「PostgreSQL」はエンタープライズでどこまで使える? ”SIエンジニア連合”が技術検証:Database Watch(2015年6月版)(1/2 ページ)
商用DBからPostgreSQLへの移行ノウハウを「普段は競合」に所属するITエンジニアらが合同で検証した成果は? 9.4での性能評価資料の他、移行プロセス検証なども。
2015年5月14日、PostgreSQLエンタープライズコンソーシアム(以下、PGEC)は毎年恒例となる活動成果発表会を行いました。今年で3回目の開催となり、活動成果としてまとめたノウハウも充実してきました。過去の活動成果報告は「PostgreSQLは80コアまでリニアに性能アップする」などで紹介した通りです。
もともとPGECには業務で商用RDBMSを使っていた企業が多く参加しています。商用RDBMSの機能や性能には満足していても、ライセンス費用の高さやベンダーロックインを懸念する企業が少なくありません。PGECは「業務に支障がない範囲でオープンソースRDBMSを使いたい」と望む企業が結集し、業務システムにPostgreSQLを採用する際の情報やノウハウを共同で探索し共有するために設立された団体です。毎年、幾つかのテーマを設定し、ワーキンググループ内で技術検証やドキュメントの整備などを行っています。
「普段なら競合となる企業のエンジニアと一緒に検証することはいい経験になった」――毎回、参加者が異口同音に語る感想です。これは、「SI企業が集まってノウハウ共有なんて本当にできるの? PGECの活動から」で取材した際も同様でした。参加するエンジニアにはノウハウだけではなく、自分の企業とは別の世界を経験する場となっています。
今回は「性能」「移行」「設計運用」の三つのワーキンググループから、それぞれの活動成果が発表されました。本稿ではそれらを見ていきましょう。いずれも、2014年度の一年間の活動成果です。
性能ワーキンググループ:参照系/更新系、9.3/9.4で性能はどうなっている?
性能ワーキンググループでは、これまで参照系のみで性能検証を行っていましたが、今回は参照系と更新系の両方で検証を行いました。PostgreSQLは毎年秋に新バージョンの正式版がリリースされるため、毎年新バージョンで検証しています。今回はPostgreSQL 9.3系とPostgreSQL 9.4系*です。なおPostgreSQL 9.4は正式版リリースが2014年12月にずれ込んだため、一部RC版を用いているそうです。
* PostgreSQL 9.4の新機能概要は「PostgreSQL 9.4の主要な改良点、9.5以降の展望」で、全体的な機能のレビューは「PostgreSQL 9.4の新機能解説」で紹介しています。
参照系のスケールアップ検証はサーバーのコア数を60で固定し、クライアント数を1から128まで増やして性能を検証しました。いずれも80クライアントまでリニアにスケールするという結果です。80クライアントで頭打ちになる要因を考えると複雑になりますが、少なくとも参照系はコア数プラスアルファはリニアにスケールすると考えてよさそうです。
ところが更新系では意外な結果が出ました。更新系ではPostgreSQL 9.3と9.4で、コア数を15、30、45、60の4パターンに分け、接続数を増やして性能を比較しました。
この検証の結果、分かったのはPostgreSQL 9.3でも9.4でもコア数が増えるとスループットが低下するということでした。ただし、PostgreSQL 9.3と9.4で比較すると、9.4の方がより多くの接続数でも性能が伸びるということでした。コアが少ない方が、バージョンによる性能差が顕著に出るということです。
性能ワーキンググループでは「採用システムのワークロード(更新や参照の割合)に応じたCPU設計が必要」だとコメントしていました。2015年度には計測時のコア数をより細かく分けて、コア数のピーク値と傾向を分析する予定だそうです。なお「PostgreSQL 9.5」では性能を強化する改善が加えられる予定なので、2015年度の性能検証が早くも楽しみです。
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