x86サーバーを売却するIBM、POWERは?:データ分析基盤としての性能を高めるPOWER
ビッグデータ処理能力は「x86サーバーの50倍」。データ分析基盤向けの機能を強化したPower System製品が登場。OpenPOWER Foundationの活動成果も取り込み、POWERは今後もIBMの資本の下で開発が続く。
2014年4月24日、日本IBMはPOWERプロセッサーの最新版「POWER8」を発表した。いわく、ビッグデータ活用に適したプロセッサーに仕上がっているという。x86サーバー事業のレノボへの売却を表明したIBMだが、次世代「POWER9」プロセッサーの開発ロードマップも公表しており、自社知財を含むサーバープロセッサーへの開発投資は今後も継続する模様だ。
POWER8プロセッサーのポイントは、メモリ通信帯域、ソケット当たりのスレッド数、キャッシュサイズそれぞれを大幅に拡大している点にある。クロック数はPOWER7+と変わらないが、メモリ通信帯域は230GB/秒に、キャッシュサイズもL1、L2でそれぞれPOWER7+の2倍となる64KB、512KBに拡大されている。また、1ソケット当たりの最大スレッド数も96と、POWER7+と比較して3倍になっている。
大量のデータを高速に処理する際、ストレージI/Oが課題の1つとなるが、サーバー内でも、処理速度が異なるCPUやメモリなどの間でのデータ通信はボトルネックになる。POWER8ではCPUとメモリ間の通信帯域を拡大することで、並列処理を大量に実行した際にも遅延が発生しにくくなっている。
また、PCIe 3.0規格に対応したバスと、CAPI(Coherence Attach Processor Interface)プロトコルという、PCIe経由の通信をカプセル化するプロトコルを利用することで、接続機器との通信を高速化する仕組みも持つ。これにより、OSやデバイスドライバなどの、通信のオーバーヘッドになる層を回避して接続できる。つまり、このバスを介してFPGAやASICといった別の処理回路に直接接続できる。また、PCIeスロットを経由してフラッシュメモリに接続する場合も、CAPI接続を利用することで、例えば2万命令が走っていた処理を500命令以下まで削減できるという。
IBMでは、FPGA、RDMA、GPU、メモリなどのハードウェアメーカーらやGoogleとともに、OpenPOWER Foundationを設立しており、POWERプロセッサーとこれら周辺ハードウェアとの間で効率のよい接続に関する技術交換を積極的に行っている。また、一方で、OpenStackなどのオープン系ソフトウェアとの連携も重視しており、Power System上では、ハイパーバイザー型仮想マシンの1つであるKVMが動作する。従来、Power System上ではSUSE LinuxやRed Hat Enterprise Linuxのみの対応であったが、今回からカノニカルが提供するUbuntu Serverにも対応する。また、POWERアーキテクチャ用のKVMも提供する。
IBMではこのプロセッサーを搭載したサーバー製品「IBM Power System Sクラス」を発表している。また、同製品に最適化したCognos、SPSS、DB2を組み合わせて提供する「BLU Acceleration ― Power System Edition」「IBM solution for Analytics ― Power Systems Edition」も発表している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.