サーバ機の付加価値は変わった、HPの新たな取り組み:「VDI」ではなく「HDI」用のサーバも発表
ヒューレット・パッカード(HP)は、サーバ関連事業における自社の付加価値のあり方を、根本的に変えようとしている。日本HPは1月9日、、Project Moonshotの新製品を発表するとともに、自社サーバ事業の大幅な再編について説明した。
ヒューレット・パッカード(HP)は、サーバ関連事業における自社の付加価値のあり方を、根本的に変えようとしている。日本HP HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長の手島主税氏は、同社の幅広い製品ラインアップを強みとして押し出しながら、製品間でのテクノロジの共通化を進め、その上に用途別に特化したソリューションを提供していくと話す。
日本HPは1月9日、2014年におけるサーバ事業戦略を説明するとともに、カートリッジ型サーバ「HP Moonshot System」の新製品を発表した。これによると、日本HPは2014年度より、組織体制をテクノロジ別から顧客ニーズ別に移行。そのうえで、製品については同社が過去約2年にわたり展開してきた3つのプロジェクト(「Project Moonshot」「Project Voyager」「Project Odyssey」)を付加価値の軸とし、展開していく。これにより、2015年には国内オープンサーバ市場における出荷金額ナンバーワンを目指すという。
HPは従来、「フォールトトレラント」「UNIX」「x86」の3つの組織でサーバ製品事業を行ってきた。これを、次の3つに再編する。
- 「ハイパースケールサーバー製品事業」
HPCや大規模サービスプロバイダ向けの高密度サーバ製品を推進。HP Moonshot System、ProLiant SLがこれに分類される。ARMなどの小型省電力プロセッサを高密度で多数搭載するサーバ機の開発プロジェクトであるProject Moonshotが軸となる。
- 「エンタープライズサーバー製品事業」
次世代ミッションクリティカル基盤を推進する。製品としてはIntegrity、Integrity Nonstop、Integrity Superdome 2、BladeSystemなどが該当する。ミッションクリティカル領域における従来のItanium/HP-UXの利点をx86プラットフォームにもたらすプロジェクト、Project Odysseyが軸となる。
- 「コアサーバー製品事業」
企業向けサーバ製品群を推進。ProLiant ML/DLに加え、サーバラックなどの製品がこれに該当する。このジャンルでは、「自働化」を目指すProject Voyagerが軸となる。
Moonshotが(VDIではなく)「HDI」サーバになる
Project Moonshotを具体化したカートリッジ型サーバ製品群であるHP Moonshot Systemで、日本HPは今回、仮想デスクトップサーバとしての利用を可能にする新たなサーバカートリッジ、「HP ProLiant m700」を販売開始したと発表した。これは1カートリッジに4個のAMD Opteron X2150、4個の32GBフラッシュメモリを搭載したもの。日本HPではこれをデスクトップ仮想化のサーバとして推進する。Citrix XenDesktopに特化しているという。
同社はm700での仮想デスクトップ提供についてVDI(Virtual Desktop Infrastructure)ではなくHDI(Hosted Desktop Infrastructure)という用語を使用。これは各ユーザー(各仮想デスクトップ)がCPUを1つ占有する手法を用いるからだという。Opteron X2150はGPUを統合したCPUであるため、各ユーザーは高度なグラフィック機能を備えた仮想デスクトップを、安定したパフォーマンスで利用できるとする。
今回のm700でも、高密度は重要なテーマ。4.3Uのシャーシに45のカートリッジを搭載できるため、180の仮想デスクトップ(ユーザー)を収容可能。TCOを大きく減らせるという。
日本HPはまた、Atom 51260を搭載した現行のカートリッジの機能強化版である「HP ProLiant m300」を販売開始した。同製品はAtom C2750を搭載。動的Webホスティングに十分な性能を発揮するという。「これを待っていた顧客が多い」(HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 統括本部長 橘一徳氏)。
「エンタープライズサーバー」では、x86ベースでWindows、Linuxをミッションクリティカルサーバプラットフォーム、「DragonHawk」を2014年中にリリースする。DragonHawkに大容量メモリを搭載、SAP HANA用のデータベースアプライアンスとした「DragonHawk for SAP HANA」もリリース予定。また、日本独自の活動として、2014年の早い時期にRed Hat Linuxの長期サポートを提供開始する。
「コアサーバー」では、「自働化」の範囲を広げていく。サーバラックやPDU(電源配線ユニット)のインテリジェント化と連動などを通じて、データセンター規模の自働化を進める。また、独自OpenStackディストリビューションに運用自動化関連のツール群を組み合わせたソフトウェア「HP Cloud OS」を、サーバと組み合わせて販売する。HP Cloud OSはHPのProLiantサーバの付加価値を高めるためのソフトウェアという位置付け。従って、「HP CloudSystem Matrix OE」と組み合わせて販売。HPのハードウェアをOpenStackから統合的に制御・管理するための拡張機能を提供する。日本HPは、OpenStackを基盤として採用することにより、他社製品との接続性や相互運用性を失うことなく、自社製品を便利に使ってもらうための拡張機能を提供できるとしている。
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