第1回 IT管理者も知っておきたいGoogleアナリティクスの概要:Googleアナリティクス入門(1/2 ページ)
今やWebページも企業の「顔」の一つとなっている。その「顔」が十分に活用されているのか、確認するにはアクセス分析が効果的だ。しかし、具体的にはどうすればよいのか。本連載では、分析ツールとして広く利用されているGoogleアナリティクスの概要と、代表的なアクセス分析の方法について解説していく。
ビジネスにおけるWebの重要性とデータ分析
今やほとんどの企業が企業情報などをWebサイトで提供しており、多くの人がその企業について調べる際に参考にしている。つまり、Webサイトが企業の一つの「顔」となっているわけだ。オンラインショッピングサイト(ECサイト)やWebコンテンツサイトでは以前からアクセスログを解析することで、Webサイトの使い勝手を向上させて、業績を伸ばす努力を行っている。いまやコンテンツサイトばかりでなく、一般的な企業においてもアクセスログを分析し、ビジネスに活用することが重要になってきているといえるだろう。
またアクセスログをチェックすることで、不審なアクセスやサーバーの不具合の発見、Webサイトやアプリケーションのチューニングなども可能だ。今やマーケティング部門や営業部門だけでなく、IT管理者においてもアクセスログ活用の重要性は日々高まってきている。しかしWebサーバーが提供するログ(生ログ)は分かりやすいものでなく、トラブルが発生しなければログをチェックしない、という管理者も多いようだ。またアクセス解析ツールは高価なものが多いので、導入していないサイトも多いのではないだろうか。
本連載では、無償で利用できるアクセス解析ツールである「Googleアナリティクス」を取り上げ、その導入方法やアクセス分析の簡単な見方など、IT担当者でも最低限知っておきたいことについて解説していく。
Googleアナリティクスとは?
「Googleアナリティクス」とはGoogleが無償で提供しているアクセス解析ツールである(サポートなどが付いた有償版もある)。もともと有償で高度な企業向けWeb分析機能を提供していた解析ツールの「Urchin(アーチン)」(Urchin Software Corporation)を、2005年にGoogleが買収して改良したものだ。現在は無償で提供されており、今でも最新の機能を提供し続けているオンラインユーザー行動分析のための統合プラットフォームである。全てがWebベースで設定でき、Webアクセスの分析はもちろん、モバイルをはじめとしたマルチデバイス間でのユーザーの行動分析を行うことも可能だ。
- Google アナリティクスサイト(Google)
なぜGoogleがこのような高度なサービスを無償で提供しているかというと、Googleは検索による広告ビジネスを行っている企業であり、その大部分の収入を広告主による広告費用から得ているためである。これらWeb広告への投資対効果を「見える化」し、顧客(=広告主)の利益(広告への投資対効果)を最大化するために、品質の高い分析環境を提供することは自らの利益にかなっているのである。
また別の側面で言うと、Googleアナリティクスはデータ(顧客行動)の収集、分析、ビジネス施策立案までをトータルでサポートするための統合プラットフォームであり、広義のBI(Business Intelligence)ツールともいえる。
なおGoogleアナリティクスには、無償版の他、サポートやSLA(Service Level Agreement)などが付き、取り扱えるデータ保存期間や生データのエクスポートサイズなどが異なる有償版も提供されている。有償版では、さらにGoogleのビッグデータ分析プラットフォームである「Google BigQuery」と直結させ、自社のデータベースとの統合を行うことで、プライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)のような形で活用することもできるようになっている。
- Google BigQuery(Google)
基本的な機能は無償版と有償版で違いはなく、ほとんどのユーザーにとっては十分すぎる機能を無償で活用することができる。Googleアナリティクススタンダードとプレミアの違いの詳細は次のページから確認可能だ。
- 「Google アナリティクスが提供するサポート」(Googleアナリティクス)
Googleアナリティクスを使う目的
一般論としてGoogleアナリティクスを使う目的は、「Webアクセスを解析し自社のWebトラフィックを向上させる」というケースが多いが、O2O(Offline to Online、Online to Offline)やオムニチャネル(実店舗やオンラインストアなどの販売チャネルや流通チャネルを統合し、どのようなチャネルからでも同じように商品を購入できるようにすること)、IoT(Internet of Things)などが普及しつつある現在では、さらに高度な使い方も可能となっている。以下にGoogle Analyticsをビジネス上で活用するシーン例を示す。
- 自社ブランドサイトのアクセス分析を行いサイトへのトラフィックを増やしたい
- Webアクセスを分析することでWeb広告への投資対効果を分析したい
- 自社のサイトに関するマルチデバイス間でのユーザーの行動・動線を把握しサイトのユーザビリティを向上し売上を向上させたい
- 自社Webページのパフォーマンスチューニングを行いたい
- ABテスティングを行い自社Webサイトのコンテンツや機能の改善を行いたい
Googleアナリティクスの特徴
Googleアナリティクス は単なるWebアクセス分析を超えた、オンライン上でのユーザー行動分析のための統合プラットフォームである。一般的なWebアクセス分析ツールと比較した特徴は以下の通りだ。
- 無償で高機能なアクセス解析が行え、有償でさらに大量トラフィックのサイト解析も可能
- 1つのアカウントで複数サイトを管理可能
- 細やかにKGI(Key Goal Indicator)/KPI(Key Performance Indicator)を設定できWebマーケティングへの投資対効果の分析をワンストップで行える
- マルチデバイス間でのユーザーの挙動を一元的に管理可能
- 細やかなアクセス情報やユーザー属性での分析が可能
- リアルタイムのWebトラフィックのレポートが可能
- モバイルからレポートの管理が可能
- 計測やレポートデータ取得のための各種APIが提供されている
Googleアナリティクスの仕組み
では、Googleアナリティクスの仕組みを簡単に解説していこう。
Googleアナリティクスの管理者がまず行うべきことは、Googleアナリティクスから発行されたJavaScriptのコードを、計測したい対象のWebページやモバイルアプリに埋め込むことである。これだけで、いつどのようなユーザーが自分のサイトに訪れ、どういう遷移を行い、サイトから購買、離脱していったかということを、さまざまな角度から分析できるようになる。Googleアナリティクスの基本的な仕組みは以下のようになっている。この例ではWebサイトへのアクセスした場合の挙動を説明しているが、モバイルや各種デバイスからのアクセスについても基本的な仕組みは同じだ。
Googleアナリティクスの仕組み
Googleアナリティクスを利用するためには、最初に計測用のJavaScriptトラッキングコードをWebサイト内のページに組み込んでおく。するとこのJavaScriptコードによってユーザーのWebページへのアクセス情報が収集され、Googleクラウド上に蓄積される。Googleアナリティクスはこの蓄積された情報を使ってさまざまな分析を行い、表示する。
Googleアナリティクスによる分析手順は次の通りである。
- あらかじめGoogleアナリティクスの管理画面から発行されたJavaScriptの「トラッキングコード(追跡用コード)」をWebページに埋め込んでおく。
- ユーザーがWebサイトにアクセスすると、JavaScriptのコードがユーザーのブラウザーにロードされ実行される。この際にJavaScriptはユーザーのブラウザーにcookieを保存し、このcookieはユーザーが訪問した回数などを識別する際に利用される。
- ロードされたJavaScriptはユーザーの行動情報について収集し、Googleのサーバー上にそれら情報をアップロードする。
- 収集されたデータはGoogleクラウド上に蓄積される。
- 管理者はWeb/モバイル上の管理画面から3.で収集されたデータを確認する。
これらユーザーの行動情報の収集は、基本的にはJavaScriptから行われる。そのため、JavaScriptを設置できない一部のブログやSNSサービスなどでは、サーバーサイドでの挙動を直接計測できないことがある。ただしその場合でも、GoogleアナリティクスではWebのAPIが提供されているため、このAPIをサーバーサイドやモバイルアプリケーション、センサーデバイスなどから直接呼び出すことで、各種データをトラッキングすることが可能だ。
またトラッキングのためのJavaScriptは、非同期でロードされ、Googleの高性能なクラウドで処理されるためページ自体のパフォーマンスに影響することはほとんどないとされている。
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