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模型飛行機にP2PにSNS――災害に強い情報通信ネットワークに必要な技術とはNICTオープンハウス2015リポート ネットワーク編(1/3 ページ)

2015年10月22、23日、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が研究成果を一般に発表する「NICTオープンハウス 2015」が開催された。ここではセキュリティ、ネットワークだけでなく、さまざまな分野の最新技術が分かりやすく発表されていた。本記事では、NICTが取り組むネットワーク研究の成果を紹介しよう。

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災害時のネットワークをどう確保するか

 NICTオープンハウス2015におけるネットワーク活用の研究発表では、“災害時”にネットワークをどう確保し、活用するかというものが目立った。そのいくつかを紹介しよう。

 災害時でもネットワークさえ生きていれば、被災地の情報がリアルタイムで手に入り、復旧に向けた体制を整えることができる。ネットワークインフラをいかに強くするかは重要だ。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の耐災害ICT研究協議会では、その研究成果として「災害に強い情報通信ネットワーク導入ガイドライン」を地方自治体に向け公表している。

【関連リンク】

「災害に強い情報通信ネットワーク導入ガイドライン」の公表(総務省)

http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000094.html


 その一つのアプローチとして、「模型飛行機」を使った手法を研究しているのが、ワイヤレスネットワーク研究所だ。災害時、ネットワークが分断されても、「被災地とピンポイントにネットワークがつながりさえすれば、けが人の情報のやり取りや、電話による状況確認ができるはずだ」という考え方によるものだ。

 この模型飛行機はバッテリーとWi-Fi基地局を搭載しており、GPSを使うことで特定のポイントを周回することが可能だ。離陸は広い場所から「手投げ」で行い、飛行は2時間以上可能だという。


小型中継器を搭載した「小型無人飛行機」の実物。飛行高度は300〜900メートルで、翼長は2.8メートル。

搭載される小型中継器は約470グラムで、TCP、UDP、RTP、ICMP、ARP/RARPなどのプロトコルに対応。通信距離は約20キロ

 これを使うことで、空を飛ぶ模型飛行機の基地局を中継し、被災地から安全な場所にある基地局へとネットワークをつなぐことができる。これにより、被災した地域に孤立したセンサーからデータを取り出すことを想定している。また、地上の空きチャンネルを利用し通信を行うなど、効率を向上させるための研究も進んでいる。NICTはこれまで130回、80時間を超えるフライトを行っており、実用化に向けた実験を進めているという。


ワイヤレスネットワーク研究所による「通信範囲を広げる小型無人航空機を用いた無線技術」ポスター展示(クリックで拡大)

ピアツーピアで端末同士が通信し、ネットワークを作り出す

 災害時におけるネットワーク構築を実現するもう一つの考え方は、端末がピアツーピアでメッシュネットワークを生成し、動的にネットワークを作り出すというものだ。このデモでは電子ペーパー内蔵の端末内に「PAC」(Peer Aware Communications)プロトコルを搭載したモジュールを入れ、端末同士が通信することで緊急情報の一斉配信を行う様子が見られた。

 この通信は小さなモジュールにより実現されており、900MHz帯を利用。その通信距離は約800メートル程度だという。もし近辺に通信相手のモジュールが無かったとしても、情報を蓄積、再送信する仕組みがあるため、リンク可能な端末が現れれば通信は再開されるという仕組みを持つ。このプロトコルは現在、IEEE802.15.8として標準化を行っているとのことだ。


PACの通信モジュール

PACを実装した端末。サイズはスマートフォンよりも小さい

ワイヤレスネットワーク研究所による「インフラに依存しない端末間通信システム」パネル展示(クリックで拡大)
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