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「ITはなぜ、文房具のように使えないのか」を議論@IT SDxセミナーリポート(2/2 ページ)

「ITはなぜ文房具のように使えないのか。Software Definedとは、それを克服するための動きではないか」──こうした観点から、2014年9月18日に開催された@IT編集部主催セミナー「SDx Conference 2014」をリポートする。

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ヤフーのOpenStack事例とSDNテストソリューション


ヤフーの松谷憲文氏

 ブロケードのセッションでは、尾方氏が「巨大ポータルを支えるプライベートクラウド構築事例から学べ! 攻める情シスのためのインフラ構築、その極意とは?」と題して講演。ゲストスピーカーとして登壇した、ヤフーのサイトオペレーション本部 本部長の松谷憲文氏とともに、ヤフーのOpenStackを使ったプライベートクラウド構築の取り組みと、その中でブロケードのスイッチ製品VDXシリーズが果たした役割を解説した。

 松谷氏は、SDxについて「ソフトウェアによって抽象化されたインフラサービスと捉えている。抽象化のメリットは、ベンダーロックインされない、柔軟な設計が可能、迅速に制御可能、マイグレーションが容易なこと。OpenStackによって全てのインフラは抽象化される。その意味でSDxはOpenStackとイコールだ」と説明した。


ブロケードの尾方一成氏

 具体的にヤフーでは、2013年にアプリケーションデリバリスイッチ「Brocade ADX」とOpenStackを連携させ、OpenStackからロードバランサーを設定できるようにした。2014年には、さらに、ブロケードが開発したOpenStackのNeutronプラグイン「VDX Plugin」を使って、VLAN、仮想ルーティングインターフェース、ACL、ロードバランサーを設定できるようにした。全てをソフトウェアにするのではなく、VDXのハードウェアを利用したことについて、松谷氏は「通信のオーバーヘッドを極力排除するため」と説明。実際のベンチマークでも、GREトンネルとVDXプラグインを比較して数倍の性能差があることを説明した。

 松谷氏の話を受けて、尾方氏は、「VDXスイッチは、スモールスタートが可能なファブリックスイッチであり、仮想環境の運用負荷やネットワーク構成の複雑化といった課題に対応する。OpenStackにも積極的に関わっており、すべてのデータセンター製品がOpenStack対応済みだ」とアピールした。


イクシアの野田清志氏

 イクシアのセッションでは、野田氏に加え、パートナーのエス・キュー・シー プロダクツ・ソリューション事業部部長の河原浩樹氏が参加。イクシアのSDNテストソリューションと、QualiSystemsのSDxオーケストレーションツールを紹介した。

 イクシアは、SDN/OpenFlowのテスト&インタオペラビリティ・ワーキンググループの議長を務めるなど、SDNやNFV関連のテストソリューションに強みを持つ。「SDNやOpenFlow対応製品については、パフォーマンス、安定性、インターオペラビリティ、セキュリティなどがはっきりと分からないケースが多い。それらをテストソリューションで評価できる」と野田氏。製品分野は、クラウド/ストレージ、Wi-Fi端末/ゲートウェイ、コアネットワーク、セキュリティ、WAN、モバイルなど多岐にわたっている。


エス・キュー・シーの河原浩樹氏

 OpenFlowについては、バージョン1.0/1.3に対応したコントローラーのエミュレーションやスイッチのエミュレーション、トラフィックテストなどが可能という。NFVについては、仮想ルーター、仮想ロードバランサー、仮想ファイアウォールなどについて、転送パフォーマンス、ブロトコルパフォーマンス、サービス移動時の融通性や移植性、信頼性を計測するテストが可能という。

 また、エス・キュー・シーの河原氏は、Quali製品の他、業界として行っているCloudShellという検証ラボの取り組みを紹介した。検証ラボを戦略的に活用することでサービスデリバリまでの期間短縮や品質の担保、インフラ技術者の生産性向上が見込めるという。CloudShellは、NTTコム、NEC、イイガらで作るクラウドやSDNの技術検証団体「沖縄オープンラボラトリ」でも利用できるような「Lab as a Service」を提供予定だ。

富士フイルムがSDxを推進する理由

 セミナーの最後を飾ったのは、富士フイルムコンピューターシステムの柴田氏による特別講演だ。柴田氏は「Software Defined x によるITインフラ変革とビジネス価値向上」と題し、SDxに対する現状認識、プライベートクラウド基盤構築のロードマップ、SDxへの期待とIT部門に求められる役割を説明した。


富士フイルムコンピューターシステムの柴田英樹氏

 富士フイルムでは、2008年にプライベートクラウドの構築を開始し、2012年から本格運用を開始した。こうしたクラウド基盤構築で得たスキルとノウハウを使って、仮想化からSDxへと発展させていこうとしている。

 「SDxは、サーバー、ストレージ、ネットワーク、データセンターのコンピューティングリソースを最適に活用できるようソフトウェアでコントロールし、ITインフラ全体の運用管理を自動化するための概念、アーキテクチャだと定義している。概念には共感できるが、実現には時間も必要だ。現在は、活用と導入に向け、IT部門の組織力向上、ITのTo Be策定、経営やビジネスへの提案を準備している段階だ」(柴田氏)

 柴田氏が講演で強調したのは、「IT部門はこれまでのようなITサービスプロバイダーでなく、ハイブリッドクラウドを提供するサービスブローカーとしての役割が求められている」ということだ。「クラウドはプライベートクラウドとパブリッククラウドのハイブリッドになることは必須だ。プロバイダーサイド、コンシューマーサイドの両方からクラウドに関与することになる。将来の統合と相互運用性を実現できるように準備する必要がある」と同氏。

 SDxは、こうしたクラウドのサービスブローカーたるIT部門にとって、効率化や自動化の武器になるという。たとえば、プライベートクラウド上で構築した業務システムをパブリッククラウドに移行したり、パブリッククラウド上で運用している業務システムをブライベートクラウドに移行したりするケースにはさまざまなシステム的な工夫が必要になる。SDxは、そこで、リソース全体の最適化や自動化、ワークロードの変化に柔軟な対応できるようにする。いわば、ITを文房具のように使えるようにするための第一歩となるわけだ。

 SDxを具体的に実現するためのポイントは4つあるという。「ワークロードの抽象化」「リソースの抽象化」「ワークロードとリソースのマッピング」「チューニングの自動化」だ。


柴田氏の考えるSDxの実装ポイント

 例えば、ワークロードの抽象化では、処理パターン、機能要件、非機能要件に基づいて、トランザクション、BI、ビジネスアプリ、Webアプリなどのワークロードを抽象化する。リソースの抽象化は、サーバー、ストレージ、ネットワーク、アプリケーション開発基盤/フレームワークを仮想化し、リソースをプール化する。

 そのうえで、アプリケーションの特性に合わせたポリシーに基づき、リソースとワークロードを自動的にマッピングできるようにする。さらに、これらインフラを監視しながら、チューニングを継続的、自律的に実行できるようにするわけだ。

 柴田氏は、最後に「SDxは、ハイブリッドクラウド、DevOpsに後押しされ、規格、製品が発展している。ユーザー企業としては、新しい規格や機能を探す調べることや、真の相互運用性を実現する規格やベンダーの見極めも必要になっている。SDxがもたらすメリットを評価して、中期的な視点から企業競争力向上につなげることが大事だと考えている」と講演を締めくくった。

 新しい規格や製品が急ピッチに開発、投入されて盛り上がってきたSDx。ユーザーにとっては、期待と不安が入りまじった状況で見守っているのが現状だろう。セミナーはそうした状況を俯瞰しながら、最新動向とポイントを押さえられる有意義な内容で、会場の聴衆も、最後まで熱心に耳を傾けていた。

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