>
- FF02::5(AllSPFRouters)、FF02::6(AllDRRouters)のマルチキャストアドレスを使用
- ルーティングテーブル上のネクストホップアドレスはリンクローカルアドレスを使用
- ルータID、エリア番号は32ビット
Ciscoルータにおいて、インターフェイス単位でOSPFv3を有効にする基本の設定コマンドです。
(config-if)#ipv6 ospf {プロセス番号} area {エリア番号}
OSPFv3ではルータIDを指定する必要があります。ルータIDは32ビットの数字であり、128ビットではありません。
OSPFv2では、ルータIDはループバックインターフェイスや物理インターフェイスに設定されているIPアドレスを利用することもできましたが、OSPFv3の場合は明示的に32ビットの値を指定します。
ルータ上にIPv4アドレスが設定されていない場合は、ルータIDを必ず設定する必要があります。
ルータコンフィギュレーションモードに移行します。
(config)#ipv6 router ospf {プロセス番号} (config-rtr)#router-id {ルータID}
それでは、図3において、RouterAにOSPFv3を設定してみましょう。
- RouterA(config)#interface fa0/1
RouterA(config-if)#ipv6 ospf 1 area 0……プロセス番号は1、エリア番号は0としてOSPF3を有効化 - (config)#ipv6 router ospf 1
(config-rtr)#router-id 10.10.10.10……プロセス番号は1、ルータIDは10.10.10.10と設定
確認問題3
- 問題
CiscoルータにおけるIPv6ルーティングプロトコルについて正しい説明を、次の選択肢の中から2つ選択しなさい。
a.OSPFv3はIPv6対応のルーティングプロトコルで、OSPFv2はIPv6に対応していない
b.RIPngの設定ではnetworkコマンドは使用しない
c.OSPFv3のルータIDは128ビットである
d.OSPFv3のプロセス番号は他のルータとそろえる必要がある
- 正解
a、b
- 解説
正解はa、bです。選択肢cについて、OSPFv3のルータIDは32ビットです。選択肢dについて、OSPFv3のプロセス番号は他のルータとそろえる必要はありません。
筆者紹介
内藤佳弥子(ないとうかやこ)
IT業界でヘルプデスク、ユーザーサポートを経てトレーナーになる。現在は、Cisco認定トレーナーとして、CCNA、CCNPのコースなどのCisco認定トレーニングコース、ネットワーク系オリジナルコースを担当している。グローバル ナレッジ ネットワーク講師寄稿記事一覧はこちら。
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