技術とアイデアのカオスから生まれた未知の可能性を感じるアプリ15連発〜MA10決勝戦まとめ(2/2 ページ)
毎年恒例となった「Mashup Awards」の決勝戦と授賞式が、2014年11月19日に渋谷ヒカリエホールで開催された。ファイナリスト15組によって行われた最終プレゼンの様子と、受賞作品を紹介する。
最優秀賞は「よく分からない何か」で会場を巻き込んだアノ作品に
15組のファイナリストによる最終プレゼンテーションは、トータルで2時間近くに及んだ。その後、来場者による電話投票と、6名の審査員による審査を経て、各賞が発表された。見事、359作品の中から最優秀賞に輝いたのは、「無人IoTラジオ Requestone (リクエストーン) by Team Edi」だった。また、優秀賞の受賞作品は以下の通り。
最優秀賞
- 無人IoTラジオ Requestone (リクエストーン) by Team Edi
優秀賞
- Twinkrun - 全く新しい鬼ごっこ
- Intempo
- VISTouch
- ごはんですよ!
- T☆L Perc!! by T-KIZ
講評によれば、今回、最終選考に残った作品があまりにバラエティに富んでいたため「どのような軸で優秀作を選ぶか」で審査が大いに紛糾したという。
その中で「Requestone」の受賞は、10に及ぶAPIをうまく組み合わせて実装した技術力、そこから「雰囲気に合った曲をかける」「リスナーからのリクエストに応える」「コメント読み上げる」という「DJ」の役割を作り上げた発想力に加え、「よく分からない意欲」と「未知の可能性」で会場を飲み込んだ、当日のプレゼンテーションも加味した結果であるという(会場での電話投票の結果もRequestoneがトップだった)。最優秀賞には、賞金200万円、優秀賞の各作品には、それぞれ賞金10万円が贈られた。
「おばかアプリ部門賞」は「Tetris 3D Modeller」に
MA10では、最優秀賞、優秀賞以外にも、イベントパートナー各社による多数の「パートナー賞」「部門賞」が選出された。@ITでは、部門賞の一つである「おばかアプリ部門賞」を選出。ファイナリストである「Tetris 3D Modeller」が同賞を受賞した。同日に行われた受賞セレモニーでは、@IT編集部より、開発者である栗原一貴氏に記念品が贈呈された(同作品は合わせて「マイクロソフトAPIパートナー賞」も受賞している)。
栗原氏は現在、津田塾大学情報科学科の准教授。名前に聞き覚えがある人もいるかもしれないが、2012年の「イグ・ノーベル賞」を、喋っている人の発話をジャマする発話阻害銃「SpeechJammer(スピーチ・ジャマー)」で受賞して話題になった人物でもある。そうした経緯もあってか「そもそも、面白おかしいものについて考えたり、作ったりするのが好きなので『おばか』アプリとして受賞できたのは大変光栄です(笑)」と笑顔で語ってくれた(……よかった、怒ってなくて)。
今回の「Tetris 3D Modeller」は、着想から実装まで、ほぼ1日という短期間で行ったという。
「3Dプリンターのためのモデルデータを簡単に作りたいというのが出発点で、そこから3Dテトリスを思いついてからは、必要なものが運良くすぐに手に入ったので、一気に完成させました」(栗原氏)
その後、ゲームが苦手な人でも思い通りにブロックを置ける「イージーモード」や、ブロックのキャンセル機能なども盛り込んだ。ひとまず現状のものを「完成」と考えているという。JavaScriptによるソースコードは、GitHub上で公開されているので、より高度な機能を持たせてみたいという人は、独自にチャレンジすることも可能だ。
また、今回の作品を作っていく中で、栗原氏には「ゲームによるツーリフィケーション(Toolification of Game)」という着想が生まれたという。これはいわゆる「ゲーミフィケーション」の逆を行く考え方だ。
「一般に『ゲーミフィケーション』は、本来であれば楽しくない仕事や作業に『ゲーム』の要素を持たせることで動機付けを行うものですよね。でも、今回僕が作った『Tetris 3D Modeller』は、そもそも『ゲーム』として成立していることを楽しんでやっていると、いつの間にか3Dモデリングという『作業』ができてしまっているというものです。この手法を使えば、もしかすると、3Dモデリングだけではなく、よりいろんな実務的な作業が、簡単で楽しいものにできるかもしれないと考えています。……ところで、ちょっと真面目に話してるんですけど、これ『おばかアプリ部門』の受賞談話ですよね? いいんでしょうか?」(栗原氏)
「ゲーミフィケーション」より、さらにアグレッシブに「○○をツール化」する「ツーリフィケーション」には、開発者のイマジネーションを強く刺激する要素があるように感じられる。同氏の今後の新たな「発明」と「作品」にも、注目していきたい。
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