企業ITは「Business Defined IT」へ向かう:「シャドウIT」という言葉は不適切
2014年初めにおける、企業ITに関する最大のトレンドとは何なのだろうか。筆者は、「Business Defined IT」への進化が始まったことだと表現したい。
2014年初めにおける、企業ITに関する最大のトレンドは何なのだろうか。企業におけるIT活用の広がりが、新たな段階に入ってきているということなのではないだろうか。ビッグデータ、Internet of Things、クラウドサービスなど、具体的なテーマを取り上げて語ることはできる。しかし、これらを覆う、より大きな変化が起きている。
調査会社IDCは、「第3のプラットフォーム」という言葉を使い、「クラウド」「モバイル」「ソーシャル」「ビッグデータ」の4つの動きが絡まりあって新たな潮流となり、メインフレーム、クライアントサーバとは異なるITの第3段階に入ろうとしていると指摘している。
IDCのいう「第3のプラットフォーム」は、ITをアーキテクチャという側面から考えた際の変化だと理解できる。筆者はITの活用という側面から、違う表現をしたい。「インフォメーションテクノロジ」から「ビジネステクノロジ」、あるいは「Business Defined IT」への進化が始まった。
企業IT担当者にとって「使える」アドバイザリ情報の提供を目指す「IT INSIDER」シリーズの第25弾、「三木式 企業ITの傾向と対策 2014年版 前編」(PDF)では2014年初めにおけるIT業界の大きな動きについて解説しています。
いい例がオンラインマーケティングだ。あらゆる業界とはいえないが、一部の業界では、マーケティング担当部署にとっての日常業務の一部になりつつある。オンラインマーケティング関連のツールやサービスは、IT製品・サービスに分類できるものが多い。だが、マーケティング担当者はIT製品などと意識する必要がない。単純に、業務を遂行するために便利な道具として、製品・サービスを使っている。マーケティング担当者にとって、こうした製品やサービスはマーケティングコンサルタントと同様な位置付けだ。
ガートナーは2012年に、「2017年までにマーケティング部門のIT予算がIT部門を上回る」という予測を発表したが、これは狭義のIT製品・サービスの利用でマーケティング部門がIT部門を上回るというよりも、マーケティング部門がビジネス支援製品・サービスとして利用するIT製品・サービスが、IT部門の予算をそのうち上回ることになると主張していると解釈すべきだ。
ユーザー部門が情報システム部門をバイパスしてIT製品・サービスを利用するという現象を、「シャドウIT」と呼ぶことがあるが、上記を考えれば、この表現の不適切さが明らかになる。情報システム部門は、IT利用に責任を持つ自分たちに断りなく、ユーザー部門が勝手にITサービスを使うようなことをやめさせなければならないと考える。しかし、ユーザー部門にとってみれば、ビジネスサービスを使っているのに、情報システム部門になぜうかがいを立てなければならないのか、まったく理解できないということになる。
筆者は2013年夏に、「『おせっかい度』を増すIT業界」という記事を書いた。IT業界は、人々の私生活や仕事にITあるいはデジタル技術が浸透してきていることを追い風とし、企業の(いずれかの部門の人々の)ビジネスに、より直接貢献する可能性のある製品やサービスを次々に考え、投入している。こうしたものの一部はだれが何を言おうとも、ビジネス支援ツール・サービスとして、自然に普及していくだろう。
だからといって、IT部門の役割がなくなるというわけではまったくないずだ。従来に比べると、ユーザー部門が直接にIT製品・サービスを消費できるようになってきたたことで、IT部門としては社内のIT利用をコントロールしにくくなってくる。しかし、IT利用を全社的な視点で考えられる立場にあるのはIT部門しかない。企業が最終的には各部門ではなく、全社的な売り上げおよび利益の最大化を進めていかなければならない以上、IT部門は今後、否が応でも「Business Defined IT」という観点から、IT利用の全社的な最適化を進めていかざるを得ない。
こうした、ITにおける最新トレンドについて、「三木式 企業ITの傾向と対策 2014年版 前編」にまとめました。ぜひお読みください。
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