テレビ×IoT “ABCハッカソン”は、モノづくり界の“M-1グランプリ”だ:プログラミング異種格闘インタビュー(2)(2/3 ページ)
異業種、異職種ながら、ITやプログラミングで世の中を良くしていこうとチャレンジしている人たちへのインタビューシリーズ。第二ラウンドのテーマは「テレビ×ハッカソン」だ。
何もカタチにならなかった1年間
白井良平氏
朝日放送ビジネス戦略局ビジネス戦略部 主任
2002年入社。スポーツ局に配属後、プロ野球・高校野球中継、番組を担当。2010年コンテンツ事業部に異動後、スマートフォンサイト運営・アプケーション開発・番組連動コンテンツ開発に従事。2015年6月より現職
羽渕彰博(以降 ハブチン) 単刀直入に伺います。なぜテレビ局がハッカソンを主催したのですか。
白井良平氏(以降 白井) 私の所属しているチームは、デジタル技術を活用してテレビの広告収入以外で収益の可能性を探るのがミッションなのですが、非常に苦戦しておりました。
ハブチン おぉ。これは初っぱなから重たい話になりそうですね。
白井 そんなある日、同僚に誘われてハッカソンに参加してみたんです。
ハブチン いかがでしたか。
白井 衝撃的でした。赤の他人がチームを組んで、その場で“モノ”を作り出す。熱くなり過ぎてケンカになるときがありながらも、最後は一丸となって“モノ”を作り上げるあのスピード感と熱狂は、本当に面白いと思いました。
ハブチン 短時間で知恵を絞ったり、切磋琢磨(せっさたくま)したりして、“モノ”を作るのは、ハッカソンの醍醐味(だいごみ)ですね。
白井 今までは、テレビの広告収入以外で「収益を上げる」という考え方だったんです。でもハッカソンに参加して、自分たちの収益向上を目指すだけではなく、参加者を中心にして、放送局が「場を提供する」ことも大切だという方向に考えが切り替わりました。
その時に生まれたコンセプトが、「関西に長年受け継がれてきた“モノづくり”の高度な技術とアイデア、情熱を次世代に伝えていくために、世の中を変えるプロダクトを生み出す場を作りたい」というものでした。
会社のリソースを使ってハッカソンを開催したい。そう思って、会社に戻って提案しました。
「ハッカソンって何? よう分からん」
ハブチン 結果はどうでしたか。
白井 会社の人にはことごとく「ハッカソンって何?」と言われました。
ハブチン 知らない方には、ハッカソンがどういうもので、何のために開催するのか、よく分からないですよね。安井さんはABCハッカソンのドキュメント番組を作られましたが、最初に白井さんから「ハッカソンをやりたい」と聞いたときは、どう思われたのですか?
安井一成氏
朝日放送制作局テレビ制作部・主任
東京大学工学部科学生命工学科卒業後、1999年に入社。報道局に配属され、大阪府警担当記者に。制作局に異動後はドラマやバラエティ番組のディレクター、プロデューサーに従事。現在、「旅サラダ」「新婚さん!いらっしゃい」「M-1グランプリ2015」のプロデューサーを務める
安井一成氏(以降 安井) 最初に話を聞いたときは正直、「ハッカソンって何? よう分からん」って思いましたね。
ハブチン やっぱり! それなのになぜ「やろう」と決断したのですか?
安井 ハッカソンのことはよく分からなかったのですが、“モノ”を作るためにケンカまで起きるという話に、リアルな人間ドラマとしてのオモシロ味を感じました。以前制作に携わっていた「M-1グランプリ」という漫才のナンバーワンを決める番組と「近いな」と思いました。
M-1グランプリの魅力の一つも、リアルな人間ドラマの部分なんです。漫才コンビが真剣になって「オモシロイもん」を作って競う。そのリアリティが人々の心を動かすのではないかと思っています。だから、作る“モノ”は違うけれど、番組にできるんじゃないかと。
ハブチン ハッカソンは、メイカー(製品を作り出す人)たちのM-1だというわけですね。
安井 とはいえ不安でしたよ。ハッカソンなんてやったことないですし。最後の一押しは白井の情熱でした。
白井 「ハッカソンを実現できなかったら、このチームはこの先何にもできないだろうな」と思いました。「何がなんでもやってやろう」という決死の覚悟で安井さんを説得しました。
ハブチン 運営時に私が感じた白井さんの気迫には、そういう背景があったんですね(笑)
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