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IT訴訟弁護士「塔子」参上!美人弁護士 有栖川塔子のIT事件簿(1)(1/2 ページ)

ITシステム開発で最も大切な「要件定義」。だが1度合意したはずの要件に、開発中に追加や変更を繰り返し行われてプロジェクトが混乱する例が後を絶たない。こんなときはどうすればよいのか、IT訴訟専門の美人弁護士「塔子」に聞いてみよう。

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※この連載は「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」(細川義洋著)のCHAPTER1を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。

 彩音が働くソフトウェア開発会社は大手電気メーカーから、TwitterやSNS、自社の製品や競合製品に関する「お客さまの声」を収集した結果を基に販売戦略を立てることを目的とした営業支援システム※1構築を請け負いました。しかし、確定したはずの要件をユーザーが次々と追加・変更するために作業が進まず、開発は予定より2カ月も遅れています。

登場人物紹介

AYANE

塔子先輩! もう設計も終わるはずの時期なのに、また要件からやり直し! そのうえ納期は全然延ばしてくれないなんて、お客さんヒドくないですか?


TOKO

何言ってんのよ、彩音。要件定義工程の完了時点で本当に要件が固まっているプロジェクトなんて、アタシを美人だって思わない男よりも少ないわ。


AYANE

その訳の分からない自信って一体どこから来るんですか? そんなことより、このままじゃ設計やプログラミングの期間がどんどん短くなって、アタシたちがどれだけ徹夜で頑張ってもモノなんてできませんよ。


TOKO

いいんじゃない? せいぜい苦しめば。


AYANE

そんな、ヒドいこと言わないでくださいよぉ。


TOKO

アンタの苦しみはアタシの喜び。ホント小気味いいわ。


AYANE

悪魔。


TOKO

なんとでも言いなさい。で、そのユーザーのワガママって?


AYANE

例えば“お客さまの声”の分析の話ですけど。最初は『地域別と年齢・性別の分析だけでいい』って言ってたのに、途中から違う人が出てきて、『やっぱり職業別や趣味別の分析も欲しい』って言い出したんです。画面の検討になったら、今度はまた別の人が出てきて、『操作ガイドを出してほしい』とか、『入力順が違う』とか、もーいい加減にしてって感じです。


TOKO

ユーザーの意見がまとまらず、次々と要件が変わっても納期や予算は変えてくれない。苦しくなったベンダは無理なスケジュールで開発するから、どうしてもつくったモノの品質が落ちてくる。そうやってプロジェクトが破たんするケース、私の美貌に心を奪われて家庭を壊す男の数くらいよくあるわ。揚げ句の果てにユーザーは『システムが完成しなかったから、費用なんか払えない』って言うし、ベンダは『失敗の原因は、ユーザーがスケジュールを無視して要件変更を繰り返すからだ』って主張が分かれて紛争になる。


AYANE

どっちが勝つんですか?


TOKO

ケースバイケースだけど、アタシの知ってる判例じゃ、ベンダにも相応の責任があるとするケースが多いわ。


AYANE

えー、なんでですか? ベンダは何も悪いことしてないじゃないですか。


※1 いわゆる「ビッグデータ分析」のこと。インターネットや電話、販売店などで収集したお客さまの声を、地域や年代、性別などさまざまな視点で分析し、その結果を販売戦略立案に役立てるもの。データベースに記録された不定形な情報の中から、任意のキーワードを抽出して分析するなど、難易度の高いシステムの開発が必要となる。

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