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現場から見たDevOpsを推進する組織運営 入社5年目の技術者の声から特集:DevOpsで変わる情シスの未来(2)(1/3 ページ)

DevOpsの手法を考える際、ツールや環境整備に目が行きがちだが、最も重要なのは、チームコミュニケーションとチームの目的の持ち方である。ビジネスを推進する情報システム部門の位置付けを考える。

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 「DevOps」を喧伝する動きが目立つ昨今だが、その実現方法において、確固たるセオリーがあるわけではない。コミュニケーションツールによって、あるいはサーバ仮想化技術と関連API群を活用して、自動スケールやデプロイのツールを使って……、とさまざまな手法や道具を活用し、開発部門・テスト部門・運用部門といった情報システム部門の中のセグメントの垣根を超えてサービス事業部門が一丸となって迅速なサービス提供を推進する動き全般を指しているといえる。

 実現方法はさまざまであっても、DevOpsを指向するチームの最終目標は、事業に貢献する技術者であり、そのためのノウハウを共有する基盤を整備することにあるといえよう。

 編集部ではサービス品質、提供スピードがビジネスに直結するオンラインサービスを多数抱えるサイバーエージェントに、DevOps環境を実現するための取り組み取材した。組織の「中」の視点から、企業におけるDevOps体制の在り方を考える興味深い事例を紹介しよう。

「ひたすらレシピを書いています」

 今回取材に応じてくれたのは同社アメーバ事業本部 サービスインフラグループ 石川泰崇氏だ。石川氏、実は新卒で同社に入社し、今年で5年目という若手技術者の1人だ。

 「2013年3月に現在の部署に配属になってからは、毎日ひたすらChefのレシピを書いています(笑)」

 取材冒頭で現在の業務内容を質問すると、こう回答してくれた。配属されて数カ月だという石川氏は、もともとはサービスの開発部門ではなく、インフラまわりの運用を中心とした部門に配属されていたという。

 各サービス向けのサーバの設定やネットワークの構築などを実施してきたというが、2013年3月から、アメーバ事業部に配属されている。組織替え後の業務内容は「ひたすらChefのレシピを書くこと」。

 インフラ担当者がレシピを書き続けるだけで、DevOpsができる、などというわけではない。彼が配属されたのは、アメーバ事業の中核を担う部門、サービスを安定的に提供して収益に貢献することが求められるチームだ。

20分が30秒に、劇的改善

 Chefは「レシピ」と呼ぶ設定プログラムを使って、サーバの構成や設定などを自動で実行するツールだ。例えば、Webアプリケーションサーバ用に仮想サーバを立ち上げる場合、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースの設定などといった一連の作業を、1つのレシピ操作だけで実行できる。

 従来であれば、例えばOSの基本的な設定やセキュリティポリシーに即した設定変更、無駄なプロセスの停止が必要であり、さらにWebサーバにおいてもディレクトリごとのアクセス権設定や通信の制限など、設定すべき項目は多岐にわたる。データベースインスタンスについても同様だ。

 ほんの数年前までは、こうした設定をインフラ担当者が1つずつ手作業で実施していたものだが、サーバ仮想化を使ったインフラ運用が一般化したこと、併せてAPIなどの充実により、さまざまな操作がプログラマブルになりつつある。

 「仮想化環境における基本的な構成設定を、Chefを使って整備する活動は2012年から開始していました。現在、個別のサービスに依存しない設定の部分は全て共通化したレシピとして管理しています」(石川氏)

 無論同社では、仮想化環境やChefによる構成設定の自動化導入以前でも、インフラ部門共通で利用する「標準環境」は規定していた。それでも、個々のサーバインスタンスに対する設定は人の手による作業が必要であった。これをまずはChefレシピとして整備し、所定のレシピを使えば作業者のスキルに依存することなく、安全かつ検証された構成のサーバインスタンスを用意できる体制に整えている。

 Chefレシピによる環境構築自動化を推進したことで、「サーバ1台あたりの設定に20分程度要していたが、今では1台当あたり30秒程度で完了」するようになったという。

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