Hyper-Vのバージョン:その知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(4)(1/2 ページ)
先日、とある記事で「Hyper-V 3.1」という表現を目にし、思わず二度見してしまいました。おそらく編集時に入ったものと想像しますが「3.0」ならまだしも、「3.1」はないでしょう。新たな都市伝説にならないように、今回はHyper-Vのバージョンを取り上げます。
Hyper-VはWindows Serverの役割/機能の1つ
マイクロソフトのサーバー仮想化テクノロジである「Hyper-V」は、Windows Server 2008 x64 Editionで初めて提供された、Windows Serverの「サーバーの役割」の1つです(画面1)。Hyper-Vはサーバーの役割として提供される他、無償のハイパーバイザー製品である「Microsoft Hyper-V Server」、Windows 8以降のx64版Pro/Enterpriseエディションの「クライアントHyper-V」があります。
Windows 2000 Serverから導入されたActive Directoryを「Active Directory 1.0」「Active Directory 2.0」とは呼ばないように、Hyper-Vも個別のバージョン番号は持ちません。
実際、多くのメディアや雑誌、書籍などでは、最初のバージョンを「Hyper-V 1.0」、2世代目を「Hyper-V 2.0」という“通称”で表現していました。マイクロソフトが提供する公式ドキュメントやWebサイトでも、そのような表現を確認できます。そのため、その次のHyper-Vは「Hyper-V 3.0」と呼ぶものと多くの方が思っていたようです。
しかし、マイクロソフトはWindows Server 2012から、実際にはWindows Server "8" Betaと呼ばれていた頃から新しいHyper-Vを通称で表現することをやめ、公式ドキュメントでは「Windows Server 2012 Hyper-V」のような表現をするようになりました。
「Hyper-V 3.0」という表現は多くの人に認知されていたため、今でも使われることがあります。それが不適切であるとは全く思いません。しかし、「Hyper-V 3.1」となると話は別です。「.1」という表現は、Windows Server 2012 R2の「R2」を表現したものなのでしょうか。それとも「Windows 8.1」に倣ったものなのでしょうか。
Hyper-Vをあえてバージョン番号で識別しようとすれば、“Windowsのバージョン”ということになります。以下に、Hyper-Vに比較的大きな変更があったWindowsのバージョンと、該当する製品をまとめてみました。
バージョン:6.0.6001(およびSP2の6.0.6002) | |
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Windows Server 2008 Hyper-V | |
Microsoft Hyper-V Server 2008 |
バージョン:6.1.7600 | |
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Windows Server 2008 R2 Hyper-V | |
Microsoft Hyper-V Server 2008 R2 |
バージョン:6.1.7601 | |
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Windows Server 2008 R2 SP1 Hyper-V | |
Microsoft Hyper-V Server 2008 R2 SP1 |
バージョン:6.2.9200 | |
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Windows Server 2012 Hyper-V | |
Microsoft Hyper-V Server 2012 | |
Windows 8 Hyper-V(クライアントHyper-V) |
バージョン:6.3.9600 | |
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Windows Server 2012 R2 Hyper-V | |
Microsoft Hyper-V Server 2012 R2 | |
Windows 8.1 Hyper-V(クライアントHyper-V) |
Windowsのバージョンは「メジャーバージョン番号.マイナーバージョン番号.ビルド番号.リビジョン番号」という形式になっています。ほとんどの場合、「メジャーバージョン番号.マイナーバージョン番号.ビルド番号」までで識別できますが、最初のHyper-V 1.0は、最後のリビジョン番号まで見なければ識別できません。
その理由は、Windows Server 2008 x64 Editionの出荷時のバージョン(RTM)には、Hyper-Vの正式版ではなく、開発途中のベータ版が入っていたからです。Hyper-Vの正式版は遅れて更新プログラム「KB950050」として追加提供されました。この正式版はWindows Server 2008 Service Pack(SP)1にも含まれます。
Windows Server 2008の以下のドキュメントでは「C:\Windows\System32\vmms.exe」(仮想マシン管理サービス)の「ファイルのプロパティ」からバージョン情報を取得して、Hyper-Vのバージョンを識別する方法が説明されています。Beta版は「6.0.6001.17101」で、正式版の最初のバージョンは「6.0.6001.18016」になります。
「Hyper-V 2.0」まではそれなりの根拠あり
これは筆者が雑誌や書籍、セミナーなどで何度か紹介してきたネタですが、Hyper-V 1.0およびHyper-V 2.0は、そのように呼んでもしっくりくる裏付けがありました。それは、Hyper-Vのコア部分である“ハイパーバイザーのファイルの説明”にあります。
Hyper-Vのハイパーバイザーは、次の場所にある2つの実行ファイルです。ホストOS(「管理OS」や「ペアレントOS」とも呼ばれます)と仮想マシンのゲストOSは、どちらもハイパーバイザー上で実行されます。
- %Windir%\System32\hvax64.exe(AMDプロセッサー用)
- %Windir%\System32\hvix64.exe(Intelプロセッサー用)
これらのファイルのプロパティを開いて、「詳細」タブを見てみましょう。Hyper-Vの最初のバージョンであるWindows Server 2008 Hyper-Vでは、ファイルの説明が「Hypervisor V1.0」となっています(画面2)。
Windows Server 2008 R2 Hyper-Vでは、ファイルの説明が「Hypervisor V2.0」になりました(画面3)。
それでは「Hyper-V 3.0」と呼ばれたWindows Server 2012 Hyper-Vや、最新のWindows Server 2012 R2 Hyper-Vでも確認してみましょう。ファイルの説明は「Hypervisor V2.0」のままです(画面4、画面5)。
これらのファイルの説明を見れば、Hyper-V 1.0やHyper-V 2.0はよくても、Hyper-V 3.0とは呼びづらくなりませんか。
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