視点を変えることでよい転職をした、2人のエンジニア:転職から見た「ITエンジニアの転機」(3)(1/2 ページ)
その希望は上流工程に行くこと“のみ”でしか、かなわないのか? 市場のニーズと自分の実情は合っているのか、今いちど考えてみよう
ITエンジニアの転職市場が活性化している昨今、ポジティブな理由で転職を希望する方が増えてきました。不景気時には年収のダウンや将来の不安、職を失ったなどネガティブな理由からの転職が多かったのですが、最近ではキャリアアップを求める声が多く聞かれます。
しかし、やみくもに転職活動をしても、なかなか上手くはいかないものです。今回は、視点を変えて応募企業を見直した結果、将来につながるよい転職をした2人のエンジニアを紹介します。
希望をかなえられるのは、大手SIerだけなのか?
最初に紹介する大田さん(仮名・27歳)は、Web系のITエンジニアでした。
小規模のソフトハウスに新卒で入社して4年間、飲食、製造、旅行、教育、官公庁などさまざまな業界向けシステムの、基本設計から詳細設計・テストケース設計、プログラミング開発まで幅広く経験してきました。使用言語はPHP、Javaが中心で、社内外から技術力を高く評価され、将来を有望視されていました。
しかし評価されればされるほど、大田さんは将来のキャリアに疑問を感じるようになりました。
当時の職場は業務請負や特定派遣として客先に常駐し、決められた仕様に沿って設計開発することがほとんどでした。いくら技術力が評価されても、システムのコアな部分は常駐先の社員が決めるので、大田さんは口出しできません。プロジェクト全体のマネジメントも常駐先の社員が行うため、プロジェクト全体に関わることもできません。
小さなプロジェクトを渡り歩くことが多いため、業務や業界など何かに特化することがなく、専門的な知識を身に付けられないことも悩みとなっていました。
思いつめた大田さんは「このままでは、キャリアアップできない」と、転職を考えるようになりました。希望は大手SIer(システムインテグレータ)、そう、当時の仕事の客先に当たる位置です。所属する会社の位置を変えれば、「プロジェクトの立ち上げから参画」「大規模プロジェクトに関わる」などの希望がかなうと考えたからです。
私は大田さんと話をする中で、PHP・Javaを中心とした知識と経験に加え、彼のコミュニケーション能力の高さが大きな武器になると考えました。大田さんはご自身では意識していませんでしたが、論理的思考を持ち、プレゼンテーション能力が高く、しっかり話せることが客先でも高く評価されていたのです。
そこで私は転職先候補として、大手SIerに加え、コンサルティングファームを提案しました。大田さんは意外に思われたようですが、上記の理由を話したところ納得し、応募することになりました。
選考の結果、当初希望のSIer含め複数社から内定を得た大田さんは、コンサルファームの面接が最もしっくりきたことから、あらためて自分の志向に気付き、コンサルタントとして今後のキャリアを歩み出すことを決意しました。
自分の知っている範囲内で転職活動をすると、考えが限定的になり、可能性を狭めることがあります。大田さんは、目的をかなえる場所として大手SIer以外の選択肢を視野に入れたことでよい転職をした好例といえるでしょう。
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