検索
特集

マイクロソフトと.NET開発者の明日はどっちだ?特集:Connect 2015(2/2 ページ)

2015年11月に開催されたマイクロソフトの開発者向けイベントConnect();のキーノートから、これからマイクロソフトと.NET開発者が進む道を探る。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

Where does Microsoft want to go tomorrow ?

 筆者の印象に残ったのは、デモに登場する「非Windowsデバイス」の多さだ。発表された内容もオープンソース、クロスプラットフォームに関連するものが多かったので、デモもおのずとそうなるのは分かるが、VS 2015 Update 1の話よりも、VS Codeのオープンソース化の方が先になる辺りは、「Windowsでなければ」という時代がほんとうに終わりつつあることを示しているのかもしれない。

Ubuntu上でC#プログラムをネイティブコードにコンパイルしているところ
Ubuntu上でC#プログラムをネイティブコードにコンパイルしているところ

 もちろん、これはWindowsがなくなることを意味するわけではないが、2015年7月のWindows 10のリリースから1年は無償でのOSアップグレードを行っているマイクロソフトが、ビジネスを「Windows以外」のものに求めようとしているのがハッキリしたのではないだろうか。そして、VS Cloud Subscriptionの説明でも取り上げたが、その波はもしかしたら、VS自体にも訪れようとしている(といっても、すでに多くの開発者の方はMSDN契約しているのかもしれないが)。

 「モバイルファースト、クラウドファースト」とマイクロソフト自身が述べているように、今はクラウドで(ごく普通の企業が)ビジネスを展開できる時代であり、そのクライアントとなるデバイスも多種多様となっている。そうした状況で、マイクロソフトがクロスプラットフォーム対応を推進するのは当然のことだ。デスクトップで動作するWindowsはこれからも、クライアントの有力な選択肢として存在し続けるだろうが、.NET開発者もこれからはWindows以外の環境のことも考えなければならない時代が到来した。それをマイクロソフトがハッキリと開発者に伝えたのが、今回の「Connect(); // 2015」のキーノートであると筆者は捉える(もちろん、2014年秋のConnect()からそうした雰囲気は漂っていたし、2014年春のBuildはさらにその燭光(しょっこう)であったのである)。

 これを裏付けるのはキーノートで聞かれた「言語は何でも、ターゲットも何でも、プラットフォームも何でも」(「any language, any target, any platform」。筆者の聞き間違いであれば失礼)といった言葉だ。

 キーノートでも触れていたが、VSは貪欲にあらゆる言語をサポート対象にしようとしているし(Python、R、PHP、etc)、VS Codeはデフォルトの状態で多くの言語をサポートし、さらにエクステンションにより、その守備範囲を広げることでもできる。.NET言語だけではなく、あらゆる環境であらゆる言語を使う開発者にとって最適の開発環境であろうとしているのである。そして、今ではJavaScriptこそが、Webブラウザーの枠を乗り越えて、アプリ開発における中間言語となろうとしている。これを勉強しないわけにはいかないのではないだろうか。

VSは貪欲にあらゆる言語、あらゆる環境を飲み込もうとしている
VSは貪欲にあらゆる言語、あらゆる環境を飲み込もうとしている

 では、.NET開発者はどうすればよいのか。WindowsとVSを捨てて、オープンソースの世界に進まなければならないのか。というと、そういうわけではない。マイクロソフトは開発者のことを第一に考える会社だし、VSは世界でも最高レベルに使いやすい開発環境である。そして、先も述べたようにマイクロソフトはオープンソースの世界に侵食していくと共に、その世界の果実を果敢に自社プロダクトにも取り込もうとしている。

 そのことを象徴するのが上でも触れたNode.js tools for VSのリリースである。使い慣れたVSの中で、オープンソースなプロダクトを使って開発できるのは、これまでにあまり触れてこなかった世界に慣れていくことを考えると、.NET開発者が安心できる点だ。

 現在のマイクロソフトはオープンソースの世界に浸食し、オープンソースの世界に浸食されている。よく言えば、(ある程度)うまくなじんでいるところだ。もちろん、LinuxとWindowsの軋轢(あつれき)を思い出すと、マイクロソフトがこのまま進んでいくか信用できないと思うところもあるし、この動きが後退することがあるかどうかが開発者にとっては不安に感じることだろう。

 だが、そうしたことは、現在となってはあまり考えられないと筆者は考える。というのは、以前はマイクロソフトvsオープンソースという対立の構図の中でしっかりとした壁が存在していたが、今では壁は崩れ(壁がないとは言わない)、オープンソースがマイクロソフトの中にしっかりと入り込んでしまっているからだ。

 現在のVSを見れば、オープンソースからマイクロソフトが撤退したら、製品がもう成り立たないことは自明だ。代替物を彼らが作り直すのは車輪の再発明であり、人的にも時間的にも大きな損失である(ただ、オープンソースの世界は必ずしもマイクロソフトを必要とはしていないのは面白いところだ。マイクロソフトがいなければ、別の企業/別のコミュニティが似た何かを作り上げるだけの話である)。

 そういうわけで、マイクロソフトがこの方針を撤回するとは考えにくい。ただし、マイクロソフトが力を失うことはあり得る。そうなったときに開発者がどうすればよいか。それを考えると、開発者が進む道もおのずと見えてくるはずだ。最初はVSという慣れた環境からオープンソースの世界を眺めるだけでもよい。だが、慣れてきたら、積極的にそちら側の世界にも進んで、新たな知見を取り込んでいく。それが、現在の.NET開発者が取るべき道筋ではなかろうか。

Microsoft loves developers

 最後に上でも述べたが、マイクロソフトは開発者のことを第一に考える会社だ。キーノートの最後は以下のスライドで締められたことからも、それは一目瞭然(りょうぜん)である。

Microsoft loves developers
Microsoft loves developers

 では、マイクロソフトが愛する開発者とはどんな開発者だろう。そのことを考え直してみる時期がやってきたのかもしれない。もちろん、彼らはさまざまな手段を講じて(WPFとかストアアプリとかUWPとか、うまくいくかどうかは分からないことももちろんあるけれど)、開発者が時代の流れに取り残されることがないように待ち続けてくれる(それが「開発者のことを第一に考える」ということだ)。

 クラウド、オープンソース、クロスプラットフォームの世界へと果敢に進もうとする会社(これは何もマイクロソフトに限ったことではない)が愛する開発者とは。これからの時代に必要とされる開発者像を本フォーラムでも一度捉え直す必要がある。

 今、.NET開発者が迎えようとしている変革の波はかなり大きなものだ。Windowsの世界に住み続けてきたものにとっては、この波を乗り越えるのは大変なことかもしれない。それでも、これから先もマイクロソフトのプロダクトを使うのか、マイクロソフトの世界から抜け出してオープンソースのプロダクトを使うようになるのかは分からないが、手に手を取って前に進もうとする開発者であれば、きっとマイクロソフトはこれからも愛し続けてくれるだろう(あ、マイクロソフトの愛とかいらない?)。

「特集:Connect 2015」のインデックス

特集:Connect 2015

Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る