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Azure Site Recoveryは災害対策の“切り札”となるか?Microsoft Azure最新機能フォローアップ(1)(5/5 ページ)

マイクロソフトが「Microsoft Azure Site Recovery」のプレビュー提供を開始した。このサービスは、オンプレミスの仮想マシンのレプリカをMicrosoft Azure上に作成してバックアップする災害対策ソリューションになる。

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仮想マシンのフェールバックと削除

 仮想マシン単位で計画されたフェイルオーバーを実行した場合は、もう一度計画されたフェイルオーバーを実行することで、プライマリとレプリカの関係、およびレプリケーションの方向を元の状態にフェールバックすることが可能だ(画面25)。

画面25
画面25 プライマリとレプリカの関係を元に戻すには、保護された仮想マシンに対してもう一度、計画されたフェイルオーバーを実行する

 なお、レプリケーションを元の状態にフェイルバックしても、Microsoft Azure仮想マシンにレプリカ仮想マシンは残るようだ。この残されたレプリカ仮想マシンは次回フェイルオーバー時に使用されるのだと思うが、停止状態の仮想マシンが存在することでAzure Site Recovery以外の課金につながるのかどうかがよく分からなかった。少なくとも、プレビュー期間中であっても仮想マシンの保護を有効化してあれば、仮想マシン1台当たり1カ月2754円課金されてしまう。

 一通り評価したので、保護を無効化するとしよう。仮想マシンの保護を無効化するには、Microsoft Azure管理ポータルで保護された仮想マシンを選択し、「削除」をクリックして「仮想マシンの保護の無効化」を選択する(画面26)。これで、Microsoft Azure仮想マシンのレプリカ仮想マシン、Microsoft Azureストレージ内の仮想ハードディスクは削除され、仮想マシンのレプリケーション保護も無効化されて、レプリケーション保護を有効化する前の状態に戻る。

画面26
画面26 無用な課金を避けるため、「仮想マシンの保護の無効化」を選択して、仮想マシンの保護を解除する

 もう1つの「仮想マシンの管理を停止します」オプションは、オンプレミス側の設定はそのままで、Azure Site Recovery側だけを削除するものだ。こちらを選択した場合、オンプレミス側のVMMで仮想マシンの保護を手動で無効化しなければならない。

Azure Site Recovery試用上の注意点

プレビュー版は東西日本リージョンでは利用できず

 Azure Site Recoveryが実用に耐えるかどうかは、ネットワーク帯域に左右されると考える。残念ながら、Azure Site Recoveryプレビューを含むMicrosoft Azure復旧サービスは、日本リージョンからは提供されていないため、海外のリージョンを選択せざるを得ない。正式リリースで日本リージョン対応となるかどうかは不透明だ。ちなみに、復旧サービスのAzure Backupサービスはすでに正式なサービスとして開始されているが、日本リージョンからは提供されていない。

 筆者の個人のインターネット環境はもともと制約が大きいため、わずか2GBに満たない仮想ハードディスクのレプリケーションを完了するのにさえ数時間かかってしまった。高速なインターネットに接続された企業環境の場合でも、海外のリージョンを利用することによる帯域幅低下の影響は避けられないだろう。

 また、フェイルオーバーしてMicrosoft Azure仮想マシン上の仮想マシンで起動したとしても、その仮想マシンへのサイト間(S2S)VPN接続を介した接続にもネットワークの遅延が少なからず影響するはずである。もし、Azure Site Recoveryに期待しているのなら、このネットワーク帯域と遅延の影響を重点的に評価したほうがよいだろう。

VMMの管理環境は必須

 Windows Server 2012 Hyper-V以降で利用可能になったHyper-Vレプリカは、OSの標準機能だけで2台のHyper-Vサーバーのレプリケーションを簡単に構成できる、非常にシンプルかつ安価な災害対策として期待できる機能である。

 もし、Azure Site Recoveryのオンプレミス・ツー・Azureのレプリケーションを、スタンドアロンのHyper-Vサーバーから利用できると期待していたのなら、残念ながらそうはいかない。Azure Site Recoveryはその名前の通り「サイト単位の災害対策ソリューション」であり、そのサイトの単位となるSystem Center 2012 R2 VMMの管理基盤は必須である。しかしながら、まだプレビュー段階である。プレビュープログラムに参加して、VMMを必要としない小規模向けのサービス提供を熱く要望するという手はある。

 筆者は、Hyper-V Recovery Managerのプレビュー段階からこのサービスを評価しており、Microsoft Azure仮想マシンも検証のために利用することがある。Microsoft Azure仮想ネットワークは実際に構築したことはないが、その概念も理解している。そのため、特に苦労することなくAzure Site Recoveryのオンプレミス・ツー・Azureを構成し、動作検証することができた。そうでない場合は、こんなに簡単にはいかないだろう。少なくとも、以下の製品およびサービスに関する知識と経験が必要である。

  • System Center 2012 R2 Virtual Machine Manager
  • Windows Server 2012 R2 Hyper-V(Hyper-Vレプリカ)
  • Microsoft Azure仮想マシン
  • Microsoft Azure仮想ネットワーク
  • 自己署名証明書の作成、証明書のエクスポート、証明書のインストール

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。


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