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見積もりに合意してないから、要件追加分のお金は払いません!:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(22)(2/3 ページ)
東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は「見積もりの返事を待たずに着手した追加部分」の支払いをユーザーに拒否されたベンダーの裁判例を紹介する。裁判所の判断はいかに?
正式な合意のない追加作業についての裁判所の考え方
判決の前提として、裁判所は以下のように述べた。
東京地裁 平成15年5月8日判決より抜粋して要約(続き)
本件のようなシステム開発作業においては、作業を進める中で当初想定していない問題が明らかになったり、より良いシステムを求めて仕様が変更されたりするのが普通であり、これらに対応するために追加の費用が発生することはいわば常識であって、追加費用が発生しないソフトウエア開発など希有(けう)であるといって過言ではない(以下略)
システム開発では要件の追加・変更が発生するのが常識であって、本件もそれを考慮して判断しなければならないと言っている。IT業界の特殊性を裁判所も認識しているということだ。
こうした前提を踏まえ、判決は以下のように続く。
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