ゲーム嫌いも知っておきたい3D CG/VRのエンタープライズ活用事例〜Unity Solution Conference 2014まとめ(5/5 ページ)
ゲーム開発で有名なUnity。医療や建築、ヘルスケア、観光などゲーム以外の活用事例をイベントリポートでお届けする。
【屋内測定】オフィス内のレイアウトを3D CG化
先に紹介した竹中工務店の事例は、3D CADなどのデータに基づいて、Unityで三次元空間を再現するものだった。これに対し、日立ソリューションズの耕山博氏は「屋内3D測定からUnityなど利用用途にあったポリゴン変換の取組み」と題し、現実の世界を測定し、メッシュ化してさまざまな情報を加えた上でUnityに持ってくるプロセスを「なるべく安く、早く、簡単に」実現しようとする試みを紹介した。
「今後5年のビジネス領域を考える仕事」に就いているという耕山氏が目下着目しているのが3Dコンテンツだ。自費で専門学校に入学し「Maya」の操作を学んだというほどのめり込んでいる耕山氏は、「位置測量技術の向上、3Dスキャナーの低価格化や3D CADの普及といった要因もあり、3Dコンテンツにはさまざまな可能性があると考えている」という。
耕山氏は、品川シーサイドにある日立ソリューションズのオフィスを測量し、取得したデータをUnityで活用できる形に整えるまでの試行錯誤を紹介した。オフィスのレイアウトというものは時間の経過とともに変わっていく。最新の状態を測定するために参考にしたのが、自己位置を推定しながら自律走行が行える日立産機システムの物流支援ロボ「Lapi」。このロボットが搭載していたレーザー距離センサーを用いた測位システム「ICHIDAS」を活用し、3D地図の作成に取り組んだそうだ。
実際の測定作業は、台車に測域スキャナーを乗せて歩き回ることで行った。ガラスが張られている場所は測定が抜けてしまうそうだが、これで人が歩ける範囲の3D地図を作るための情報(点群)を収集できた。台車が入れないような狭い場所や階段は、みるくるが取り扱っている首振り型移動式ハンドスキャナー「ZEB1」を用いたという。
こうして測定した点群の情報をUnityにデータを持っていく際に直面したのが、「壁の立ち上がり部分など、境目の特定が難しいところが課題だった。測定結果には幅やぶれがあるため、全て自動化するのは難しく、頂点を類推して面を作っていくという半自動方式で実現した」(耕山氏)。
他にも、テクスチャの貼り付けをどう実現するかなど課題はあるが、写真測量技術の活用など解決策もいくつか考えられるという。「技術者でなくとも、簡単にデータを取って持って帰って、その点群を元にすることで、専門家がいなくても3Dデータを作成できる」と耕山氏は述べ、こうして作成した3D空間データの活用に期待したいとした。
【観光】文化財紹介アプリにOculus RiftとUnityを活用
セッション「UnityをベースとしたVR事例の紹介〜文化財データ活用からスマートフォン対応まで〜」では、アップフロンティアと凸版印刷が共同で開発を進めている、VRを活用した観光アプリ試作の取り組みが紹介された。
アップフロンティアの横山隆之氏は、Unityで作成したプレゼンテーション資料を用いて、「Oculus Riftなど、ウェアラブル端末がいろいろと出てきている。2014年はVR元年になるだろう。それも、ゲーム向けだけではなくビジネス向けに、360度動画や3G CGが活用されるのではないか」と述べた。
アップフロンティアが凸版印刷と共に試験的に開発を進めているのは、Oculus RiftやWiiコントローラーを活用した観光用アプリだ。世界遺産「ナスカの地上絵」の上空をハングライダーで飛び回り、ゲーム仕立てで15個の地上絵を見ていく形式のアプリだという。Oculus Riftを用いた初めてのアプリだけに、「3D酔いにどう対策するか」「二次元の情報と三次元の表現をどう統合させるか」など、調整や表示には工夫を凝らしたと凸版印刷の内藤薫氏は述べた。「情報量が多くなると、伝えるべき情報がなかなか伝わらなくなる。GUIの見せ方、情報の伝え方は今後も検討していきたい」(内藤氏)。
内藤氏は、新しいデバイスを活用したアプリ開発に向けた今後の課題として、「操作方法やルールに関して、丁寧なチュートリアルが大事になる。分かってもらうのに時間がかかってはいけない。操作しながら使い方を理解してもらえるようユーザビリティを検討していきたい。また、初心者と体験者の違い、レベルの違いに応じてコンテンツの作り方を変えていく必要があるかもしれない」と述べた。
さらに、「物理的なグッズと組み合わせができれば」と述べ、その一例として、スマートフォンと組み合わせたヘッドマウンドディスプレイで試作した、安土城の内部を再現するVRスコープを紹介した。このヘッドマウントディスプレイは、外側の意匠にも凝ったという。
アップフロンティアでは、ハワイの名所を疑似観光できるVRアプリ「HAWAII360」、恐竜が現代の街によみがえったらどうなるかを再現した学習用アプリ「DINO TOWN」や、男子の夢を実現する「イチャまくら」など、早くも数々のVRアプリをリリースしている。
既存のアプリをVR型アプリに移行するに当たって、アップフロンティアのチーフソフトウェアエンジニア、名倉丈治氏はいろいろと試行錯誤したそうだ。
なるべく手間をかけずにメニューを選択できるようにする「ヘッドトラッキング」や「視線入力」をスマートフォン上で実現する仕組みを自作した。これらはUnityのアセットとして公開する準備を進めているとのこと。ユーザーインターフェースも、タッチパネルやジョイパッドなどのインターフェースが使えないことを前提に工夫した。アプリが本編に移行する際にはカウント制を採用し、特に操作を加えない限り自動的に移行する仕組みにするなど、「3D空間に没入できるような工夫をした」という。
裏側では、データサイズをなるべく節約するために、フレームレートやテクスチャの圧縮、シェーダーの調整、レンダリングバスの調整など、こと細かに調整した。さらに、アプリ自体の容量も「そのままビルドすると100MB超」。これを50MB以下にするために音声データの圧縮などを行った結果、「これらの工夫によって、30FPSを実現し、容量は50MBを切りながら、直感的な操作を実現できた」としている。
【その他】映像、広告、教育など
Unity Solution Conference 2014のセッション一覧ページには、本稿で紹介したものを含め講演模様の動画や講演資料が掲載されているので、気になった方は参照してみはいかがだろうか。
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