工数削減だけじゃない、自動化ツールの真のメリット:運用自動化ツールまとめ(国内ベンダ編)(1/4 ページ)
運用自動化というと「人員削減」「コストが掛かる」といったネガティブな見方をする向きも多い。だが仮想化、クラウド時代において運用自動化とはそれほど単純なものではない。国内ベンダ4社のツールに真の意義を探る。
仮想化技術の浸透に伴い、2008年ごろから国内でも注目を集め始めた運用自動化。だが、「人が削減される」「コストが掛かる」「万一の時が不安」といったネガティブな見方も多く、導入企業は現在も一部にとどまっている。しかし近年、市場環境変化がさらに加速し、ビジネスを遂行するIT基盤を迅速・柔軟に整備・変更する必要性が増している。こうした中、もはや人手だけに頼った運用では、ビジネス部門の要請に応えられないばかりか、人的ミスも誘発しやすい状況になっている。こうした状況は以下の記事に詳しい。
これを受けて、運用の標準化、自動化があらためて見直されている。特にこれらは、昨今注目を集めているDevOps実践の1つのポイントともなるものだけに、オープンソースの運用自動化ツールに対する関心も高まっているようだ。
一方で、統合運用管理ツールベンダも運用自動化ツールには力を入れてきた。定常作業を自動化する従来からのジョブスケジューラに加え、仮想環境におけるサーバリソースの管理・配備、プライベートクラウド環境におけるサービスポータルの運用を支援するものなど、ユーザー企業の声に応え、複雑な混在環境の管理効率化にフォーカスしたツールが目立つ。
自動化する運用プロセスの定義・設定についても、ベストプラクティスを実装したテンプレートをベースにカスタマイズする、自動化したい作業メニューを選んでGUI上で線で結ぶだけで運用プロセスを定義できるなど、ユーザー側の導入負荷を下げるさまざまな工夫を盛り込んでいる。
運用自動化ツールというとオープンソースに対する関心も高いが、ここでは統合運用管理ツールベンダ、主要7社の運用自動化ツールの概要を前後編に分けて紹介。各ツールの概要を通じて、運用自動化がITシステム、ビジネスにもたらすメリットと可能性を見渡してみたい。前編では国内ベンダ4社のツールを見ていこう。
“攻めの運用管理”に自動化は不可欠――日立製作所「JP1」
統合運用管理製品「JP1」シリーズで非常に高い国内シェアを堅持している日立製作所。同社は仮想化、クラウドによるシステム基盤の複雑化、人材不足、スキル不足といった課題を見据え、2012年10月に発表したJP1 Version 10で、運用自動化製品「JP1 Automatic Operation」を新たにラインアップに加えた。2013年9月にはJP1シリーズを10.1にマイナーバージョンアップし、自動化機能を強化している。
JP1 Automatic Operationは、オペレータが運用手順書を見ながら行っていた作業を自動化できる製品。例えば仮想サーバのプロビジョニングの場合、仮想サーバのメモリ、コア数の設定やストレージのプロビジョニング、仮想サーバの作成、OSの初期設定といった一連の手順があるが、こうした作業は複数のソフトウェアを使って行う必要がある他、複数の手順書を参照しなければならないことも多い。そうした煩雑な手順をJP1 Automatic Operationに入力、設定すると、「使用するコア数」など人の判断が必要なステップでは自動的に判断を促すなどしながら、一連のプロセスを全て自動化できる。
特徴は大きく2つ。1つは統合運用管理分野における日立のノウハウを基に、典型的な運用作業パターンをテンプレート化していること。これを必要に応じてカスタマイズすることで、自社に即した運用手順を短時間で設定、自動化できる。
2つ目はテンプレートの粒度だ。「仮想サーバの追加・削除」「運用ユーザー追加・変更・削除」など、扱いやすい粒度とすることで導入のしやすさに配慮している。というのも、主に外資系ベンダ製品の中には、自動化シナリオを柔軟に設定しやすいよう、シナリオ設定のための作業部品を数千個用意しているものもある。だが、作業部品が多数あるゆえに、自動化製品の導入・設定に時間とコストが掛かってしまう例もあるためだ。
日立ではこうしたテンプレートを「コンテンツ」と呼び、「仮想サーバの追加・削除」「システム監視製品の一括設定」「運用ユーザー追加・変更・削除」など、汎用的なラインアップを多数そろえている。これらはJP1のサポートサービス契約者向けWebサイトからダウンロード提供しており、随時追加・更新している。最新のバージョン10.1では、仮想化/クラウド環境向けのコンテンツセットとして、新たにHyper-VとOpenStack(2013年12月に提供予定)の運用に対応したものも追加された。
一方、ジョブスケジューラとして「JP1 Automatic Job Management System 3」も用意している。こちらは複数の単純作業が連携した定型業務を自動化するツールで、システム電源の投入/切断、バックアップ処理など、日々のルーティンを自動化できる。「データを集計したら、すぐにファイルを送信する」「各拠点で集計したデータがそろったら、全体の集計をする」など、任意の条件に沿った自動化も可能だ。
設定において、GUIツール「ジョブネットエディタ」を使って、ジョブの実行手順をフローチャートを描くように定義できる点も特徴。異常終了時のみ実行するジョブ/ジョブネットも定義可能な他、ジョブの一覧をCSV形式で出力することもできるなど、管理の確実化に配慮している。
運用自動化のメリットは、ビジネスの遂行スピード・確実性を向上させる点にもある。例えば、Eコマースで利用者が急激に増加し、Webサービスのレスポンスが悪化してしまう場合がある。そうした際も、JP1 Automatic Operationを、統合コンソール「JP1/Integrated Management」、サービスレベル管理基盤「JP1/IT Service Level Management」、サーバ稼働管理製品「JP1/Performance Management」と連携させることで、レスポンス悪化の予兆検知→原因究明→レスポンス回復といった一連の処理を自動化し、機会損失を抑制することも狙える。バージョン10.1ではこうしたツール連携を強化し、自動化の前提となる運用の可視化、共有化をさらに図りやすくしているという。
運用自動化というと「工数削減」といったイメージが強い。だが以上の例のように、ツールを通じた運用ノウハウの可視化、標準化、ガバナンス担保、経営に寄与する“攻めの運用管理”といった数々のメリットがあることに注目したい。
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